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第271話
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クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第292話
「だから？」深雪が聞いた。「俺は奴らチンピラのアジトを秘密裏に押さえ、警察に匿名で通報するつもりだ。まとめて捕まえるぞ」延浩の動きは素早かった。証拠を手に入れるや否や、彼はすぐに警察へ送った。警察も即座に行動し、その場所に突入、全員を逮捕した。さらに捜査の過程で、彼らの口座に最近巨額の入金があったことが発覚した。その資金の出どころを追うと、送金元は陽翔の口座だ。この知らせに、遥太は冷笑した。「陽翔か、前回こっぴどくやられてまだ懲りてなかったのか。深雪に手を出すとは......今回は必ず地獄を見せてやる！」彼の眼には怒りの炎が燃え盛り、すべてを焼き尽くす勢いだ。「落ち着いて」深雪は彼の手を押さえ、静かに言った。「君の気持ちはわかる。私だって同じ。でもいまは芽衣と全面対決する時じゃない」「だが......」遥太が食い下がろうとした瞬間、深雪がきっぱり遮った。「あなたが私のために復讐したい気持ちはうれしい。でも、私たちの第一の目的は静雄を倒し、松原商事を掌握することよ」深雪の声は穏やかだったが、反論を許さない力があった。「そうしてこそ、寧々の仇を討ち、芽衣と陽翔に本当の報いを与えられるの」「......でも、陽翔を今すぐにでも叩き潰したい」遥太は悔しそうに顔を歪めた。「もちろん放っておくつもりはない」深雪は首を振った。「この件は警察に任せる。彼を必ず法の裁きにかけさせる」その目に冷たい光が宿っていた。「私は必ず陽翔が裁かれるまで監視するから」「うん......それが一番いい」遥太は息を吐き、しぶしぶ頷いた。一方、リゾート施設で。静雄は芽衣を連れ、療養という名目で滞在していた。芽衣は病弱を装い、ことさらに静雄へ寄りかかっていた。「静雄......私って本当に駄目な女ね」芽衣は彼の胸にもたれ、弱々しい声で囁いた。「いつも体を壊して、あなたに迷惑ばかりかけて......」「そんなこと言うな」静雄は彼女の髪を撫で、優しく答えた。「ただ疲れているだけだ。休めばすぐに良くなる」「でも......最近は何をしても辛くて......生きる気力すらなくなりそうで」芽衣の目には涙が光った。「これって、ひどい病気なんじゃないかしら？」「
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第291話
深雪は答えず、黙ってラーメンを延浩の前に差し出した。彼が夢中になって食べる姿を見つめながら、自然と口元に安堵の笑みが浮かんだ。「ゆっくり食べて、熱いから」彼女は柔らかく声をかけた。その姿はまるで優しい妻のようだ。「うん」延浩は頷きながら口を動かし、もぐもぐとしながら言った。「君の作る麺は本当に美味しいな」「好きなら、もっと食べて」深雪は笑みを浮かべた。「これから毎日でも作ってあげる」「本当か？」延浩は顔を上げ、深い情を込めて彼女を見つめた。「じゃあ約束だ」深雪はその視線に思わず赤くなり、うつむいて小声でつぶやいた。「約束なんて......」それを聞いて、延浩は明るく笑った。「君はいつも強がりだな」深雪の頬は赤らみ、彼を睨むように見て言った。「先に食べなさい、冷めちゃうから」「わかった、君の言う通りにするよ」延浩は笑って再び箸を進めた。遥太がわざとらしく咳払いをし、二人の甘い空気を断ち切った。「そろそろ本題に入ろう」深雪は我に返り、頷いた。「ええ。もう大介には命じてあるわ。静雄と芽衣の動きを密かに監視している」「大介？」延浩は顔を上げた。「信用できるのか？」「うん、信用できる」深雪は即座に答えた。「元は静雄の部下だったけど、今は完全にこちら側についている。どう動くべきかも分かっている」「それならいい」延浩は頷いた。「とはいえ、慎重に動かないとな。静雄は何をしでかすかわからない」「ええ、気をつけるわ」深雪の目は鋭さを帯びていた。その時、遥太が口を開いた。「さっき情報が入った。静雄は芽衣を連れて会社を離れ、あるリゾートに向かったらしい。芽衣の病状悪化を理由に、療養するそうだ」「やっぱり......」深雪の眉がわずかに吊り上がった。「芽衣の病は芝居だったのね」「その通り」遥太は肩をすくめた。「あの女、本当に演技がうまい」「ふん、せいぜいその程度の芝居だわ」「どうする？」遥太が聞いた。「今がチャンスだ。静雄に致命的な一撃を与えるべきじゃないか？」「もちろん」深雪の目が冷たく光った。「静雄がいない時こそ、松原商事の市場を奪う好機。スピードを上げるわ」「承知した。すぐに段取り
