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第61話
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クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第100話
彼女は車を降りるとすぐに静雄に寄せ、誰にも彼らの親密な関係が分かるようにした。静雄は彼女の腰を抱きしめたまま、中へ歩き出し、すぐに入口で入ろうとしている深雪を見かけた。深雪の含み笑いのような目を見て、静雄はなぜか胸がチクリと痛んだ。芽衣の手を握っているのも、どこか刺さるような違和感を覚えた。「深雪さん、怒らないでね。私、こんな宴会は初めてで、静雄にお願いして、連れてきてもらったの。病院にいるのが本当に退屈で、気分転換に出てきたかったの。私……深雪さんがここにいるなんて知らなかったわ」芽衣がそう話しているうちに、涙が目に浮かび始めた。もし以前なら、深雪はきっと激しく揉めていたはずだが、今はただ軽く笑って淡々と言った。「浅野さん、病院での療養は大変だったね。せっかく来たのだから、中に入ったらゆっくり楽しんでね。静雄、浅野さんのことをしっかり見ていてあげて。もし彼女が何か気に入ったものがあったら、忘れずに買ってあげてね」深雪は皮肉たっぷりに言い放ち、ドレスを持ち上げて颯爽とその場を去った。静雄は反射的に追いかけようとした。しかし、先ほど暗がりに隠れていた記者たちが大スクープの気配を察知したかのように、一斉に興奮してカメラを持って突進し、激しく撮影を始めた。今回は誰も質問はしなかったが、皆の目は軽蔑と好奇の入り混じった眼差しで二人を見つめていた。こんなところにメディアがいるのはなぜだ？どこから来たのか？静雄の心は急に沈み、反射的に芽衣の手を離した。しかし、彼らが車からイチャイチャしながら降りてきたのをみんなは目撃しており、この時点で関係を否定するのは無理だった。ましてや先ほどの芽衣の茶番劇を、誰も見ていた。今から弁明しようとしても遅すぎる。時代は変わった。こんな悪質なぶりっ子はもう国民的な敵となり、逆に深雪のようなしっかりしたヒロインの振舞いこそが認められ羨ましがられている。「静雄、どうするの？」「東山、綺麗に処理してくれ」静雄はすぐにまた芽衣の手を握り直し、大股で中に入っていった。中に入ってしまえば、もうメディアの目は届かない。そうなれば、すべてはまだコントロール可能な範囲内だ。だが、後ろの大介はもう死にたい気分だった。なぜなら彼は静雄にどう説明していいか分からなかった
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第99話
もともとは非常に急を要することだったが、静雄はなぜか今はそれほど焦っていなかった。彼はそこに立ち、少し疑問そうに深雪を見た。なぜ彼女が自分とふざけ合わなくなったのか理解できなかった。静雄の疑問を感じ取った深雪も同じように疑問の眼差しを返し、最後に手を振って言った。「ゆっくりして、見送りはしないわ」「待っていてくれ」静雄はそう言い残して、大きな足取りで去って行った。彼の背中を見ながら、深雪は鼻で笑い、待っている大介に向かって言った。「何をぼうっとしてるの？すぐに車を手配して、晩餐会、遅刻してはいけないわよ」「でも社長の命令は……」大介は不思議そうに深雪を見つめた。奥様はいつの間にそんなに意見をはっきり言うようになったか？深雪は大介の疑問そうな顔を見て、笑って言った。「松原のこと、よく分かってるでしょ？彼が戻ってくると思う？」以前もこういうことはあったが、約束の相手はずっと寧々だった。しかし、彼は父親としての約束を一度も守らなかった。寧々は最初は馬鹿みたいに待っていたが、やがて賢くなり、その約束を気にしなくなった。子供は心の内を隠せないから、深雪は知っていた。何度も待ち続け、失望を重ねた末に、寧々はもう完全に絶望し、最後には涙すら流さなくなった。寧々を思い出すと、深雪の顔は怖いほど暗くなった。彼女はドレスの据を持ち上げて、外へ歩き出した。大介はなぜか、さっきまで優しかった奥様が急に鋭くなったのか理解できなかったが、慌てて後を追った。やはり奥様の車を用意しなければ、堂々たる松原夫人がタクシーで会場に行くのは笑い者になってしまう。会場の入口に着くと、深雪はそっとスマホをしまい、微笑みながら車を降りた。大介が車から降りた瞬間、心は折れた。一体誰がメディアを呼んだのか？たった今まで二人がメディアの前で仲睦まじく振る舞っていたのに、今は一人がいない。これは自分の顔に泥を塗るようなものだ。しかも宴会はもうすぐ始まる。大介は本当に静雄がどこに行ったのか知らず、何度電話をかけても繋がらない。これは一体どういうことなのか？深雪は泣きそうな大介の様子を見て少し笑った。彼女は全く焦ることなく、むしろ堂々とメディアに挨拶を始めた。彼女が堂々としているので、記者たちも遠慮なく彼女を撮り続け
