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第1295話

Author: リンフェイ
咲の弟も彼女のことを庇ってくれていた。しかし、それもただ数年間だけのことだった。弟が彼女を守ろうとするので、母親が彼をエスカレーター式の学校へと送り込んでしまったのだ。

咲に優しくしてくれる人を、母親がひとり、またひとりと遠ざけていった。

「結城さん、この花束はあなたの婚約者にあげるはずでは?」

辰巳は笑って言った。「結城辰巳が婚約したという噂を聞いたことがありますか?ないでしょう。あれはただ適当についた嘘ですよ、あなたのお母様を騙すためのね」

咲は目が見えないが、トップクラスの財閥家である結城家にまつわる噂なら、彼女も聞くようにしていた。

確かに結城辰巳が婚約したという話は聞いたことがない。

ただ結城家の一番年上の結城理仁が既婚だということは知っていた。その妻は唯花である。

唯花が咲のことを助けてくれてから、理仁は彼女の継父に唯花と彼女は初めて会った時から、昔から仲良くしている友人のような感じだと言ってくれたのだ。そして継父は彼女に対して以前よりも態度が良くなっていた。

継父は以前、彼女に対して冷たかった。母親のように彼女を虐待したり嫌がらせをしたりすることはなかったが、母親と鈴がやることを彼は見て見ぬふりをしていたのだ。

つまり彼は冷ややかな目で彼女がひどい目にあるのを傍観しているだけなのだ。

「花代は……返金しませんよ」

辰巳は笑った。「しなくていいですよ」

そう言い終わると、彼はまた話し始めた。「ある時は傷のない宝石みたいに純粋で高潔なオーラをしているのに、ある時はまるで守銭奴みたいになるんですね」

「お金というものは万能ではありませんが、お金がなければ何もできないでしょう。結城さんみたいに生まれた時から勝ち組のお方には、私のような貧乏人のお金に対する情熱なんてわかりっこないんです」

辰巳「……」

彼だってお金にはかなり興味があるんだぞ。

ただ、彼が稼ぐのはどれも巨額であるから、数万円程度の金額は、確かに彼は別に目にも入れていない。

……

夜の時間は、理仁夫妻にとって、最も仲睦まじく甘いひとときである。

唯花がバスルームから出てくると、もうお風呂を済ませた理仁がベッドの枕元によりかかって座って彼女を待っていた。そして彼女は笑顔で近づいていき、ベッドに上がるとまずは彼の目の前に座りそのイケメン顔にキスをした。

「理仁、私
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