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Novels by 三木猫

乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも私、男性恐怖症なんですけど…。外伝!

乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも私、男性恐怖症なんですけど…。外伝!

現代日本風乙女ゲーム『輝け青春☆エイト学園高等部』通称『エイト学園』の世界に転生してしまった佐藤美鈴。男性恐怖症を持ちながらも何とか家族や友達、先生や後輩達に支えて貰いながら成長し高校もいざ卒業となり、乙女ゲームの時間が終わると思った、その時母親からある真実を知らされる。 美鈴は一つの道を選択した。けれど、もしその時の選択肢が違ったならば…。 この外伝は、美鈴が選ばなかったIF(もしも)のストーリーと結末である。 ※この物語は本編の最終章第三十話の続きから、他の攻略対象キャラクターを美鈴が選択した場合のifストーリーとなっております。
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Chapter: 第三十三話23 ※※※
コンコン。ドアがノックされて、返事をする前にドアが開いた。「……樹先輩?毎度思うんだけどさ。ノックしたら返事を待ってから開けてよ」「お前だって返事待たず開けるだろうが」「いやいや。私はちゃんとタイミング見計らってるから」「俺だって見計らってる」ぎゃんぎゃんと言い争う私達。そんな私達をこれはもう何時のもの事と見守る葵お兄ちゃんがいた。「鈴ちゃん。準備は出来てる?」「大丈夫。いつでもオッケーだよ」ドレスの裾が足に絡まないように丁寧に椅子から立ち上がる。「龍也も準備は出来てるね?」「あぁ、問題ない。だからこうして美鈴を迎えに来たんだ」「なら良いけど。いい?龍也。もし、鈴ちゃんに少しでも嫌がる事をしたら…」「あーあー、もう耳が蛸になるくらい聞いたっての。解ってる。ちゃんと守るから」「……じゃあ、二人共。こてんぱんにやって来ちゃって」葵お兄ちゃんに背を押され、私と樹先輩は目を合わせて互いに口の端を上げて不敵に笑って、私は差し出された樹先輩の手の上に手を重ねた。「行くか。美鈴」「うん。私と樹先輩を。…経済を回している二大巨頭の総帥を敵に回した事。後悔させてあげるんだから」私はするりと樹先輩の腕に腕を絡めて、歩き出した。私達が今いる場所は、とある白鳥財閥の系列高級ホテル。その最上階のパーティホールへ向かっている。赤い絨毯に足をとられないように樹先輩が横でフォローしてくれるからとっても助かる。…は、いいとして。何で私が今ここに居るかと言うと。実は、あの後…あの後って言うのは、葵お兄ちゃん、心愛さんと合流した後ね?樹先輩と私は二人に引き上げて貰って何とか陸地に上がる事が出来て。直ぐに樹先輩は、DEL薬液の中にCOLD∞薬液の瓶の蓋を開けて中へと投げ入れた。すると、樹先輩が投げ入れた場所からDEL薬液はどんどん凍結していった。しかも、その薬液の効果が強過ぎて、貯まった液だけでなく、液の染み込んだ土まで凍らせ始めたので私達は慌てて、葵お兄ちゃんが乗ってきた船へと飛び込んだ。で、どうにかこうにか私達は宿泊していたホテルへと帰還。ホテルに着く前に葵お兄ちゃんが皆に連絡していてくれたのか、華菜ちゃんと桃が全力で出迎えてくれた。あの時の二人の飛びつき…もとい、頭突き…もとい、抱き着きを私は忘れる事はないだろう。ふっ…滅茶苦茶痛かったの
Last Updated: 2026-06-21
Chapter: 第三十三話22 ※※※