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第290話
「だから俺はやっていないと何回も言いました！」延浩の声はさらに鋭さを増した。「これは明らかなでっち上げです！」「江口さん、落ち着いてください」警察官は宥めるように言った。「我々はただ職務を遂行しているだけです。協力していただきたい」「弁護士を呼んでくれませんか」延浩ははっきり告げた。「弁護士が到着するまでは、一切答えはしません」延浩の態度に、警察官たちはそれ以上追及せず、ひとまず彼を拘留室に入れた。その頃、深雪は警察署の外で焦燥に駆られていた。中で延浩がどんな扱いを受けているのか、理不尽な仕打ちをされていないか......考えるほど胸が張り裂けそうだ。「ご安心ください。江口さんならきっと無事です」大介がそばで慰めた。「......うん」深雪はため息をついた。「彼があまり苦しまなければいいけど」その時、遥太が駆け寄ってきた。「証拠を見つけたぞ！」彼の手には書類が握られていた。「本当？！」深雪は瞳を大きく見開いた。「早く見せて！」書類を受け取り、食い入るように目を通した。「これだわ......無実を証明できる決定的な証拠！」「そうだ」遥太は力強くうなずいた。「これさえあれば、警察は延浩を釈放せざるを得ない」「やったわ！」深雪は胸を震わせた。「すぐに警察に渡しましょう！」二人は証拠を手に担当警察官のもとへ渡した。「これが延浩の潔白を示す証拠です。直ちに釈放してください」深雪が訴えた。警察官は書類を受け取り、隅々まで確認した。「これは......どうしてこんなものが？」顔色がみるみる変わった。「出所が気になりますが......」遥太は冷然と言い放った。「重要なのは、この証拠が延浩の無実を示していることです」「だが......」警察官はなお逡巡した。「まさか罪人を庇うつもりですか？」遥太の声が低く冷たく響いた。「いいですか、この件は必ず追及しますので、覚悟してください」警察官はその迫力に押され、ついに折れた。「......わかりました。釈放します」こうして延浩は無罪のまま署を出ることができた。外で待つ深雪の姿を見ると、彼の胸に温かなものが込み上げてきた。「見て、大丈夫だろう」延浩
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第289話
深雪は、静雄がこれほど卑劣な手を使うとは夢にも思っていなかった。彼は自分を追い詰めるために、延浩まで陥れるなんて。「どうすればいいの......」深雪はオフィスの中を落ち着かず歩き回っていた。延浩の性格を誰よりも知っている。彼が機密情報を漏らすはずがない。これは静雄の仕組んだ陰謀に違いなかった。「まずはご冷静に」大介はなだめるように声をかけた。「必ず方法を見つけて、江口さんを救い出しましょう」「一番大事なのは彼の無罪を証明できる証拠です」深雪が焦燥に駆られていると、遥太が慌ただしく飛び込んできた。「延浩が連れて行かれたって、本当なのか？」扉を開けるなり、彼は問いただした。「そう。全部静雄の仕業よ！」深雪は怒りを噛みしめるように言った。「私を潰すためにこんなことするなんて、最低なやり方だわ！」「畜生、どこまでやれば気が済むんだ！」遥太も怒りに顔を紅潮させた。「行こう！警察のところに行って説明しよう！」彼は深雪の腕を取って出口へ向かおうとしたが......「待って！」深雪は立ち止まった。「今のまま押しかけても、静雄を喜ばせるだけよ」「じゃあどうする？黙って見てるのか？」遥太の眉間には苛立ちが刻まれていた。「そんなことはしないわ」深雪の瞳には強い光が宿った。「無実を示す証拠をまずは見つけるの」「証拠......どこにある？静雄が、尻尾を残すわけないだろう」遥太は渋い顔をした。「いいえ、必ず綻びはある」深雪は断言した。「どんなに慎重でも、痕跡は残るものよ。探し出してみせる」「だが......」遥太はなお不安げに口を濁した。「心配いらない。もう手は打った」深雪は携帯を取り出し、ある番号に電話をかけた。「もしもし......この人物の行動を調査して。最近の足取り、細かいことまで全部。結果が出たらすぐ知らせて」通話を切ると、彼女は遥太に向き直った。「すでに調査を依頼したわ。そのうちに結果が出る」「そう祈るしかないな」遥太は大きく息を吐いた。「延浩が無事でいてくれれば......」その頃、警察署。延浩は取調室に座らされていた。警察官に囲まれながらも、彼の表情は落ち着きを崩さなかった。「江口延浩さんです
