เข้าสู่ระบบ主役である里亜は、ピンク色のドレスを着て部屋に入ってきた。湊斗が今日誕生日を迎える里亜のため、特別に用意したものだった。「まぁ、なんて可愛いのかしら……!」「普段から愛らしい子だとは思っていたけれど……今日は妖精さんみたいね」真由子や遅れて到着した静香は、ドレス姿の里亜に自然と頬を緩ませた。里亜は誰から見ても愛らしい子だから、仕方がない。その中でも一番メロメロだったのは、もちろん湊斗だ。元々冷たく、人前で滅多に笑わない湊斗だが、今日は周囲が驚くくらい笑顔だ。自然と上がる口角を抑えることができず、彼女は里亜にデレデレだった。「里亜、こっちに来なさい」「はぁい」湊斗は里亜を呼び寄せると、彼女を抱き上げて膝の上に乗せた。ウェーブのかかった髪の毛は、瀬奈がヘアアイロンで巻いてあげたものだった。頭にはティアラが付けられている。いつだったか、里亜はお姫様になりたいと言っていた。その願いを誕生日である今日、叶えてあげることにしたのだ。正面に座る真由子が、里亜を見て口を開いた。「里亜ちゃんはいつもと変わらず可愛いわね。子供の頃の暁さんによく似ているんでしょうね……」「ありがとうございます。でもどっちかというと里亜は夫に似ているんですよ」「まぁ、神宮司社長に……?」その瞬間、真由子や誠也たちの視線が湊斗に集中した。「……何だ」信じられない、あの冷酷な社長がこんなに可愛かったのかでも言いたそうな瞳。湊斗は不快感を抱いた。湊斗の幼少期を知っている人物であれば、間違いなく瀬奈よりも彼のほうが里亜にそっくりだと感じるだろう。それほどまでに、二人は似た者親子だった。「さぁ、里亜。みんなに挨拶をするのよ」瀬奈は、湊斗の膝の上に座る里亜に小声で囁いた。里亜はコクッと頷くと、瀬奈と練習した通りに挨拶を始める。「今日は里亜の誕生日パーティーに来てくれてありがとうございます、みなさん」里亜が言葉を発した途端、場が静まり返った。小さな主催者の挨拶に、全員が耳を傾けている。「みなさんのために美味しいご飯をたくさん用意しました。ぜひ楽しんでいってください」里亜が挨拶を終えると、パチパチと小さな拍手が鳴り響いた。きちんと挨拶できた里亜の頭を、湊斗が愛しそうに撫でた。
それから数週間が経ち、里亜の誕生日当日になった。里亜は六歳になり、あと半年も経たないうちに小学校へ入学することとなる。(時の流れはとっても早いのねぇ……)瀬奈はすっかり大きくなった里亜を見つめ、心の中で呟いた。今日、彼女は里亜の誕生日パーティーを開いていた。場所はすっかり住み慣れた神宮司邸、瀬奈はパーティーのためにケーキやチキンなどの料理を一生懸命作っていた。(部屋の飾りつけもしないと……)瀬奈は猛スピードで料理と飾りつけを終わらせ、招待客たちを迎え入れた。「―――神宮司さん、久しぶりね」「瀬奈さん、お久しぶりです」始まりの時間が近づき、家を訪れたのは誠也や真由子たち稲田町のメンバーだった。会うのは実に数ヶ月ぶりだった。何だか、ずいぶん懐かしく感じられる。瀬奈は誠也たちとの再会を、心から喜んだ。「皆さん、ようこそ神宮司家へ!今日は里亜のために足を運んでくださって、とっても嬉しいです」「当然のことですよ、瀬奈さん」誠也が笑顔で言葉を返した。後ろには皆川社長や親しくしていた社員たちもいる。もちろん、里亜にとっては叔母の静香やその旦那も後々来ることになっていた。「よかったら、私たちも何か準備を手伝いましょうか?」「いえいえ……既に大半は終わらせているんです。皆さんはゆっくりしていてください」瀬奈は彼らをリビングに通した。その後湊斗が仕事から戻り、いよいよパーティーが始まった。開始早々、彼女の横に座っていた湊斗が不満そうに愚痴を溢した。「なぜこんなにも多く人が……俺とお前と里亜だけではダメだったのか?」「どうせなら、人をたくさん呼んだほうがいいでしょう?賑やかだし」「だが、あの男まで呼ぶ必要があるか?」湊斗が視線を向けた先にいたのは、誠也だった。湊斗と誠也には、実はかなり深い因縁があった。「里亜は誠也さんに懐いていたし……彼だけ呼ばないなんて酷い話だわ」「……」誠也を呼ぶかは瀬奈も悩んだが、里亜自身が望んでいたので仕方がない。大事なのは瀬奈の意思ではなく、主役の里亜の意思だった。そこまで言うと、湊斗は諦めたように口を開いた。「じゃあ……二人きりになるの禁止な」「……湊斗?」―――そのとき、湊斗がまるで周囲に見せびらかすように瀬奈を抱きしめた。そして、彼女の頬にチュッとキスをした。(ちょ、ちょっと人前でなんてことしてる