中央の吹き抜けを飛び降りて、三階の手すりに手をかけて、そっから更に飛び二階へ。二階から今度は掴まれそうな出っ張りに手をかけて着地した。これなら一気に降りて来れるとは思ったけど、素面だったら絶対やってない。怒りって凄いね。恐怖を凌駕するね。一階に降り付くと、そこには大量にいたクローンの姿はなく、必死に誰かを探している心愛さんだけがいた。「心愛さんっ」慌てて呼ぶと、焦っておろおろしている心愛さんが、私に気付いて急いで駆け寄ってきたかと思うと、私の両腕を掴んで縋ってきた。「白鳥総帥っ!樹総帥が、樹総帥がいないんですっ」「……やっぱりね」だと思ったんだ。私は態と全ての謎を解かないように動いていた。それでも装置が起動するって事は樹先輩がその謎を解いたと言う事。そして、樹先輩は私との約束を違えるつもりはなくとも、【私達と一緒にいる】つもりないのではないかと、私は予想していた。…外れて欲しい予感程当たるんだよね。「…心愛さん。葵お兄ちゃんが上の階にいます。二人で屋上を目指して下さい。私は、樹先輩を発見次第連れて行きますから」「だ、駄目ですっ。それじゃあ、白鳥総帥がっ」「大丈夫。私は樹先輩とは違って裏を作らずに約束を守りますから」ニッコリと微笑み、もう一度大丈夫と答えると、心愛さんは頷いてくれた。その後上の階に向かって階段を駆け上って行く。逆に私は建物が揺れる中、地下へと向かった。上の階は私達が走り回ってたし、心愛さんも探していただろうから、多分いないんじゃないかと思うんだ。となると、残るは地下しかないでしょ。地下から上へ上がった階段を今度は駆け下りて行く。バシャンとクローンが溶けてせり上がった薬液の中に足を突っ込む。さっきまでぐらぐらと揺れていた建物が地下に入った事によって安定した。その代わり膝上まである薬液に足を取られるけれど。樹先輩、何処にいるんだろう?見渡す限り姿はない。~~~ッ!!隠れてたりしたら許さないんだからっ!地団駄踏みたいような衝動をグッと堪えて、私は大きく息を吸って叫んだ。「樹先輩っ!!樹せんぱぁーいっ!!」このまま姿を消すなんて許さないんだからっ!!「樹せんぱぁぁぁーいっ!!」奥に進みながら叫ぶ。何処にいるんだろうっ?「樹先輩っ!!何処にいるのぉーっ!?」声の限り叫ぶ。叫びまくる。「いぃー
Last Updated: 2026-06-20
Chapter: 第三十三話21 ※※※(樹視点)
―――美鈴が最後の謎を解き明かす数刻前。「……こいつで、百体目ぇっ!」「よいしょーっ!」俺が蹴り飛ばした奴を心愛が更に蹴飛ばして穴へと放り込む。この穴は俺が落ちたあのクローン処理場へ一直線の穴だ。「後、どのくらいだ?」「えーっと、残り数体くらいでしょうか?外にいるのがいーち、にー、さーん…五体いますね」「一階のは全て落としたよな?」「二階三階の奴らも恐らく、一階のクローンの溶けた匂いに反応して大分戻って来てますから、ここにいるクローン達の殆どは落としたと言っても良いんじゃないでしょうか?」「…地下の処理液はどのくらいだ?」「さっき、監視カメラの映像を確認してきましたけど、もう処理場からは溢れてます」「そうか」なら、次の段階へ移るか。「…まずはアイツが解かないであろう謎を解きに行くか」「え?解かない?でもさっき脱出するには、【全ての謎を解く必要がある】って」「あぁ。そうだ。だからこそ、美鈴は俺とお前を助ける為に【全ての謎を解かずに屋上の鍵を開ける道】を進む筈だ。だが、さっきも言った通り鍵を開ける為には【全ての謎を解く必要がある】んだよ。下手に頭が回る分だけ安牌を選ぼうとする」「それじゃ、ダメなんですか?脱出出来るならその方が…」皆で助かる方が良いんじゃないですか?と心愛の目が語っている。…助けたく、ない。誰を…と聞かれたら、こう答える。【俺を】と。美鈴は、俺を助けようとするだろう。だけど、…今までの俺がやって来た事を考えると、俺は美鈴の側にいるべきではないんだ。だってそうだろ。前世の俺は言うなれば屑だ。自分の好きな女を襲う男を、例え自分と言えど誰が許せると思う?ただ…俺は美鈴と約束をした。俺も必ず脱出する、と。自分程美鈴にとって邪魔な存在はいなと言うのに。。けど…邪魔な存在だったからこそ、せめて…せめて、美鈴が願った事は叶えてやりたい…。ハハッ…今俺の脳内ぐちゃぐちゃだ。美鈴への想いって事は変わらない筈なのに。何だろうな、この複雑な感情は…。思わず浮かぶ苦笑いに心愛は首を傾げていたが、俺はそれを気付かないふりをした。「まずは書斎の奥に行く。黒猫の鍵で開けた場所だ」走る俺の後を心愛は問題なく付いてくる。「黒猫の鍵の奥…。あれ?でもそこは白鳥総帥が謎を解いていましたよ?」「一つだけな」「え?もしか
