تسجيل الدخول「すごく綺麗なスカートなのにな。俺がじっくり選んできたんですよ。それを見せてくれないなんて。あれを着て街をぶらぶらしないにしても、ちょっと俺に見せてくれたっていいじゃないですか」奏汰は玲が泳ぐ前に着ていた服を彼女に渡して言った。「早く着替えてきてください。風邪を引いてしまいますよ」玲は怖い顔で自分の服を受け取り、女性更衣室に戻って、バタンッと大きな音を立ててドアを閉めた。この男に怒りは感じる。しかし、彼は立て続けに彼女がくしゃみをしたので、風邪を引かないか心配し、すぐに投降してしまった。この男は恥も何もかも捨て去っている時には、非常にイライラさせられ、ギッタギタに懲らしめたくなる。しかし、彼が気遣いを見せてくれる時には、確かに温かく彼女を包み込んでくれる。玲がまた男の姿に戻るには、少し時間がかかる。すでに着替えを終わらせている奏汰は、プールサイドにあるビーチチェアに横になって、真っ黒な空を見上げていた。彼女の綺麗なスカート姿を拝むことはできなかったが、それでも収穫はあった。少なくとも、彼女の水着姿を見ることはできたからだ。彼女を送った後、体が温まるジンジャーティーでも作って、飲ませてから休ませよう。それから三十分後。ようやく玲が更衣室から出てきた。彼女がいつものイケメンに戻っているのを見て、奏汰は立ち上がり笑みを作って言った。「俺たちが結婚したら、玲さんは妻でもあり兄弟でもある感じがするでしょうね。それもなんだかいいかもしれないと突然思いました」玲は彼を睨みつけた。「誰があんたと結婚すると言った?」「俺のところに嫁に来たくないなら、俺が婿養子になると伝えたでしょう。その時は、どれくらい結納をもらいましょうかね。家を購入する時はもちろん俺の名前も入れてくれますよね?結婚したらどちらがお金の管理をしますか?まあ、結婚した後はどの方面においても、玲さんが損するようなことにはしませんからご安心を」玲は言った。「……それじゃ、あんたが子供を生んでくれるとでも?」「子供を生むのは二人に関係することでしょう。そんな栄誉を俺一人が独占するわけにはいきませんよ。もし、玲さんのほうが合わせてくれるなら、すぐにでも子供を生むことは可能ですがね」「夢でも見ていろよ!」奏汰は笑って言った。「現実とは残酷なものです。だから、夢
彼女がプールから出てきた時には、すでに奏汰も上がっていた。辺りに彼の姿はなかったので、きっと更衣室に着替えに行っているのだ。玲はあまり多くの事は考えず、自分も更衣室に向かった。更衣室に入ると、さっき脱いだ男用の服がなくなっていた。それに、男装する時に使っている偽物の胸筋などもきれいになくなっている。そして残されていたのは、あの新しい婦人服だけだった。聞くまでもなく、さっき彼女が痛快に泳いでいる間に奏汰が先に更衣室に入って、男装用の服を持ち去ったのだ。あの恥知らず野郎、こうやってまでスカートをはかせようとするのか。彼女は今までスカートをはいたことはない。体の向きを変えて、玲は女性用の更衣室から出て、男性用のほうへ行き、ドアをノックし叫んだ。「結城奏汰、俺の服とその他いろいろ返せ」「あなたに代わって片付けたんです。家に着いたらお返ししますよ」中からはふざけた野郎の声が聞こえてきた。玲は顔色を暗くさせ、命令口調になった。「結城奏汰、今すぐ、さっさと俺の服を返せ!」もしスカートをはいて家に帰れば、家の使用人たちにまで自分が女だということがばれてしまう。この時の玲はまだ、自分が女性であると周りに打ち明ける心の準備ができていない。やはり結城奏汰を信じるべきではなかった。こいつが一番望んでいるのは、玲を女性の姿に戻すことだ。そして、彼が同性愛者だという疑いを晴らし、玲を恋い慕う女性たちを諦めさせることだ。「そちらに服は用意しておきましたよ」「あれは女性用の服だ!」「玲さんは女性でしょう」それには玲も言葉を失ってしまった。そして暫くして、彼女は冷ややかに言った。「おい、お前、ドアを開けないというなら、無理やりにでもこじ開けるからな」「どうぞ、今俺はすっぽんぽんですよ。玲さんがドアを蹴破ったら、俺の全てを見ることになりますんで、しっかり責任を取って、俺と結婚してくださいね」結城奏汰は再び、たちの悪さを十分に発揮し始めた。「お前な!」玲は奏汰が本気で真っ裸でいるとは信じていなかったが、それでも危険を冒すことはためらった。本気でドアを蹴破って、奏汰の丸裸を見る羽目になれば、さらにこの男から逃れられなくなる。「服なら置いておきましたんで、着るか着ないかは玲さんに任せますよ」奏汰はどう