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第98話
カメラの前で、深雪は堂々としていて、私生活が暴かれたときのような気まずさは全く感じさせなかった。まるで今起きていることは自分には関係ないかのようだった。本来、静雄はこうした物分かりがよく、プロフェッショナルな深雪を望んでいたが、なぜか彼女の冷たい瞳を見つめると、不快な感情が湧き上がってきた。以前の彼は、彼女が自分に全ての愛情を注ぐのが一番嫌いだったのに、今は全く気にかけてくれない彼女の方が、かえって受け入れがたいと感じていた。「奥様、浅野さんと松原社長の関係は一体どうなっているのですか？」「浅野さんはただの浅野さんです。私は松原夫人です。今、静雄は私のそばにいます。これが一番の答えでしょう？」深雪は微笑みながら静雄の手を握ると、メディアの前でわざと指を絡ませ、大胆に結婚指輪を見せつけた。実際、深雪の本物の指輪はもうどこかに消えていた。これもただネットで買った似たような安い偽物に過ぎなかった。静雄は二人がしっかりと握り合う手をじっと見つめ、思わずに口元が緩んだ。そして、知らず知らずのうちに、その目も優しくなって、深雪を温かく、そして感心したように見ていた。本来なら誰もこの釈明を信じていなかった。しかしこの映像がライブ配信されると、静雄のその視線が切り取られ、ショート動画クリエイターによって再編集された。再編集された動画は一気に多くの乙女心を虜にした。彼の偽りの身分と優しさに、彼を理解し羨む者も現れ、中には彼の肩を持つ人もいた。ネット上の反響は早い。大介が広報部からの報告を見ると、このイメージ回復作戦は成功だと確信し、松原グループの名誉危機はひとまず収まったと思った。深雪は演技に協力した後、ただただ疲れを感じていた。やはり人の上に立つ者は簡単ではないと痛感した。二人は控え室でじっと見つめ合い、少し気まずい空気が漂っていた。静雄は何か言って和ませようとしたが、口を開けてみて初めて、二人の間には共通の話題がないことに気づいた。結局、悔しそうに諦めたその時、大介が慌てて近づき、静雄の耳元で何かをささやいた。はっきりとは聞き取れなかったが、「病院」や「芽衣様」といった言葉がかすかに聞こえた。深雪は心の中で冷笑した。やっぱり芽衣は絶対に諦めず、また何かやらかすに違いない。案の定、大介の話を聞いた静
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第97話
これが深雪が狙っていた効果だった。芽衣が今さら普通に暮らそうなんて無理だ。芽衣はこれまで深雪たちを散々苦しめてきた相手だから、今度は彼女自身が夜も眠れぬ思いを味わう番だ。記者からの質問に対し、深雪は堂々と落ち着いた対応を見せ、多くの好評を得た。彼女はこの機会を借りて、松原夫人の身分を正式に認めただけでなく、自分が優れているというシグナルも外に向けて発信した。深雪にとって、これは世界に自分の名を広める千載一遇の好機だ。彼女は南深雪であり、寄生虫なんかじゃない！深雪が場の流れを完全に掌握しているのを見て、静雄も彼女に目を見張った。最初は彼女がスーパーの野菜や果物の値段くらいしか知らないと思っていたのに、こんなにも余裕のある一面があるとは全く予想していなかった。錯覚かもしれないが、静雄は目の前の深雪がまるで別人のように感じた。昔の彼女は自己主張もなく、個性も薄く、ただ子どもと自分のためだけに回っている専業主婦だった。しかし、子供がいなくなってから、彼女はまばゆく輝き始めた。その変化はとても不思議で、そして眩しいほどだった。静雄は彼女の手を握り、守るようにして、無数のフラッシュを浴びながら二人で車に乗り込んだ。車がかなり遠くまで走ったところで、深雪はまだ彼が自分の手を握っているのに気づき、少し眉をひそめて不快そうにすぐに手を引っ込めた。「松原、このニュースはすぐにネットを席巻するよ。あなたの愛人が見たら、ヤキモチを焼くんじゃないの？もし彼女が本気で嫉妬して、騒ぎを起こしたら、その時はもう二度と助けてあげられないよ」深雪は座席で少し体をずらして、二人の間に距離を作った。二人の間にできた空間を見て、静雄は自分の心の中にも穴ができたように感じた。彼は少し眉をひそめて深雪を見つめた。「口を慎め。愛人ってどういう意味だ？」「あなたは私の夫よ。彼女はずっとあなたにまとわりついてる。あなたも何度も彼女を抱いたでしょ。愛人じゃなければ何だっていうの？まさか妾とでも呼べと？もう封建時代じゃないよ、知らないの？」深雪は驚いた表情で静雄を見つめた。まるで静雄が本物の封建時代の人であるかのようだ。「なんで急に口が達者になったんだ？」静雄は眉をひそめ、不満そうに深雪を見た。「汚い言葉を言い出せば、心が綺麗