Last Updated: 2026-06-19
Chapter: 第三十三話⑳ ※※※
「鈴ちゃん。魚の玩具一通り持って来たけど」帰って来た葵お兄ちゃんの手にはリュックがあり、その中を覗くと大量の魚の玩具が入っていた。一先ず床に全部出して、それぞれ確認してみる。うぅ~ん?それらしいのは一つも…ないなぁ。適当に一つずつ投げ入れて見る?ってあれ?「葵お兄ちゃん?これは何?」「うん?あれ?こんなの僕入れたかな?そこにあった魚の玩具をガサッと取って入れて来たから横にあったのも入ってしまったかも」「そうなんだ。…これってあれだよね?」私はリュックからセーラー服の女の子のフィギュアを取りだした。「あ、制服の色が違うだけで同じフィギュアだね」「うん。ゲームで言う所の2Pカラーみたいな?」「え?」「いや、なんでもないです。はい」私が持っていたのは青と白のセーラー服。葵お兄ちゃんが持って来たのは赤と白のセーラー服。「……あ、もしかして…」さっきのケンタウロスと同じで神話繋がりじゃない?私は手近にあった水槽にセーラー服の女の子を付けてみた。すると…。「これは…凄いね」「うん」セーラー服の女の子のフィギュア2体が光を放って、足が魚に…要するに2体とも人魚になった。「…うん?見て、葵お兄ちゃん」「どれ?」「水槽の下の方に何かいる」「…ヒドラ?」「にしては形がおかしいよ…えっ、ちょっと待ってっ」嫌な予感がして私は大慌てで、人魚に変わったフィギュアを取りだす。そして水槽から距離を取る。水槽の中にいる何か。最初は黒い影にしか見えなかったそれがどんどん膨らみ大きくなって行く。影は人の形を成型して行き…やがて肩と思わしき場所から何匹もの蛇が現れて…。顔の目の位置に赤い火の様な目が…これ絶対ヤバい奴っ!「間違いなくテュポーンじゃんっ!」「テュポーンは諸説あるけど、確か倒したのはゼウス…」「ゼウスと言えば…」周囲を確認して何か、【電化製品】を探す。ゼウスと言えば雷神でもあると言う。あぁ、もうこれで良いかっ。水槽に酸素を送り込む機械を水槽から取り外して、コードが繋がれたままその水槽の中に放り込んだ。水槽の中に一気に電気が走る。バチバチと火花を散らして走った電気はテュポーンを見事感電させ、もう一度影へと戻し霧散させた。するとその影の代わりに現れたのは、またしても水槽一杯のメダルが現れた。葵お兄ちゃんが確認すると、そ
Last Updated: 2026-06-18
Chapter: 第三十三話⑲ ※※※
案の定、葵お兄ちゃんは直ぐに戻って来てくれた。樹先輩の使っていた鞄を背負って。鞄の中を見るとメダルと鍵、それから食料、タオル類、そしてライオンのフィギュアが入っていた。「それ?」「うん。これ」良し。このフィギュアも嵌めてみよう。ライオンのフィギュアの底を確認すると、女神の底よりも少し大きい。これは間違いなく女神は歌ってくれるだろう。水夫を外してライオンのフィギュアを嵌め込む。すると、何時ものように女神は歌い始めた。【黄金の獅子。貴方は乙女の守護神。乙女から奪う事は出来ない。例えそれが私の心からの願いだとしても。貴方はずっと乙女と共に…。乙女の中に…】リピートに変わった。…うん。やっぱり今この水槽に関して一番該当しているのは、水夫を相方にした時だね。私はライオンを外してもう一度水夫を嵌めた。水を統べる君は悲しむなかれ。って所は恐らく水夫の事を表しているよね?そして奪われた金貨は私の形見。これはどう言う意味かな?