奏汰はずっと前からこの計画をしていたが、実際に玲が罠にかかるかどうかは未知数だった。なんといっても玲は二十年以上に渡り男装をしてきた。すぐにその仮面を外し、女性という現実を受け入れるのは、頭の中で長い葛藤が必要だろう。奏汰は玲がここに来て一晩中彼が泳ぐ姿を見ていると思っていた。奏汰がいくら待っても、玲が中から現れなかった。「まさかやっぱりやめたのかな?」奏汰はぶつくさと言った。彼は立ち上がり、更衣室のほうを見に行こうとした。ちょうどこの時、更衣室のドアが開いた。玲は両手を胸にあてて、おどおどしながら出てきた。奏汰はそんな彼女の様子を見て、思わず、ぶはっと笑ってしまった。「中で寝てしまったかと思って、様子を見に行こうとしていたところですよ。やっと出てきたんですね」奏汰は笑いながら言った。「玲さん、あなたの自信は一体どこへ?そんなおどおどした様子で、堂々と背筋を伸ばさないで、亀みたいに全体的に縮こまっていますよ」玲はそんな彼の言葉を無視し、相変わらず胸元を隠していた。しかし、おどおど体を丸めて歩くのはやめた。玲は非常に慣れなかった。恐る恐るプールサイドに近づき、頭から水に飛び込んだ。その瞬間、胸に当てていた両手を外した。長い間泳いでいなかったし、頭から水に入ったので、彼女は思わず水を飲んでむせてしまった。奏汰はプールサイドに立ち、ニヤニヤ笑って尋ねた。「大丈夫ですか?」玲は彼を構うことはなかった。確かに長い間泳いでいなかったが、水に入ると本能的にプールを半周泳げた。それだけで疲れて、すぐにプールから上がり、プールサイドに座った。「準備運動をしないで水に入ると、足がつってしまいますよ」奏汰は彼女に注意するように言った。玲は少し黙ってから言った。「しばらく泳いでなかったので、ちょっと泳いだだけで疲れたんです」「これから泳ぎたくなったら、俺のところに来たらいいですよ。思いっきり自由に涼を満喫できますからね。実際プールに入ってみて、気持ち良いですか?」奏汰は彼女の隣に腰かけた。そして、顔を少し彼女のほうへ傾けて見た。すると玲はすぐに胸を手で隠した。その様子に奏汰は笑い、顔を上げ、胸を張って彼女をからかった。「俺は玲さんと張り合えるくらいですよ、なんで隠す必要があります?」
数十年が過ぎ、和子の姉の娘二人も今頃は結構な年齢になっているはずだ。もしかすると彼女たちは今も苦しい生活を送っているかもしれない。すでに孫もできて毎日孫の世話に奔走しているだろう。あの二人を見つけ出せても、和子にとって大きな脅威になることはない。和子は裏で姉の娘たちを探していた一族たちの行動をやめさせ、警告してからは、二人の姪が復讐に戻ってきて、当主の座を奪おうと争ってくることはないと思っていた。それに、一応彼女も数十年も、この当主という座に落ち着き、黛家の権力を握っている。本当に姪が現れたとしても、争うことなどできるはずもあるまい。もし、二人の姪に力があるようなら、昔人を使ってあの二人を捨てさせた時と同じように、今、永遠にその存在を消し去ってやるだけだ!もちろん、和子は姪二人がひどい目に遭っていることを期待していた。そうすれば、彼女たちに嘘でもついて、二人を助けるふりをして過去のことをあやふやにしてしまえるからだ。当時に関りのある全ての証拠は和子の手によって全て消滅してしまった。事情を知る人物も殺してしまっているから、証拠など残っていない。