百合子と愛斗の二人は他の誰よりも、沙織の逮捕に驚いていた。どれだけ彼女が毒だったとしても、血の繋がった母親であることに変わりはない。百合子は沙織の身を案じていた。もしかすると、誤認逮捕で苦しんでいるのかもしれない。そう思うと、いてもたってもいられなかった。「愛斗……お母さんに会いに行こうよ。事実確認をしないと……」そう提案した百合子に、愛斗は冷たく言葉を返した。「……俺は行かないよ、姉さん」「ど、どうして……?」愛斗は姉のその質問には答えなかった。ただ、興味がなさそうに行くつもりはないと吐き捨てる。(愛斗ったら、どうしたのかしら?母さんに会わないだなんて)百合子がいくら誘っても、愛斗は行かないの一点張りだった。仕方ないなと思いながらも、百合子は一人で面会に行くことを決めた。***沙織が収容されていたのは、被疑者を一時的に拘束する留置場だった。百合子は沙織の娘であるため、面会が認められた。数日ぶりに会う沙織は、前に見たときとほとんど変わっていなかった。強いていうなら、服装くらいだろう。いつも華やかな装いの沙織だが、今日はグレーのスウェットを着ていた。すっぴんでも化粧をしているときとあまり変わらない。沙織は娘である百合子の目から見ても、美しい女性だった。「百合子!私に会いに来てくれたのね!なんて優しい子!さすがは私の娘、女神だわ!」「お、お母さん……」沙織は百合子の姿を見ると、目を輝かせた。まるで会いたかったとでも言いたそうに、満面の笑みを浮かべた。(逮捕されたって聞いたから心配してたんだけど……なんかいつもより機嫌が良さそう……)百合子はその姿にひとまず安心した。病んでいたらどうしようかと思っていたが、杞憂だったようだ。沙織はニコニコしながら、口を開いた。「ねえ、百合子……お母さんからのお願い聞いてくれる?」「お願い?何?」「実はね、差し入れしてほしいものがあるんだけど……」沙織は現金や衣服など、いくつか物を挙げた。百合子はパシりのように扱われている気がしてならなかったが、他でもない母親の頼みだ。(特に違反しているわけでもないし、いいか……)母親の真意はわからないが、何も言わずに聞き入れた。「それとね、もう一つ大事なお願いがあるんだけど……」「……?」沙織は誰にも聞こえないように、声を潜めた。一体何を言われるのか
沙織の逮捕が報道され、彼女を知る者たちの間では激震が走った。沙織は外では子供たちに優しく、湊斗を深く愛する穏やかな女性として知られていたのだから当然かもしれない。しかし、逮捕時の様子が拡散されると、そんな彼女のイメージは崩れ去った。「あの嶋田さんが……」「信じられないわ……しかもこんなに暴言を吐いて……」人間の裏側なんて、パッと見ただけでは判断できないものである。黒川区では沙織のことを知らない人間はいない。突然の逮捕報道に、驚きの声が次々に上がった。「あの女……ようやく捕まったのか……」彼女が逮捕されてから数日、ネットニュースの記事を見ながら呟いたのは涼だった。涼は沙織の逮捕に安心していた。あの女が二度と罪を犯すことはないのだと思うと、ホッとした。彼は以前から、瀬奈のことを気にかけていた。前のパーティーで湊斗から逃がしてあげたのは、紛れもない彼だった。「神宮司さんが辛い思いしていないか……近いうちに一応確認しに行っておくか」多分してないとは思うけれど、念のために。「それより、アイツは離婚後すぐに熱愛報道あったせいで、大炎上だな……」アイツとは、涼の友人の翔也のことだ。翔也は、不倫発覚が原因で女優の妻と離婚が成立している。しかし、その僅か一ヶ月以内に現在の恋人との熱愛報道が週刊誌に撮られてしまったのだ。もはや短期間で二度目のスキャンダルに、彼は落ち込む様子すら見せなかった。『下がる評判もないし、別にいいや』以前涼と会った際には、特に気にすることもなく、離婚後の生活を楽しんでいるようだった。彼ほど本能のままに生きている人間は、涼の知る限り他にはいない。前に死ねばいいのにとは思ったが、こういうタイプは何だかんだ長生きするだろうな。まぁ、どうせすぐ今の相手にも飽きて別の女と浮気するだろうけど。翔也を長年見てきている涼だからこそ、そのことがすぐにわかった。***沙織の逮捕は人々に衝撃を与えたが、最も驚いていたのは当然、二人の子供たちだった。「姉さん……母さんが逮捕されたって……」「ど、どういうこと!?同姓同名の別人じゃ……」ネットニュースで母親の逮捕を初めて知った百合子と愛斗は驚きを隠しきれず、大きなショックを受けていた。「違う……間違いなく母さんだよ……黒川区って書いてあるし……」「そ、そんな……母さんは一体何を……」母親