私の形見…女神がいなくなるってこと?求めるは魔物を鎮める鋏の肉。「魔物を鎮めるの魔物がこの下にいる蟹なら、魔物を鎮める鋏の肉って、もしかして…」私は鞄を漁り中から蟹缶を取りだした。「もしかして、これの事?」「あぁ、確かに鋏の肉だね」「これを入れてみればいいのかな?」「やってみる?」「あ、ちょっと待って。残りの歌の文言を確認してからにする」えっと残りは、貴方の心が求めるまま戦いへ。手を貸しましょう。貴方の戦いに。だっけ?となると戦いに手を貸す…だから、船の上に水夫と女神を置いたまま、この蟹缶を開けて中に入れればいいのかな?「うん。…やってみようっ」パキュッ。缶のプルタブを引っ張って開けるとお腹の減りを更に誘導する蟹缶の良い匂いがする。無事に帰れたら蟹しゃぶ食べようと心に決めて、私はその蟹缶の中身を水槽に投入した。すると、水槽の中のグミのような部分に埋められた蟹の鋏が飛び出した。右の鋏、左の鋏、そして頭…。もしかすると、あの蟹缶に入っている成分か何かがグミ部分を弱体化させる効果があるのかもしれない。蟹が動き出すのを葵お兄ちゃんと眺めていると、唐突に水夫のフィギュアが動き出した。オールを片手に水の中に飛び込み、蟹と一騎打ち。木のオールで戦うって漢らしいな。水夫の行動を見守ってると、自分より何倍も大きい、
Last Updated: 2026-06-17
Chapter: 第三十三話⑱ ※※※
階段を駆け下りて私と葵お兄ちゃんは2階へと向かった。やっぱり謎が解けていないのはここが一番多いと思うから。それにメダルの回収も大事だしね。四階の謎解きにメダルは必須だし。取りあえず、交換機を叩き壊してメダルを取りだそうかな。各階の交換機を壊せば各階で手に入るメダルは全部入手出来そう。私だけだとちょっと壊すのも不安だけど。「?、鈴ちゃん?どうしたの?」葵お兄ちゃんがいるならきっと楽勝だよね。何でもないと葵お兄ちゃんに答えて私は階段を降りた。でそのまま2階へ足を踏み入れようとしたが、ここでとある事に気付いた。「あれ?…私確かこのドア破壊したはず…。え?何でドアが元に戻ってるの?」私が蹴破ったはずなのに、どうして?しかも、全力で蹴ったんだから何か所か凹みがあったはずなのに、それもない。「鈴ちゃん?ドア、どうするの?」動きを止めた事に疑問を覚えたんだろう葵お兄ちゃんが私に向かって伺いをたてた。「あ、うん。壊しても良いんだけど…」「そう?じゃあ壊すね」言うと葵お兄ちゃんは私が何回か蹴ってやっと破ったドアを一撃で蹴破った。「さぁ、行くよ。鈴ちゃん。それでまずは何処に行くんだい?」「まずは、自販機室」駆け出して自販機室へと入り、葵お兄ちゃんに交換機を破壊して貰った。すると中からメダルが出て来たので遠慮なく頂いて行く。流石に他のメダルはなく、あったのは牡牛座と双子座、それから獅子座のメダルだった。あれ?そう言えば、私鞄に…。背負っていた鞄を降ろし、チャックを開けると中からメダルが出て来た。「そうだ。2階のドアを破壊した時、念の為に拾っといたんだっけ」「結構な数があるね。言ってくれたら僕が持ったのに。重かったでしょ?」「そうでもないよ~。ちょっと待ってね。拾ったメダルを確認してみる」…双子、獅子、牡牛、双子、双子、牡牛、獅子……ふむ。「全部、双子座、獅子座、牡牛座のメダルみたいだね」「そっか。他の星座のメダルはどうするの?」「一先ず三階と四階の交換機を破壊してゲットしよう。そこで足りないメダルをチェックして足りない物をまた探しに行こう」「成程ね。う~ん…。鈴ちゃん、ちょっとここで…いや、この階で待っててくれる?僕が他の階に行ってメダルを取ってくるよ」「え?葵お兄ちゃん、大丈夫」大丈夫なの?と聞き返す前に葵お兄ちゃんは
Last Updated: 2026-06-16
乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。

乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。

現代日本風乙女ゲーム『輝け青春☆エイト学園高等部』通称『エイト学園』の世界に転生してしまった佐藤美鈴。 これから沢山のイケメンとの出会いがあると美鈴は震えあがっていた。 それは嬉しいから、ではなく。 美鈴がとある理由から『男性恐怖症』を持っていたからだった。 美鈴は転生を理解した瞬間から、イケメン達との出会いを避けるべく奮闘する。だが、その結果は散々で…。 とは言え、美鈴だってただただ指を咥えている訳ではない。 まずは自分に出来る事からやっていこうっ! と自分の運命を変えるべく一歩を足を踏み出す。 これは様々な出会いと経験を経て、大きな愛を『思い出す』美鈴の成長ストーリーである。
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Chapter: 小話58 後日談その5(前世の自分へと思いを馳せる)
「…報告は以上です」 「…分かった。ここにある内容が全てか?社員の総意って事で間違いないな?」 「は、はい…」 目の前の若い男は社長でも何でもない。なのに何故この場に、白鳥財閥の総帥代理の前にいるのか。 少し考えれば解ることだ。こいつが今持って来たのは報告書だ。多額の負債を出してしまった案件の。 「君は…これで良いのか?」 「…え?」 渡された報告書を机に投げて、椅子の背もたれにゆったりと背を預けた。 「会社の上司が失敗した事を、新人である菅原、君が全ての責任を負ってこれからの人生を棒に振っても良いのか?」 「そ、れは…」 じっと言葉の続きを待つ。だが、やはり新人で若い男は俯き言葉を発する事はなかった。 …当然と言えば当然だ。自分の所の上司より遥か上の上司に会ってる訳だしな。しかもその理由が謝罪と報告。だがこいつは仕事を辞めるではなくきちんと謝罪に来た。それだけ根性があるって事だ。失うには勿体ない新人だ。 俺は言葉を失ったそいつの代わりに言葉を繋ぐ。 「この事案は君の様な新人が請けもてる案件ではない。そんな事は上の人間が一目見れば解る。もし解らないとでも思われていたのなら、…随分舐めた真似をしてくれるな」 「ち、ちがっ」 「分かっている。これは君がやれる上司への復讐だったんだろう?」 「え…?」 ゆっくりとそいつは青褪めた顔を俺へ向けた。 「君の様な人間は貴重だ。失うのは惜しいからな。一つ、君に頼みがある」 「頼み?」 「そうだ。それが出来たなら君をうちで引き抜こう」 「やりますっ!!」 一も二もなく頷くそいつに頷き返す。 「私は一体何をすれば…」 「…君の所の上司を連れて来い。何を言って誤魔化しても俺の立場を利用してでも良い。ここへ連れて来い。…出来るな?」 コクリと頷き、直ぐに踵を返して勢いよく部屋を出て行った。 多分、やり遂げるだろう。自分に失敗の責任を全て押し付けた上司に恨みはあれど同情はないだろうからな。それに、部下に自分の失敗を全て押し付ける様な輩は部下を率いて上に立つ資格はない。 自分でやり返さないと、恨みだけ残り続けるしな。 …さて。菅原を配属させる場所を選んで置かないと、だな。 今、何時だ? …………………23時? ちょっと待て?ちょっと待てよ? 今日は何日だ…? ………カレンダー
Last Updated: 2026-04-29
Chapter: 小話57 後日談その4(男達の宴会with乙女)後編