いくら柏浜人の多くが当時、黛家当主が姉と妹を殺害し、当主の座についたと噂しようとも、それはただ口で言うだけのことだ。数十年来、誰もこの黛和子を刑務所送りにできなかったではないか。当時の事は、夫の家族すらも知らない。その頃まだ和子は結婚していなかった。「若葉、白山社長がもし同性愛者なら、さっさと諦めて、他の男性を見つけなさい。柏浜には名家はたくさんあるの。名の知れた有名な財閥家の人でなければ、あなたが好きになった相手は私がどうにかしてあげるから」若葉は玲の姿を思った。柏浜には玲ほどのイケメンは存在しない。彼女が玲を慕うようになってからすでに何年も経っているので、諦めろと言われてもそう簡単にはできない。若葉はチャンスを見つけて、玲が女性に対して反応するか試してみようと決めた。もし、玲が女性に一切の反応を示さなければ、つまり本当に男のほうに興味があるということで、若葉も玲を好きな気持ちを諦めるしかない。いくら玲がイケメンだからといってその顔をただ毎日拝めるためだけに、名ばかりの夫婦になるわけにはいかない。それに、彼女がそれでもいいと望んでも、玲のほうが彼女を結婚相手に選ぶとは限らない。
若葉は自分の想い人が、結城奏汰のせいで趣向を変えて、男に興味を持つようになると思うと、発狂してしまいそうだった。「会長夫妻はどう考えているのかしら?まさか、結城家と親戚関係になるために?結城家がいくら勢力を誇る名家だとしても、ここから遠い星城での話だし、結城家が柏浜でビジネスをしているとしても、白山グループと比べられるかしら?白山会長も結城奏汰のご機嫌を取ろうとする必要なんてないでしょ。あのろくでもないクソ男め、本当に嫌われるタイプよ。柏浜の女の子たちで、彼に対して悔しい思いをしていない子なんていないわ。もし、殺人が犯罪にならないのであれば、彼は早い段階で何回も地獄に落ちているわよ」若葉はあまりに奏汰のことが憎すぎて、彼をぎたぎたに切り刻んでしまいたいほどだった。和子は暫くの間黙っていてから、口を開いた。「それは部外者の私たちでは説明できないわよ。白山社長自身がどう思うかでしょ。彼がもし、本気で結城社長のことを好きになるなら、いわゆる一般的な考え方を捨てて彼と一緒になる道を選ぶでしょうね。そうなれば、誰も白山社長を引き戻すことなんてできないわ。白山会長夫妻は子供に対しては昔から自由にさせてきたし、あのお二人は古い考えを持ってない。息子さんが何をしようと、夫婦はあまり干渉したりしないでしょう。それに白山玲さんも……もしかすると、もともと同性愛者だったのかもしれないし」和子は低く沈んだ声で言った。「彼のことを恋い慕う女性はたくさんいるし、どなたも素敵な女性ばかりよ。それなのに、彼は一人も気に入ることはなかった。以前は彼の理想が高すぎるのかと思っていたけど、今考えてみれば、もしかすると男のほうを好きだったのかもしれない。だから、女性からいくら口説かれても受け入れなかったのよ」それを聞いて、若葉は焦り始めた。「お母さん、だったら、私はどうすればいいの?私、彼のこと、とても好きなの。彼が同性愛者だとしたら、そんなの受け入れられないよ。彼が男のほうが好きなことなんてあるわけないでしょ?それもあの結城奏汰のせいだわ。お母さん、あの男をどうにかして柏浜から追い出せない?」和子は若葉の頭をつっついた。「結城社長が普通の人間だと思ってる?お母さんでさえ、彼に会う時には礼儀を欠いてはいけないくらいよ。表だけ見れば、彼の背後には結城グループがだけが支
