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第5話

Author: ミミ
結婚式当日、彼が客席から雪乃を引っ張り出し、私の家族が集るのが好きと、あんなふうに傲慢に言い放つまで私は、何ひとつ気づいていなかった。

彼は一度も、私を信じたことがなかったのだ。

そして今、蓮は私を凝視し、慎重に、ただ一つの答えだけを求めている。

「千尋……教えてくれ。この子は……俺の子なのか?」

私は半歩下がり、息子を背後にかばうように隠した。

「違う。この子は夫の子よ。神宮寺の姓を名乗ってる」

どの言葉が彼を刺激したのか、蓮の目が一瞬で赤くなった。

歯を食いしばり、額に青筋を浮かべる。

「千尋、嘘をつくなら、もっとマシな嘘をつけ。俺たちは七年間、冷戦状態だった。逃げ出した直後に、どこの馬の骨とも知れない男の子どもを産んだとでも言うのか!」

私は眉をひそめた。

どこの馬の骨とも知れない男?

別れてから、普通に恋愛して、結婚して、子どもを産んだだけだ。

それなのに、どうして彼の口から、こんな言い方をされなければならないのか。

深呼吸し、答えようとしたその時、背後から、突然、強く押された。

手のひらが床に擦れ、血が滲み、鋭い痛みが走る。

「母さん!何をする!」

蓮は愕然とし、慌てて私を助け起こそうとしたが、私は身をかわし、彼はその場で固まった。

次の瞬間、蓮の母が、私の息子の手をきつく掴み、甲高い声を上げた。

「何をするって?私の孫を取り戻すのよ!

いい?あなたみたいな金目当ての女なんて、若い頃からいくらでも見てきたわ。頑なに戻ろうとしないのは、駆け引きでしょう?

私のお金を受け取っておきながら、孫まで連れ去って……警察に通報しないだけでも、感謝しなさい!」

そう言うと、彼女は振り返り、ボディガードに指示した。

「何をぼんやりしてるの。さっさと、私の可愛い孫を連れて行きなさい」

ボディガードは即座に命令に従い、私の息子を外へ引きずり出そうとする。

私は慌てて立ち上がり、息子を取り戻そうとしたが、蓮に強く抱きしめられ、身動きが取れない。

「私の子を返して!何度言えば分かるの。この子は、蓮の子じゃない!」

息子も声を張り上げ、泣き叫んだ。

「嫌だ!一緒に行かない!パパとママがいい!ママ、助けて!」

蓮は片手で私を押さえつけながら、もう片方の手で、優しく息子をなだめる。

「泣くな。ママが分からず屋で、太一を駄目にしたんだ。パパが、家に連れて帰ってやる」

息子はさらに激しく暴れ、片方の靴が脱げ、裸足のまま必死にもがいた。

「君は僕のパパじゃない!僕のパパは神宮寺って言うんだ!神宮寺颯真だ!すぐ来るから!来たら、絶対に許さないから!」

それを聞いた蓮の顔が、見る間に真っ黒になった。

彼はボディガードに向き直る。

「子どもが分別をわきまえていない。神宮寺颯真のような人間の名前を出して、当たり屋まがいの真似をするようでは、今後、何をしでかすか分からない。

おい、手加減するな。しっかり、躾けてやれ」

蓮の母が、同意するようにうなずく。

「その通りよ。

この様子じゃ、躾がなってないわ。きちんと教え込まなきゃ。

それに、佐藤のところの息子が早く見つけてくれて助かったわ。そうじゃなかったら、いつ孫が家に戻れたか、分からなかったもの」

そう言うと、彼女は直接、ボディガードに命じた。

「手を縛って、口を塞ぎなさい。家に着いたら、暗室に閉じ込めて。

いつ大人しくなるか、それまで出さなくていいわ」

「誰が、そんなことさせるか!」

怒気を帯びた男の声が、突然、響いた。

私は顔を上げる。

いつの間にか、ホテルの入り口には、何台もの黒いベントレーが並び、その中から降りてきた男――圧倒的な存在感を放つ長身の男が、人々に囲まれながら、こちらへ歩いてくる。

私の夫、颯真だった。

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