「次に貴方を見たのは、これまた私が学生の時よ」そう言って、男の視線は俺から、透馬達に流された。透馬、奏輔、大地の視線が冷えて行く。きっと俺も同じ目になっているだろう。※※※(乙女の独白そ・の・2はぁと)何事も、調査と言うのは必要不可欠な物。あの人の事を知りたければ、自分の足で動かなきゃっ☆そう。その為に私は今ここに、エイト学園にいるのだからっ!もうっ、聞いてよっ。ほんっとうに大変だったのよっ。ここの制服手に入れるのっ。何でも愛しの鴇様が入学してからエイト学園の制服を手に入れて不法侵入する輩が増えてんですってっ!だから、正規の生徒手帳がないと店では売ってくれないのらしいのっ!おかげでオークションで愛しの鴇様の制服を落札する為に30万も使っちゃったわっ!!こつこつと貯めてた手術代がパーよ、パーっ!ほんっとうに大変だったわぁ。不法侵入とかそう言う輩がいるから、最近の日本は犯罪者が増えて来てるのよっ!節度って大事よねっ!さ、てと。今は怒りを横に置いといて。愛しの鴇様には顔がわれてるから、バッチリ化粧と髪も染め上げて来たわ。これで絶対バレないは・ずっ☆まずは愛しの鴇様が登校してくるのを発見しないとっ☆待ってて、愛しの鴇様~☆校門の前で愛しの鴇様が来るのを待機。勿論、物陰から観察よっ。真正面からなんて恥ずかしくて出来ないわっ、きゃっ☆「なぁ、鴇。今日、姫に会いに行っていいか?」「あ、オレも行くー」「なら、俺も便乗させて貰うわ」「…お前らなぁ。そう言いながら毎日家にくるな、鬱陶しい」きゃあああああああっ!!!!なになになんなのっ!?あの神々しい集団はっ!!愛しの鴇様の周りにも神の御使いが三人もっ!!やだっ!!素敵ぃーっ!!校門側の大木の影に隠れていた私の所まで光を放つなんてっ!?目に焼き付けるのよっ!!この美しさを忘れないうちにっ!!ふー…ふー…。素敵…素敵よぉ…。愛しの鴇様が呆れながらも小さな笑みを浮かべてるわぁ。あぁ、愛しの鴇様の隣にいる紫髪の彼。彼もまたいいわぁ。着崩してる制服から見えるシルバーが溜まらないわ。その後ろを付いてくる、体育会系の彼。彼もいいっ。茶色の短髪も男臭くて堪らないけれど、それよりも体っ!体よっ!肉体美っ!美しい筋肉っ!あぁ、堪らないっ!更にその体育会系の彼の横にいる、繊細な美人もいいわっ!男の子な
Last Updated: 2026-04-28
Chapter: 小話57 後日談その4(男達の宴会with乙女)前編
「それじゃ、皆揃ったな。乾杯!」『かんぱ~いっ!!』それぞれがグラスを片手に声を上げた。金山達が使っているバーを今日は貸切、今は二つのテーブルで二つのグループで盛り上がっていた。「やっと日本に帰って来れたよ。葵兄も棗兄も久しぶり!」「優兎。随分頑張っているみたいだね。どこぞのアホと違って」「おい、葵。そのどこぞのアホってのは俺の事か?」「龍也以外誰がいるって言うのさ。大体、何しれっと鈴ちゃんに会いに来てるんだよ、図々しい」「あの時は仕事にちょっと余裕が出来たからだなぁ!」「樹先輩!白鳥さん見ませんでしたかっ!?」「あ?今日は女の参加はなしだろ?だったよな?棗」「そうだね」「は、話が違うじゃないですかっ!棗先輩っ」「お前がいつまでも鈴を狙ってるから、その措置に決まってるだろっ!!」「……相変わらず、姦しいけど、帰って来た気がするなー…」優兎が遠い目をして、双子と御曹司たちに挟まれて呟いている。安心しろ、優兎。こっちはこっちで悲惨だぞ。「だから、こっちより海里にはこっちの指輪のが似合うだろ」「じゃあ、こっちにしようかな…透馬兄、これだよね?」「なんで今そっちを選んだっ!」「………奏輔様。新しいお酒です」「いつの間に空良は俺の舎弟化したんやろなぁ…。でも、ほんっと、あの姉貴たちを見た後だと心洗われるわー…」「っしゃあっ!!じゃあ、五番勝負っすよっ!師匠っ!!」「陸実ー、オレに勝とうなんて十年早いー」「腕相撲から勝負だーっ!!」ほらな、地獄だろ?ぐったりしている優兎の視線が俺とかち合った。抜け出そうと言っている。俺も素直に頷いて、そこからするりと抜けて優兎と二人、カウンター席に座った。目の前にグラスでウィスキーのロックが並ぶ。「あー…落ち着いたー…」「あいつら、何であの歳でなおあそこまで騒げるんだか…」優兎と二人まったりと会話をする。一時期、優兎は美鈴の件で怒鳴ってしまった俺に引け目を感じていたらしいが、俺は全く気にしていないからか優兎も割り切って普通に戻っていた。「真っ直ぐここに来たんだろう?美鈴には明日会うのか?」「美鈴ちゃん、今、里帰りしてるんでしょ?じゃあ、明日僕も帰るから今日中に会える、かな?」「この飲み会が今日中に終わるか?日付越えるだろ、どう考えても。会うのは明日の朝だな」「それは、確か