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第96話
「そうか？これは、スーパーモデルが最近のランウェイで着てた衣装なのよ。どこか軽薄なの？頭が固いね」深雪はすぐに白い目を向けて、相手の貶めに対して反撃の言葉を返した。これは今までにないことだった。以前の彼女は静雄の言うことが絶対で、どんなにいろんな角度から攻撃されても反抗せず、自分が悪いのかと反省していた。しかし今の深雪はもうそんなに愚かではなかった。自分に非はないと知っている。嫌われたのは相手が悪かったから。さっきのスタイリストたちも彼女のことを褒めていたのに、目の前の男だけが陰険な顔で「軽薄」と言う。まったくセンスがなくて、興ざめだ。静雄は、まさか自分のたった二文字で、こんなにも長々と言い返されるとは思ってもみなかった。彼は眉をぎゅっとひそめて言った。「深雪、それがお前の新しい手口か？そんなことで俺の注意を引こうってのか？夢物語よ」「そっちこそよ。で、行く？」深雪はもう我慢の限界だった。今日のメイクが上手くいったから、個人イメージを壊したくなかった。もしそうじゃなかったら、この男の頭にハイヒールを叩きつけてやりたいくらいだ。目が悪いなら、眼科に行ってちゃんと診てもらえなさい。こんな大金持ちなのに、病気を治さないのか？深雪は心の中で静雄を徹底的に罵倒した後、満足そうに口元を少し上げて、彼を無視したまま、外に向かって歩き出した。今はメディアもいない。誰に見せるために芝居をする必要がある？深雪はもう静雄に対して、嫌いだけではなく、嫌悪感を抱いているのだ。この男に触れるだけで、深雪はどうしようもなく気持ち悪くなる。もし彼を手なずけて松原グループの極秘資料を手に入れ、自分のものを取り戻すためでなければ、こんなところで屈辱を味わうことなんて絶対にない。深雪は気づいた。静雄を心に置かなければ、毎日がとても快適だと。静雄を侮辱するのがこんなに楽しいなら、ずっと前からやっていればよかった。今まで待つ必要なんてなかったのに。深雪の後ろ姿を見て、静雄は初めて彼女が少しおかしいと感じた。今の彼女は以前とはまるで別人だったが、すぐにその理由が分かった。そろそろもう一人子どもを作ってやる時期だ。子どもができれば、すべて元通りになる。それで彼の暮らしも楽になる。そう考えると、静雄は微笑みながら、すぐに追
クズ男が本命の誕生日を盛大に祝ったが、骨壷を抱えた私はすべてをぶち壊した 第95話
簡単にメイクをした後、さらに洗練され完璧になり、蓮は自分の作品に大満足だった。彼らスタイリストはメイク技術が高いと言われているが、もともと素質の良い人をさらに引き立てるほうが、整形よりもずっと楽で効果的だった。見た目はメイクしていないように見えて、実はしっかりメイクしているのが最高の境地だ。鏡の中の自分を見て、深雪はただただ滑稽に思えた。実は彼女は以前もこうした派手な色が好きだったが、静雄と一緒になってから、彼にセンスが低俗すぎると言われた。そのため、彼女は徐々に彼に従い、彼の好みに合わせて、古臭くて色あせた服を着始めた。今思えば、いつの間にか本来の自分を忘れていたのだ。「このセットはとても綺麗で好きよ。松原静雄に支払いをお願いしてね」深雪は自信満々に言った。これくらいの金額は、静雄にとっては大したことではなく、むしろ彼女がこれでさらに稼いでくるのだから、静雄が損をするわけがない。鏡の中の洗練された自分を見て、深雪は自分がまるで商品みたいに思えた。松原グループにて。静雄はすぐに請求書を受け取り、4000万円という金額を見て眉をひそめた。「これは何だ？」「晩餐会のため、奥様がドレスとジュエリーを買いました」大介が正直に答えた。彼は静雄のそばに長年仕えていた。これは深雪にとって数年で最大の出費だが、見た目は多いようで実際はそうでもない。同じクラスの貴婦人たちはほぼ毎月このくらい使っている。深雪が松原夫人として過ごしたこの数年、本当に多くの辛抱を強いられてきた。感情面だけでなく、お金の面でも十分に満たされていなかった。静雄はこの話を聞くと、眉を固くひそめ、不満そうに言った。「今になって大盤振る舞いを覚えたのか」静雄は彼女がそれほど価値があるとは思っていなかったが、この時に彼女を不機嫌にさせることが自分にとって何の得にもならないと分かっていた。だから、渋々請求書にサインした。しかし、こんなふうに金を使ってはいけないと、彼女にしっかり話さなければならない。どうせ彼女は庶民出身でセンスがないから、誰かに騙されているに違いないのだ。「社長、今夜の晩餐会は非常に重要です。超日グループの社長も出席し、我々のニューメディア分野について議論されます」大介は改めてこの宴会の重要性を強調した。
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