一週間ぶりに帰宅した瀬奈は、その日を家族水入らずで過ごした。三人で夕食を摂り、一緒にお風呂にも入った。実家に帰る前も疎遠だったせいか、家族三人での時間はずいぶんと久しぶりだった。湊斗の傍にいると、彼女はとても安心することができた。やはり私の居場所はここだったのだと、心からそう思えた。疲れていた里亜が眠りについたあと、瀬奈はおもむろに口を開いた。「湊斗……色々とありがとうね」「何だ?急に」彼女は彼が自分のために動いてくれていたことなど全く知らず、浮気を疑い、他の男と過ごしていた。あのときのことを思うと、罪の意識に苛まれた。「言っただろ、お前のためなら何でもするって」「……」以前までは信じられなかったその言葉が、今では他の誰よりも信用できる。しかしそれでも、事の顛末をしっかり聞いておくべきだろう。「湊斗……沙織のことを詳しく聞きたいんだけど……」「……そうだな、お前にきちんと説明しておかないと」瀬奈と湊斗は移動し、話し合いをするために向かい合って座った。湊斗は沙織逮捕の件について、瀬奈に細かく説明した。彼女を捕まえるために友人女性と手を組んでいたとか、その調査のせいであまり家に帰ることができなかったとか。「そういうことなら、私に言ってくれればよかったのに……」「お前に危険が及ぶのだけは避けたかったんだ。騙すような真似をして悪かったな」湊斗は瀬奈の頭をポンポン撫でた。その大きな身体に抱き締められると、ようやく安心することができる。「……湊斗、もうすぐ里亜の誕生日なの、覚えてる?」「忘れるはずがないだろう?俺の唯一の子供の生まれた日だ」あと一ヶ月もしないうちに、里亜は六歳の誕生日を迎える。来年からは小学校に入学する年になる。奇跡のように生まれてきてもう六年が経つのだと思うと、何だか涙が出そうになる。「あの子の誕生日を盛大に祝ってあげたいの。あなたももちろん、そのつもりでしょう?」「ああ、当然だ。プレゼントは何がいいだろうか。会場はどこにしよう。ハワイにでも行くか?お城をプレゼントするか!」「ちょ、ちょっと……」湊斗はよほど楽しみなのか、かなり暴走していた。瀬奈はそんな夫を何とか落ち着かせた。「実はね……里亜が行ってみたいって言ってたところがあるんだけど……」瀬奈は湊斗にそっと耳打ちをした。里亜の行きたい場所を聞いた彼は、意外
暁家に宿泊してから一週間が経過した。静香もそれ以上家を空けることはできず、二人は自然と帰る時間になった。ちょうど今、瀬奈と静香が玄関で泰西、千郷と向かい合っているところだった。瀬奈は兄泰西の手を両手でギュッと握った。こんなことをするのは、もしかすると初めてかもしれない。以前までの二人は、とても仲の良い兄妹とは言えなかったから。「兄さん、色々とありがとうね」「ああ……また旦那と喧嘩したらいつでも来い。待ってるぞ」「ええ、そうさせてもらうわ」泰西の冗談に、瀬奈は笑いながら頷いた。もし来るとしたら、ずいぶん先になりそうだな。父は見送りには来なかった。当然だろう。あんなことがあったあとだし、父は静香とも折り合いが悪いままだったから。(あの人はそうやって……この先も孤独のまま、生きていくんだろうな……)妻に先立たれ、交際していた女性全員にも逃げられてしまった。父の虚しい最期を想像した瀬奈は、彼の暮らしている本邸から目を背けた。父がどんなに寂しい思いをしていたところで、瀬奈にとってはどうでもいい。彼とはもう、完全に縁を切ったのだから。最後の希望を抱いて挨拶に行ったあの日、少しでも仲を改善できたらという彼女の思いは粉々に打ち砕かれた。里亜は泰西の袖を引くと、バイバイと手を振った。「おじさん、またね」「ああ、またな」なぜか里亜はこの一週間で泰西にかなり懐いていた。彼に対する恐れも、今はすっかりないようだ。「じゃあね、兄さん!元気でね、またいつか三人で集まりましょう!」「ああ、お前もな」遠くから瀬奈は泰西に大きく手を振った。横にいた静香は、そんな妹の様子をじっと眺めていた。「姉さんも手を振ったら?」「……何で私があんなヤツに」「あんなヤツだなんて、そんなこと言っちゃダメよ!仲直りしたんでしょう?」瀬奈の言葉に、静香は泰西のほうを振り返った。そして渋々、右手を上げて左右に動かした。静香のその行動に、泰西は堪えきれないという様子で口元を手で抑えて笑った。「やっぱりアイツ、ムカつくわ」「そんなこと言わないの!」今にも掴みかかってしまいそうな静香を、瀬奈は何とか宥めた。***静香とも挨拶を済ませた瀬奈は、里亜と共に神宮司家の本邸へ帰っていた。およそ一週間ぶりとなる、湊斗と暮らす家。(とっても懐かしく感じてしまうのは、気のせいかしら……