Last Updated: 2026-04-27
Chapter: 小話56 後日談その3(『輝け青春エイト学園高等部』と『無限』⑤)
片手にどうにか双子の娘達を抱え込み、ペンでまず俺の名前を書いた。「今佳織母さんに説明したのは俺の意思が生まれた一番最古の前世だ」「ふむふむ」「で、俺はここからまた、この世界に転生した」矢印を下に引いて俺の次の前世の記憶と書く。「そして、ここからリョウイチさんの干渉が始まる。そこまでは干渉ではなく見守りの状態だった。そして、なんでここでリョウイチさんの干渉が入ったのか。それは恐らく佳織母さん達の前世が繋がったからだ」もっと言うなら、佳織母さんにリョウイチさんが惚れたから、って事だろう。「けど今はリョウイチさんの視点ではなく俺の視点で話す。その次に真っ先に修正されたのは佳織母さんの立ち位置だ。それまで横暴だった佳織母さんはその修正により、佳織母さんの魂修正が入った。要はさっき佳織母さんが言った子供を大事にする要素だな。勿論他にもこまごまとあるだろうが、リョウイチさんが一番直しやすかった所から入ったんだろう」俺の名前の下に佳織母さん修正済みと書いた。「で、ここでリョウイチさんのミスが一つある」「…都貴静流、かしら?」「その通り。アイツが違う体に転生して、美鈴を狙い始めたんだ。その時はもう佳織母さんの修正が済んだ後。もっと言うなら、暫く他の世界を経由して来た後なんだよ」都貴静流の名前を佳織母さんの横に書く。「予想外の動きにリョウイチさんは次から次へと修正を繰り返した。数えきれないくらい修正したんだろうな。修正は沢山あった。暫く双子が生まれない時もあったし、優兎が転校してこず親に愛される、それこそ、所謂攻略対象者達と美鈴がくっ付いた時もあった。面白いのがそのどの世界軸でも俺は死んでいたって事だな」「そうだったの?」「あぁ。何度も死んださ。美鈴を想いながらな。何度も何度も修正を見て来たし、その数の多さの証拠があの都貴静流の転生体の多さだ」何度も何度も転生を繰り返し、発生した出来事を最初は何かしらでまとめていたが、最終的に佳織母さんに知らせる意味も込めて乙女ゲームと言う形をとったのだろう。「俺達は前世の記憶と言う形で混じり合ったが、本来人間の生は、命が終わった時点でリセットされねばならない。けれど、前世で繋がってしまったために新たな芽として生まれていた命が一つの大木として育ってしまった」「生の本流が出来上がってしまったのね」「そうだ。そして
Last Updated: 2026-04-26
Chapter: 小話56 後日談その3(『輝け青春エイト学園高等部』と『無限』④)
「ごほッ…」俺に届く筈の手は届かなく、美鈴はその場に崩れ落ちる。都貴静流の手には、赤く滴る血が流れるサバイバルナイフがあった…。「きゅ、救急車っ!!」優兎が兎の可愛い鞄から電話を取り出し、119番にかけている。「あ、あはは…白鳥さんッ、なんて、なんて美しいんだっ…」都貴静流がサバイバルナイフを空にかざして恍惚に呟く。「もう一度…もう一度その血を魅せてくれ…あぁ、堪らない…」「気持ち悪いんだよっ!!てめぇはっ!!」力の限りそいつの顔面を殴り付け、地面にそいつが座りこんだ隙に美鈴を抱き起す。口元から血を流す美鈴の顔はどんどん血の気を失って行く。「…ぉ…き…」「喋るなっ!今、病院に連れてってやるからっ!」「…さ、む、ぃ…」慌てて着ていたジャケットを脱いで美鈴の背中の刺し傷を塞ぐようにきつく巻きつける。「……ぉ…ぃ…どぉ、…こ…?」「美鈴っ!大丈夫だっ!俺はここにいるっ!」遠くから救急車のサイレンが聞こえて来た。俺は美鈴を乗せるべく抱き上げ立ち上がり、少しでも早く救急車に乗せれるようにと走った。