野蛮な彼女の彼女になる方法

野蛮な彼女の彼女になる方法

last updateHuling Na-update : 2025-06-19
By:  うみたたんIn-update ngayon lang
Language: Japanese
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 レベッカはある夜、アパートの自室の上の階で拘束されてしまう。見てはいけないものを見てしまった!  目の前には錆びた包丁と、べとべとした樹脂のような塊がこびりついているまな板。   「許してください。せめて……」  せめて、どうしようか?なにをすれば許してもらえるのか……金を払うのか?  ん? 今、言葉の終わり方がまずい気がしてきた。イヤらしいじゃないの……。         せめて……せめてどうしよう?どうしたら助かる? ***** アパートの2階に引っ越してきたレベッカとその上に住む変人アレックス。 男のように振る舞うアレックスは、黒髪が美しいスタイルの抜群な女だった! アレックスの召使いにされてしまうお人よしなレベッカ。喧嘩ばかりで相容れない二人はなかなか素直になれない。 二人が巻き込まれる事件や日常を数話完結で書きます。どうぞ応援してください。 クール&かわいいWヒロイン目指して。 ローズマリー、マーゴ、かわいい女の子たちが続々と登場します。 末永くよろしくお願いします。

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Kabanata 1

初めて会った夜

あぁ……なんてこと−

目の前には錆びた包丁と、べとべとした樹脂のような、脂肪ような塊がこびりついているまな板がある。

ないまぜにされた異臭が立ち込める。

ハーブのような、泥臭いような……

獣のような-

「さてと……」

男は椅子から立ち上がった。

男は華奢で、茶色のニット帽を深く被り、目の下に真っ黒なくまを作っている。

視線は定まらない。麻薬の常習者そのものといったところだ。背は思ったより高くない。その細い身体を隠すかのように大きめの汚い黒いシャツ着ている。

「ヒッ」

ふらふら男は近づいてきて、後ろから手を回すように肩を抱かれた。そして……。

「チッ」と舌打ちされ、耳もとで息を吐かれた。耳がザワザワして気持ち悪い。すごい汗でベタベタして、なんか埃とハーブの臭い。

「はぁ……上手くいってたのになぁ。ここからが一番重要なところなんだが!」

今度は私の首もとに顔を近づけて、息を吸われる。あぁ……気持ち悪い!

「す、すみません! あの、あの、あ……なにも、私見ていません!」

しどろもどろに私は答えた。これでは、見てしまったと告白しているようなものじゃない。私の大馬鹿!

男は私の右腕を掴んで、正面に立たせる。品定めするかのように、頭からつま先まで舐めるように見回す。

私はくせっ毛でまとまらない髪がコンプレックスだ。変な髪型の女だと思っているわ……。

いや、今はそれどころじゃないけれど。

そして、男の人差し指でつうぅと、頬を触られる。

「あんた可愛い顔してるな、お嬢ちゃん」

「お嬢ちゃんと言われるほどではー」

男は机をバシンと叩く。

「俺の目が節穴だってのかぁぁ?!」

「そんな事は……なかったことにしてください。家に帰して下さい!」

私はさっきから直立不動で動けないでいる。トイレに行きたくなってきた。

「ただじゃ済まないのはわかっているだろう? お嬢ちゃん、どうしてくれるんだ!」

「すみません!」

「早く洗わないとまな板がべとべとなっちまう!」

「どうぞ、早く洗ってください」

「あぁ?」

「すみません!」

ただ謝ることしかできない。

あー、こんなところに来るんじゃなかった! ここで殺されるのだろうか?

この男が麻薬を扱っているのを知ってしまった以上、もう許してもらえないだろう。こんな理不尽なことってある?

ただ書いてあるその通りにしただけなのに。

「この、巻くという作業で完成度が違ってくるんだよ?」

麻薬の種類によっては、包丁などで刻んだ薬草を、丈夫な薄い麻の紙で包むようにして巻く。それが上手くできるかできないかで、全然違うとか……多分。

「ここが! 一番肝心なんだが!」

「すみません! 誰にも言いませんから!」

「なにを……なにを言わないってぇ?」

なにって、今さっき、キェーと言う奇声を発しながら、緑の葉っぱを刻んでいたことよ。それをこれから巻いて吸うつもりなんでしょうが−

男はこちらの顔を見ながら、真っ黒い紙のようなものを舌でゆっくり舐める。

挑発するように。

ききき、気持ち悪い……。

そういえば、巻く作業には麻紙の端を舌で舐めるなどして水分を含ませって書いてあったっけ?

