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第4話

Author: はるばる
翌日は、拓海の祖父である奥山文雄(おくやま ふみお)の80歳の誕生日だった。

奥山家はこの祝宴のために長らく準備してきた。ホテルの宴会場は華やかに飾られ、さらに生演奏のオーケストラまで招かれていた。

しかし宴会場に入ると、夏美が義母の奥山香織(おくやま かおり)と一緒に座っているのが目に入った。

いつもなら私を冷たい態度を取る香織が、今や夏美の手を握りしめ、まるで実の娘のように親しげに労いの言葉をかけていた。

「夏美ちゃん、妊婦さんは栄養をしっかり摂らないとね。

本当に痩せすぎよ、可哀想に。これからは私が一日三食手作りして、拓海に毎日届けさせるからね!」

夏美は微笑んでいたが、私と目が合っても驚くそぶり一つ見せなかった。

「莉奈、今日は大切な日なのに、随分と遅いじゃないの。ずっと待っていたわよ」

普段なら、これはごく普通の挨拶だと受け流していただろう。

だが今、彼女の言葉には明らかに私を貶め、私が奥山家の一大行事を軽んじているかのように匂わせる意図が感じられた。

案の定、同席していた奥山家の人々は、私に対してよくなかった視線をさらに冷ややかなものに変えた。

「身分の高いお嬢様が来るだけでも精一杯なんだろうね、そんなに要求しても仕方ないよ」

香織は私に嫌味を言い捨てると、態度を一変させ、にっこり笑って皿に盛られた果物を取り、分け与えるようにして夏美に手渡した。

「夏美ちゃん、これ、今朝拓海が空輸させたばかりのメロンよ。甘いのよ、たくさん食べて」

夏美は自分の隣に座るよう促したが、私はその向かい側の席を選び、大きなテーブルを隔てた位置で冷静に口を開いた。

「いつ妊娠したの?皆はもう知ってるのに、私だけ知らされてなかったなんて」

夏美は一瞬気まずい表情を見せたが、すぐ微笑んで答えた。「最近分かったの。ちょうど今日あなたに伝えようと思っていたのよ。先に拓海のお母さんに気づかれて」

「そうなのよ。妊婦さんって独特の雰囲気が出ているものだから、一度経験している人なら一目で分かるものよ!」

香織がその場の取り繕いをしたあと、また私に嫌味を言った。「莉奈は出産したことがないから、分からないでしょう」

私は彼女を無視して、再び夏美に目を向けた。

「子供の父親は?いつ結婚するつもりなの?」

私の冷たい口調に気づいた夏美は笑顔を曇らせた。「私は結婚にこだわらない。子供が生まれても育ててくれる人がいるから、形だけの結婚なんていらないわ」

私は思わず笑った。

「母親としてずいぶんとずぼらだね。世の中、皆必死になって子育てをするものだが、あなたは子供を私生子として扱っても構わないのね」

私は、「私生子」という言葉を強く言い放った。宴会場に沈黙が流れた。

夏美は青ざめた顔で私を鋭く睨みつけたが、何も言い返せないでいた。

そのとき、ようやく姿を現した拓海が、祖父の文雄を支えて入ってきた。

夏美の姿を目にした途端、拓海の顔色が一変する。「夏美、なぜここにいるんだ?誰が呼んだ?」

「私が招いたのよ!」

香織が突如立ち上がり、私を指さして罵った。「おじいちゃんが80歳を迎えても、未だに曾孫の顔を見ることができないのは、この子供を産めない女のせいよ!

やっと夏美が家の後継を妊娠してくれたのに、せめてこのお祝いの宴くらい、同席させて何が悪いの!」

彼女の発言は私の挑発に乗ったもので、拓海が最後まで隠そうとしていた汚点を完全に剥ぎ取った。

拓海は声を荒げた。「母さん、何を言ってるんだ?俺と夏美の間には何もない。彼女が妊娠したって、それが俺の子供のはずがないだろう!」

拓海は懸命に香織に目配せを送るが、香織は彼を突き押した。

「隠してどうするのよ。元々子供を産めないのは莉奈の責任じゃない?それに、彼女が私の初孫のことを『私生子』呼びあがってよ!

私が待ちに待った後継の孫を、他人になんて侮辱させないわ!」

拓海が呆然とする中、夏美が立ち上がり、まっすぐ私を見つめた。

「莉奈、実はもう全部気づいていたのよね?

それなら、もう隠すことはないわ。確かに、これは拓海の子供よ。

これまで彼があなたにどれだけ尽くしてきたか見ていたけれど、羨ましくもあり、訳をわきまえないあなたに苛立っていたわ。子供すら産んであげられないのに。

こんないい男を大切にしないなんて。彼を狙っている女はたくさんいるのよ!」

彼女は私の目の前で拓海の手を掴んで言った。「拓海、莉奈が与えられるものは、私だって与えられるわ!

もう我慢する余地はない。今日、堂々とあなたの女になりたいわ!」

拓海は目を泳がせ、捨てがたく考えているようだった。

だがすぐに、彼は夏美の手を握り返し、覚悟を決めたように私を見た。

「ここまで言ったんだから、莉奈、きっぱりと縁を切ろう。離婚してくれ!

あなたのものは全部あげる。だが、奥山グループは俺が作り上げたものだ。絶対に渡さない!」

拓海の醜い本性を目の当たりにして、私は笑うしかなかった。

私がいなければ、無一文の学生だった彼が、卒業後すぐに融資を受けて会社を興し、優良な取引先を次々と獲得し、10年で富豪ランキング上位に入るなんて不可能だった。

だが構わない。彼を処分するより、他にもっと面白い計画がある。

夏美と拓海の面前で、私はスマホを取り出した。

「私よ、奥山莉奈。

藤井グループと奥山グループに対する資本戦略を実行に移してください」
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