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第1024話

Penulis: レイシ大好き
もしここで奴らの思うままにさせたら、自分の一生は終わりだ。

絶対に、このまま引き下がるわけにはいかない。

緒莉のことも絶対に許さない。

こんな状況になってまで、まだ自分を踏みつけようとするなんて。

――どうしてそこまでして、自分を刑務所に送り込みたいんだ?

気を失うふりまでしたのに、どうしてまだ放っておいてくれない?

辰琉は大きく息を吸い込んだ。

胸の奥まで冷え切っていくのを感じた。

特に、緒莉のあの黒い一面を目の当たりにしてからは、もう完全に希望を失った。

あの女には、何ひとつ期待なんてできない。

――いったい、何を考えてるんだ。

どうして、ここまで自分を憎む?

前は、あんな人じゃなかったはずだろ。

そのとき、辰琉の脳裏に真白の顔がよぎった。

どうしても逃げ出さなければ。

黙って捕まるわけにはいかない。

今のあの刑務所に入ったら、十中八九、生きては出られない。

両親にも、もう頼るつもりはない。

二人の様子を見れば、最初から助け出す気なんてないのは明らかだ。

――行けば、ほぼ確実に死ぬ。

なら、分かっていてなぜ死にに行く?

少しでも望みがあるなら、賭けてみるしかないだろ。

どうせ結末が死だとしても、俺は新しい道をこじ開けてみせる。

運命に屈してたまるか。

辰琉は心の底で固く決意した。

もう、誰にも止められない。

今度こそ、自分のために生きる。

緒莉――必ず後悔させてやる。

名津美は、呆けたようにその場にしゃがみ込む息子を見つめていた。

何を見ているのかも分からない。

思わず駆け寄って抱きしめ、鼻をすすりながら泣き叫んだ。

「可哀想な息子よ......ごめんなさい、ごめんなさいね。全部、私たちのせいよ」

辰琉は心の中で盛大に白目をむいた。

――両親のせいに決まってるだろ。

自分の息子を犠牲にしてまで、会社の利益を守りたいなんて。

どこまで腐ってるんだ。

最初は、両親が利益を優先するだけで、まだ息子としての情はあると思っていた。

だが、どうやら自分の存在価値を買いかぶっていたらしい。

辰琉の顔には、もう焦点の定まらない虚ろな表情が浮かんでいた。

まるで外の世界の音が、すべて遠ざかってしまったように。

孝寛はその様子を見て、なんとなく違和感を覚えた。

息子の目が、ずっと自分を見つめているよう
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