ううぅ、勘弁して……。

「あ……」

男は舐めすぎたのか、黒い紙を誤って破いてしまった。小刻みに震える男。

ざまあみろ! という気持ちと、八つ当たりされるんじゃないかという恐怖が同時にやってきた。

「ちきしょう! イライラさせやがって! お前のせいでやり直しだろ!」

ほら〜、私のせいにしないで−

「ヒッ!」

男はさらにガタガタと震え始めた。やばいやばい! 禁断症状ってやつ?

「ガァァァー」

人間とは思えない叫び声。いきなり錆びた包丁を見えない速さで掴んで、正面から私の喉仏に当ててきた。

目つきの悪いそいつは片手でしっかり錆びた包丁握り、空気を見ているように目をぎょろぎょろと動かす。

汗と、なにか香辛料のような薬草の香りと

ハアハァと荒い息ー

絶対違法な薬よ! ガタガタ震える男の手が私の首筋を上下する。刃こぼれしているのがわかる。

「うっ」

針で刺したような痛みが首筋に走り、なにかが生暖かい物が、首から垂れる感覚があった……。

本当に殺されるわ。刺激させないようゆっくりと話さないと。

「お願いします……せめてー」

せめて、どうしよう?

なにをすれば許してもらえるのか……考えろ。金を払えばいいのか?

ん? よく考えたら、今の言葉の終わり方は非常にまずい気がしてきた。せめてーって……なんかイヤらしいじゃないの。

「せ、せめてまな板を洗います。洗わせて下さい。洗い物すっごく得意なんです」

すると男の手に少しの隙間ができ、包丁が首筋から離れた。

今だ!

その瞬間、私は男の胸をありったけの力で強くつき飛ばす。

「いい加減にしてぇーーー!」

「…………?」

え? あれ?

…………え?

男?

お、男?

男? は、凄い勢いで飛ばされ、机の向こう側にひっくり返った。

な、なにこれ? ふわっとして柔らかい……。

自分の両手を見つめる。驚くほど柔らかい感触が、私の両手に残った。この前、初めて食べた桃という果物そっくり。ふんわりとしてるけど、見た目よりずっしり重くて甘い果物。

間違いなくこれは、女性の胸にしかないもの。しかもとても大きかった。

頭の中が混乱を極め、私は固まっていた。

今の柔らかい胸の感触って……絶対男ではない! しかも私よりずっと大きい。

机の向こう側から、グググと唸り声が聞こえる。怪我をさせた?

そんなの自業自得よ。こっちもそうじゃないと太刀打ちできないし。

て言うか、今逃げるチャンスだったわ。頭が混乱して逃げるのを思いつかないなんて。

よろめきながら立ち上がった女? は、獣のように荒い呼吸を繰り返し、半分ずれたニット帽を床に叩きつけた。

「きっ、きさまー!」

ニット帽の下からバサっと漆黒の艶のある長い髪が現れ、その髪を振り乱して激怒し、重厚な机をひっくり返した。

たくさんの積まれた書類、ペンやインク、ペーパーナイフなどが床に飛び散る。

夜更けとは思えない音が響き渡る。私は頭を抱えうずくまってしまった。この男、ではなく、狂ったような女に殴られるか刺されるか、もうだめ!

「お前!」

女はゆっくり息を吐いた。乱れた髪で私の方へふらふらと歩いてくる。

「あたしの気が済むまで、お前はあたしの召使いだ!」

「はい? 召使いって……」

いい加減にしてぇぇーーと、生まれて初めて怒鳴ったと思ったら、その数分後に彼女の部屋の隅々を綺麗に掃除を命じられている。

人生なにがどうなるかわからない。

違法ドラッグを作っている現場を見てしまったー

と思ったのは、全て勘違いだった。

彼女は、真夜中に東洋の料理を作っていたのだった。巻き物と言うらしい。

香辛料、刻まれた野菜、海藻を乾かして作った紙のような食材。

なんて紛らわしいことを!

ベタベタのまな板は、発酵した豆を叩いて刻んでいただけだった。これはかなり臭い。粘り気があり糸のように絡まり、洗うのは困難だった。これが臭いの元。しっかり洗わないと。

「おい今、何時だ?」

彼女は髪を縛っていて、随分さっぱりしていた。とりあえず巻物をたくさん食べて満足したみたい。さっきはお腹が空いててかなりイライラしていたみたいだ。でもやはり顔色は悪いけど。

壁の時計を見た。夜の十一時四十五分。

「おい! 帰ってくれ。今すぐだ」

急にこの家の女は慌てて出した。

「クソっ、こんな時間だったのか」

「いや、でもなんか中途半端で掃除を止めるのって一番嫌なんです。私は大丈夫ですから」

「お前の心配なんかしてねぇ! 一人にしてくれ、頭が痛くなってきた」

この人、なにかの病気?