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第288話
「だめです！」深雪の態度には揺るぎがなかった。「確かな証拠がない限り、誰にも彼を連れて行かせない！」「深雪さん、公務妨害になりますよ！」看護師は焦りの声を上げた。深雪は一歩も引かない。「証拠を見せなさい。なければ、誰一人連れて行けないわ！」「......もういい」延浩は彼女の手をそっと引いた。「俺が行く。はっきりさせてくれば済むことだ」深雪はまだ納得できず、険しい表情を崩さなかった。「心配するな、俺は無実だ」延浩は穏やかに言い、彼女を安心させようとした。「ここで待っててくれ。すぐに戻るから」「先輩......」深雪は言葉を続けようとしたが、延浩が遮った。「いいから」彼の声は弱々しいのに、不思議と強い確信がこもっていた。「俺を信じろ」深雪はその目を見つめ、ついに小さくうなずいた。「......わかった。待ってるから」延浩は警察に伴われ、病院を後にした。残された深雪の胸には、不安が渦巻いていた。「静雄......恥知らずな男！」深雪は奥歯を噛みしめた。「絶対に許さない！」彼女はすぐに携帯を取り出し、大介へ電話をかけた。「大介、静雄が延浩を陥れたことについて調べて！すべての細部を突き止めなさい！」深雪の声は氷のように冷たかった。「承知しました。すぐに動きます」通話を切った深雪の目は、憤怒の炎に燃えていた。一方その頃、松原家でも安らぎはなかった。芽衣の鬱が突如悪化し、病床に横たわる彼女の顔は蒼白だ。苦しげな呻きとともに、彼女は静雄の手を掴み、涙を流して訴えた。「静雄......つらいの......私、もうすぐ死んじゃうの？」「縁起でもないことを言うな！」静雄は胸を締め付けられる思いで答えた。「大丈夫だ、絶対に俺が守る！」「でも、本当に苦しくて......このままじゃ......」芽衣は弱々しい声を震わせた。「そんなはずない。医者も言ったろう？ただ疲れてるだけだ。休めば良くなる」静雄は必死に慰めた。「でも......」芽衣が言葉を継ごうとした途端、激しい咳が彼女を襲った。肺を吐き出すかのような咳に、静雄の顔が青ざめた。「芽衣！どうした！医者を呼べ！」医師が駆けつけ、急ぎ診察した。「先生、彼女
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第287話
静雄はまるで頭を殴られたように、すべての責任を深雪へと押し付けてしまった。「頭の中は利益だけで、感情なんてあるものか！」静雄の声には軽蔑がにじんでいた。「いまや彼女は頼る人無く、延浩だけが彼女の味方を気取っている。だからこそ、彼女はあいつを排除しようとするに決まっている！」「静雄......深雪さんを誤解しているんじゃない？」芽衣は探るように言った。「江口社長の怪我だって、本当に偶然だったのかもしれないわ」「偶然？そんな偶然があるものか！」静雄はますます激昂した。「お前は知らないんだ。あの女は残酷なんだ！俺への報復のために、あいつは俺たちの娘にまで手をかけたんだぞ！それ以上に酷いことをやらないはずがない！」「静雄、落ち着いて言ってね」芽衣は急いで宥めた。「ただ......深雪さんはかつてあなたの妻だったんでしょう？二人の間に、もしかして何か誤解があるんじゃ......」「誤解？俺とあいつの間にあるのは恨みだけだ！」静雄は歯を食いしばり、声を震わせた。「俺のすべてを壊した！許すものか！」芽衣は、彼が怒りに支配されていくのを見て、心の奥でほくそ笑んだ。やはり深雪の名を出すだけで、静雄は理性を失う。「それで......静雄、これからどうするつもり？」芽衣は一歩踏み込み、甘い声で尋ねた。「このまま深雪を好き放題にさせていいの？」「放っておくものか！」静雄の眼差しは陰鬱に光った。「彼女は延浩を大事にしているんだろう？だったら、俺があいつを地に叩き落としてやる。彼女に、その地獄を見せてやる！」「静雄、でも......気軽に動くのは危険よ。江口家は簡単に敵に回せない」芽衣は一応心配そうに見せかけた。「心配するな。俺には策がある」静雄は彼女の言葉を遮った。「今度こそ、深雪に報いを受けさせてやる！」芽衣はその決意の表情を見て、唇に満足げな笑みを浮かべた。深雪、覚悟しておきなさい。病院の庭では深雪が延浩と並んで歩き、束の間の静けさを味わっていた。「体調は大丈夫？」深雪が尋ねた。「ずいぶん良くなったよ」延浩は笑った。「これくらいの怪我、大したことない」「大したことないですって？入院するほどの傷じゃない！」深雪は軽く睨み、嗔るように言った。
