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第307話

Author: marimo
last update publish date: 2026-10-06 20:02:16

「ああ、そういうことね」

美玲は、雪乃の質問を聞くと、ようやく納得したように頷いた。

その表情には、雪乃が何を心配しているのか理解したような色が浮かんでいる。

けれど、それ以上は何も言わなかった。

美玲はバッグから自分のスマホを取り出す。

そして、慣れた手つきで何本か電話を掛けた。

電話の内容は、雪乃にはほとんど聞き取れなかった。

ただ、短い言葉でいくつか指示を出していることだけは分かった。

その様子を見ながら、雪乃の胸には再び不安が広がっていく。

――いったい、どこへ行くの?

先ほどまで二人で話していたカフェから、別の場所へ移動することになるらしい。

それだけで、雪乃の心臓は落ち着かなくなった。

やがて美玲は電話を終えると、雪乃の方へ体を向けて聞いた。

「雪乃、食事はしなくていいの?」

「え……?」

突然の質問に、雪乃は目を瞬かせた。

食事のことなど、すっかり頭から抜け落ちていた。

美玲はそんな雪乃を見て、わずかに眉を上げる。

「あなた、朝から何も食べていないでしょう?」

「……はい」

言われてみれば、その通りだった。

けれど、今の雪乃には食事をする余裕などなかった。

康太のこと。
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    「ああ、そういうことね」美玲は、雪乃の質問を聞くと、ようやく納得したように頷いた。その表情には、雪乃が何を心配しているのか理解したような色が浮かんでいる。けれど、それ以上は何も言わなかった。美玲はバッグから自分のスマホを取り出す。そして、慣れた手つきで何本か電話を掛けた。電話の内容は、雪乃にはほとんど聞き取れなかった。ただ、短い言葉でいくつか指示を出していることだけは分かった。その様子を見ながら、雪乃の胸には再び不安が広がっていく。――いったい、どこへ行くの?先ほどまで二人で話していたカフェから、別の場所へ移動することになるらしい。それだけで、雪乃の心臓は落ち着かなくなった。やがて美玲は電話を終えると、雪乃の方へ体を向けて聞いた。「雪乃、食事はしなくていいの?」「え……?」突然の質問に、雪乃は目を瞬かせた。食事のことなど、すっかり頭から抜け落ちていた。美玲はそんな雪乃を見て、わずかに眉を上げる。「あなた、朝から何も食べていないでしょう?」「……はい」言われてみれば、その通りだった。けれど、今の雪乃には食事をする余裕などなかった。康太のこと。美玲の申し出。そして、これから自分がどうなるのか。頭の中がそればかりでいっぱいだった。美玲は小さく息を吐く。「なら、食べておきなさい」それだけ言うと、美玲は立ち上がった。雪乃も慌てて立ち上がる。そして――。二人はそのまま、次の場所へ向かった。* * *九条ホールディングス。雪乃はまた、エレベーターに乗せられていた。行き先は、最上階。以前、康太と一緒に訪れた場所だった。あの時は、康太と二人でエレベーターの中から見える景色を眺めていた。康太は大きな窓の向こうに広がる街並みに目を輝かせていた。「お母さん、あんなに高いところまで行くんだね」そんな康太の声を思い出す。あの時の自分は、まさかこんな形で再びこの場所へ来ることになるなど、考えもしなかった。しかも今度は――。隣にいるのは康太ではない。鳳条―――神崎美玲だった。エレベーターの静かな駆動音だけが、二人の間に流れている。雪乃は何度も自分の手を握り直した。美玲は何も言わず、ただ前を見ている。その横顔には迷いがなかった。――この人は、もう全部決めているんだ。そう思うと、雪乃の胸はまた苦しくな

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