「お薬ありますか? 見当たらなければ私の部屋から持ってきましょうか?」

私は首根っこをつかまれ、玄関の外に放り出された。

「出ていけ!」

ひええぇぇ。

私は外の廊下に座り込み、呆然とする。

これが私とアレックスの最悪な出会いー。

女のくせに、男の格好をしている彼女。

名前はアレクサンドラ。

そして私は、お嬢ちゃんなどと呼ばれる身分では決してない。孤児院育ちのレベッカ。

孤児院ではベッキーと言われていた。一人ぼっちのベッキーと。

レベッカとは誰も読んでくれなかったわ。大好きな名前なのに。ありふれたニックネームで呼ばれてしまう。

「レベッカ、掃除、洗濯……他にもよろしくな。あたしの召使い」

いや、召使いって、酷すぎる。

でもレベッカって呼んでくれるのは嬉しいかも。アレックスは女と正体がばれたら、自分のことを「あたし」と言った。

「返事は?」

「……わかりました。アレクサンドラ」

アレックスはどんと机を叩いて、睨んできた。

「かしこまりました。アレックス」

彼女はアレクサンドラという名前は嫌いだと言う。自分には似合わないと。

「はっきりって気持ちが悪い」

「そんなことない、アレクサンドラ。綺麗でかっこいい名前よ。略してアレックスか……男の子の名前で呼ぶなんて、もったいないなぁ。お城のお姫様みたいなのに」

「だから嫌なんだろ」

どうしたって、彼女と初めて会ったあの夜の事は忘れることはできない。常に頭の中にある。

あまりにも強烈で汚くて、それでいてとても滑稽だった。今では愛おしい気分すらする。

生きることにあまりにも不器用で、必死で野生的な彼女。

彼女の生き方そのものの出会いだった。

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あぁ……なんてこと− 目の前には錆びた包丁と、べとべとした樹脂のような、脂肪ような塊がこびりついているまな板がある。 ないまぜにされた異臭が立ち込める。 ハーブのような、泥臭いような…… 獣のような- 「さてと……」 男は椅子から立ち上がった。 男は華奢で、茶色のニット帽を深く被り、目の下に真っ黒なくまを作っている。 視線は定まらない。麻薬の常習者そのものといったところだ。背は思ったより高くない。その細い身体を隠すかのように大きめの汚い黒いシャツ着ている。 「ヒッ」 ふらふら男は近づいてきて、後ろから手を回すように肩を抱かれた。そして……。 「チッ」と舌打ちされ、耳もとで息を吐かれた。耳がザワザワして気持ち悪い。すごい汗でベタベタして、なんか埃とハーブの臭い。 「はぁ……上手くいってたのになぁ。ここからが一番重要なところなんだが!」 今度は私の首もとに顔を近づけて、息を吸われる。あぁ……気持ち悪い! 「す、すみません! あの、あの、あ……なにも、私見ていません!」 しどろもどろに私は答えた。これでは、見てしまったと告白しているようなものじゃない。私の大馬鹿! 男は私の右腕を掴んで、正面に立たせる。品定めするかのように、頭からつま先まで舐めるように見回す。 私はくせっ毛でまとまらない髪がコンプレックスだ。変な髪型の女だと思っているわ……。 いや、今はそれどころじゃないけれど。 そして、男の人差し指でつうぅと、頬を触られる。 「あんた可愛い顔してるな、お嬢ちゃん」 「お嬢ちゃんと言われるほどではー」 男は机をバシンと叩く。 「俺の目が節穴だってのかぁぁ?!」 「そんな事は……なかったことにしてください。家に帰して下さい!」 私はさっきから直立不動で動けないでいる。トイレに行きたくなってきた。 「ただじゃ済まないのはわかっているだろう? お嬢ちゃん、どうしてくれるんだ!」 「すみません!」 「早く洗わないとまな板がべとべとなっちまう!」 「どうぞ、早く洗ってください」 「あぁ?」 「すみません!」 ただ謝ることしかできない。 あー、こんなところに来るんじゃなかった! ここで殺されるのだろうか? この男が麻薬を扱っているのを知ってしまった以上、もう許してもらえないだ
last updateHuling Na-update : 2025-06-17
Magbasa pa
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