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第610話

Aвтор: レイシ大好き
元々すべてに絶望していた真白だったが、辰琉が「海外に行く」と言った瞬間、目がぱっと輝いた。

辰琉が出国する?

それってつまり、この間だけでも少しは楽になれるってこと?

辰琉は真白のそばに歩み寄り、彼女の目に浮かんだその一瞬の喜びを見逃さなかった。

それを見た途端、彼の怒りは一気に爆発した。

彼は真白の顎を強く掴み、口調も荒くなった。

「なんだよ、俺が出ていくって聞いてそんなに嬉しいのか?

俺はいずれ帰ってくる。おとなしくしておいた方が身のためだ」

真白もまた、鋭い目つきで辰琉を睨み返す。

この男がいない日々が来るなんて、どれほど嬉しいことか。

この男、本当に気持ち悪い。

一緒にいる一秒一秒が息苦しくて、吐き気さえ覚えるほど。

「出ていきたいなら勝手に出ていけよ。こっちに近寄るな」

真白は喉の奥から、必死にそう絞り出した。

その言葉に、辰琉の目に宿る憎しみがさらに深まる。

これだけ食べ物も住まいも与えて、何不自由なくしてやってるのに、どうして満足しない?

こんなに長い時間が経ったのに、どうして一ミリも変わらない?

时に、辰琉は自分に原因があるのではないかとすら思い始めていた。

だが、それをどう口にしていいか分からない。

「この恩知らずが。これだけ時間が経っても、全然変わらないな」

その言葉を聞いた真白は、思わず吹き出しそうになった。

「はっ、よく言うよ。偽善者め。今のお前がやってることは監禁だよ。それで私が感謝すると思ってるの?アホかお前は」

辰琉の眼差しは、今にも何かを壊しそうなほど殺気を帯び、手の力もどんどん強くなっていった。

「俺がいなかったら、お前はとっくに死んでたぞ。分かってんのか、ああ?

山の中で拾ってやったんだから、お前の命は俺のもんだ。返したいなら、方法はあるが......」

そう言って、わざと言葉を切る辰琉。

果たして思った通り、真白の瞳が一瞬光る。

だが辰琉は、わざと黙ってそのまま真白を焦らしているだけだった。

顎への力が少し緩んだのを感じ取った真白は、自ら問いかけた。

「どんな方法だ」

もし、辰琉から解放される方法があるなら、どんな手段でも試したい。

家族の元へ帰りたい。

もうここで立ち止まっているわけにはいかない。

彼女の人生、こんな暗闇で終わるはずがないのだ。

だが、次の一言
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