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第140話

Author: るるね
last update publish date: 2026-06-14 05:21:33

 月乃は東和に協力すると言ったものの、東和は何一つ事情を話そうとはしなかった。

 便利を図ってくれるわけでもない。

 何が起きているのかも教えてくれない。

 東和から与えられた役目は、ただ一つ。

 陽菜を説得し、東和家への訴訟を取り下げさせること。

 それだけだった。

 その代わり、東和はある程度の条件も提示していた。

「藤野が大人しく引き下がるなら、補償金も少しくらい上乗せしてやっていい」

 東和はそんなことを言っていた。

 けれど月乃には、何か巧妙な策を思いつく頭などなかった。

 事情も分からない。

 何が正しくて、何が間違っているのかも知らない。

 考えて、考えて、考えた末に辿り着いた答えは――力づくしかない、というものだった。

 だから彼女は、自分の妊娠を利用した。

 まだ検査薬で判明したばかりの、小さな命。

 東和には知らせていない。もし知られれば、きっと迷うことなく堕ろせと言われる。

 月乃は知っていた。

 東和樹という男が、どんな人間なのかを。

 学生の頃から、彼は人の心を弄び、利用することしか知らなかった。

 彼の目に映るのは利益だけ。

 結婚も。

 選ぶ女も。

 生
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     月乃は東和に協力すると言ったものの、東和は何一つ事情を話そうとはしなかった。 便利を図ってくれるわけでもない。 何が起きているのかも教えてくれない。 東和から与えられた役目は、ただ一つ。 陽菜を説得し、東和家への訴訟を取り下げさせること。 それだけだった。 その代わり、東和はある程度の条件も提示していた。「藤野が大人しく引き下がるなら、補償金も少しくらい上乗せしてやっていい」 東和はそんなことを言っていた。 けれど月乃には、何か巧妙な策を思いつく頭などなかった。 事情も分からない。 何が正しくて、何が間違っているのかも知らない。 考えて、考えて、考えた末に辿り着いた答えは――力づくしかない、というものだった。 だから彼女は、自分の妊娠を利用した。 まだ検査薬で判明したばかりの、小さな命。 東和には知らせていない。もし知られれば、きっと迷うことなく堕ろせと言われる。 月乃は知っていた。 東和樹という男が、どんな人間なのかを。 学生の頃から、彼は人の心を弄び、利用することしか知らなかった。 彼の目に映るのは利益だけ。 結婚も。 選ぶ女も。 生まれてくる子供ですら、すべては利益の一部でしかない。 月乃など、ただの暇つぶしの玩具。 玩具が産む子供に、利用価値などあるはずがない。 だからこそ、陽菜に電話をかけたあの瞬間だけは、ほんの少しだけ、本心が漏れていた。 助けてほしかったのかもしれない。 寂しかったのかもしれない。 だからなのだろう、陽菜は疑わなかった。昔の友人を信じて、何の警戒もせずにここへ来た。「……ほんと、馬鹿だよね、陽菜。あなたみたいな子……そんなあなたなのに、どうして一条君は……」 もし、一条が自分を選んでくれていたなら。 今頃こんなふうに、一人の男に捨てられることを恐えながら生きる必要なんてなかった。 東和に見捨てられないよう機嫌を窺い、必死に気に入られようとする毎日もなかった。 少しでも「まだ遊ぶ価値のある女」だと思わせるために、惨めな努力を続ける必要もなかった。 そう思った瞬間、もともと燻っていた陽菜への不満は、さらに大きく燃え上がった。 目に宿るのは、隠しきれない怨毒。 胸の奥から、抑えきれない衝動が込み上げてくる。 ――壊したい。 全部。 陽菜を。「月乃ちゃん、この件

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