目の前に救急車が止まり、隊員の人が出した担架に美鈴を乗せて、美鈴が救急車の中に運び込まれ、救急車はそのまま走り去っていく。救急車を見送っていた、その時。ドスッ―――。再び鈍い音が聞こえた。今度は俺の脇腹から。「邪魔…邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔なんだよぉぉぉぉぉぉっ!!」「それ、は、こっちのセリフだっ!!」痛みはあった。けど、今はそれすらも凌駕する怒りが俺を支配していた。殴り返して、争って、最終的に都貴静流の持っていたナイフが都貴静流の胸に突き刺さり、そいつは倒れた。見届けて、俺は血が流れる体を引きずって車に乗り込み、家へと帰った。ソファに座りこみ、止まらない血を手で抑えながらテレビを点ける。『先程速報が入りました。○○大学で起きた殺傷事件で男に刺された女子生徒白鳥美鈴さんが先程亡くなりました』…知っていた。あの状態から美鈴が息を吹き返す訳がないと。知っていたのに、まだ、何処かで…生きていてくれているんじゃないか、と。「………美鈴…。今、俺も逝く…」瞳から溢れる涙を拭う力すら消えた俺は、そのまま闇に落ちた…。※※※こうして俺が美鈴と恋仲になりホストを辞めて幸せになると誓ったその時に、都貴静流に美鈴は殺さ、そして俺もまた殺さ
Last Updated: 2026-04-25
Chapter: 小話56 後日談その3(『輝け青春エイト学園高等部』と『無限』③)
美鈴に惚れた自覚を持って、それからまた一ヶ月後。「わ、私、鴇お兄ちゃんが好きっ」そろそろ来るだろうと思ってたが、予想外に早い美鈴から告白に俺は心の中でガッツポーズをした。俺らしくない?知るか。嬉しい時は喜ぶものだろう。「俺もだ、美鈴。愛してる」美鈴をきつく抱きしめると、美鈴はまた嬉しそうに笑った。この時の俺達は幸せの絶頂でいつまでもこの幸せは続くのだと、そう思っていた。ある日、俺は親父の勤めている会社へと美鈴とこれからも一緒に、あわよくば結婚する事を伝えに向かっていた。「…兄さん」「何故ここに?」声がして前を向くと、そこには双子の弟の葵と棗がいた。二人共俺と同じ血が流れているはずなのに、どちらも立派に大学へ通い、同時にアルバイトもこなしているようだった。「葵に棗?それはこっちのセリフだ。お前達は何故ここにいる?」「…白鳥の姓を抜けようと思いまして」「しがみつく価値のない家なので」「成程な」「兄さんは?」「似たようなもんだ」「そうですか。なら一緒に行きますか」葵の方から誘ってくるなんて珍しい事もあるものだ。俺はそうそうに白鳥家を出て行った。双子のこいつらがいることを知っていたのに。だから嫌われている筈なんだがな。何故こんな対応なのか解らずに。それでも断るのも気が引けて俺は双子の弟達と一緒に歩きだした。いや、歩き出そうとした。急に俺の携帯が着信を告げた。かけて来た相手を確認すると、そこには『美鈴』と表示されており、俺は慌てて電話に出た。「美鈴?どうした?」『鴇っ。どうしよっ。怖いっ』何時もの勝気な声ではなく、どこかに隠れでもしているのかか細く震えた声だった。即緊急事態だと理解する。「今、どこにいるっ?」『大学、の、空き教室の、ロッカー、の中…ッ』「解ったっ。いいかっ、電話、切るなよっ」『うん、…うんっ』俺が急ぎ来た道を引き返そうとした時、葵と棗が何故か引き止めた。「急いでるんだっ」「解っています。美鈴とは兄さんが保護した僕達の妹ですよね、義理の」「そうだっ」「オレ達も、妹に目を向ける余裕がなかったからね。少しばかり、手を貸させてよ」そう言って、双子は何処かに電話をかけている。「僕達の知り合いが義妹と同じ大学に通ってる。探して守って貰うよ」「…大丈夫なのか?」「それなりに強いよ。大丈夫」
Last Updated: 2026-04-24
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