黛家当主である和子の夫の名前は河野洋文(こうの ひろふみ)と言って、一族の中ではみんなから「河野さん」と呼ばれている。息子に限って、外では彼と同じく「河野」と名乗っていた。若い頃、彼が和子と結婚し、黛家の婿養子となると決めた日から、一生黛家当主の前では頭が上がらず、妻の尻の下に敷かれることになると覚悟を決めた。幸いなことに、和子は当時彼のことを心から愛していて、夫婦二人の仲が非常に良い。子供たちや使用人の前で、和子は夫の顔を立てて、父親としての威厳を保ってあげていた。それで彼も、子供たちの前では一家の大黒柱的な存在としていられた。凪は父親の話を聞いて、口角を上げて言った。「私は別に白山家から婿養子に来てもらおうなんて考えたことはないわ。それに、私だって白山会長をお訪ねしに来たとあちらにははっきり申し上げたの。だけど、ちょうど週末だから、白山社長もご実家に戻っていただけ。だから、お父さんも私が白山社長に執着するんじゃないかって心配しなくていいから。それよりも、あなたのその可愛い娘の心配をしたほうがいいよ、だって若葉のほうこそ狂ったように誰かに絡むタイプだからね」洋文は若葉のほうを見て言った。「若葉、お前と凪は違うから、堂々と安心して白山社長を追いかけていいんだぞ。父さんはお前のことを応援しているからな。白山社長みたいに優秀な男性を落とすことができれば、母さんはきっと大喜びするぞ」この時、和子も微笑んで言った。「若葉、言ったと思うけど、あなたは何も気にせず自由に本当の愛を求めていいんだからね」「白山社長と若葉なら、美男美女カップルだよ」長男の嫁の綾がそう絶賛した。黛家一家は全員若葉が白山家に嫁ぐことを期待していた。凪に関しては、ただ使い物にならない適当な男を婿養子として見つけるしかない。もし能力の高い男なら、普通は婿養子となるのを選ばない。だから、凪の結婚は絶対に若葉ほど幸せにはならないだろう。みんなから励まされて若葉は顔を赤くさせた。そして姿勢をぴしっと正し、自信たっぷりに瞳を輝かせて、凪をちらりと見た。しかし、凪は意味深な笑みを浮かべただけで、若葉をまた腹立たせた。なんだか、凪が何かを知っているような、そんなふうに感じてしまう。「お母さん、白山会長夫妻はとっても結城社長のことを気に入ってるみたい
九条家。理仁の専用車の列が到着したのは早めの時間だった。理仁と悟は親友で、上司と部下の関係でもある。さらに彼は悟と明凛の縁を結んだこともあり、理仁夫妻はもちろん早めに到着した。九条家と牧野家の全員がすでにこの場にいた。そして結城栄達夫妻が車を降りてくると、両家は率先して彼らを迎えにいき、悟と明凛は親たちの後に続いた。栄達と麗華の二人は明凛の両親とは面識がないので、悟の両親が紹介する形となった。握手をし、挨拶を終わらせると、明凛の母親である莉子が麗華のほうを見て微笑んで言った。「結城夫人は、息子さんとは姉弟のように見えますね。肌がとってもお綺麗だわ」唯花が車を降りて近
咲は、警察がこんなに早く、伯父が当時、彼女の父親を殺したという証拠を掴んだわけではないとわかっていた。伯父が勾留されたのは、母親の件に絡んで、彼も関係しているという証拠を理仁が持っていたからだ。弦が手に入れた証拠は、そのほとんどが表面上は加奈子に罪があるような内容だった。正一は妻を隠れ蓑として使うことができると考えていたが、弦がそれを逃すはずもなく、次々と新たな証拠を見つけ出したのだ。それで正一は自由を失ってしまった。加奈子の件は、星城で大きな話題となった。各メディアがこの事件を報道し、星城だけでなく、他の都市でもニュースを見る人は皆知っていた。だから、柴尾グループの社員たちも
唯月は息子の無事な姿と、妹も一緒にいるのを見たが、まだ口を開いてしゃべることができなかった。唇を動かして妹を安心させようと笑みを作ろうとしたが、目からこぼれ落ちる涙をどうしても止めることができなかった。彼女はまた選択をしたのだ。今は両親の元へ行くのを諦め、妹の傍に戻り、息子の世話をするという選択を。「先生、義姉さんの状態は?」理仁が医者に尋ねた。「患者さんが目を覚まされたので、危険な状態からは抜け出しました。もう重症患者さん用の病室にいる必要はありませんよ」この時、みんなはようやくホッと一安心することができた。唯月は普通の病室に移ることになった。理仁は義姉に一人用の
唯月は未だ弱っていて、すぐにまた眠ってしまった。陽でさえも唯花の懐の中で眠った。唯花は甥を病室にある簡易ベッドに寝かせ、薄いブランケットをかけてやった。そして姉の点滴剤がもうすぐなくなるのを見て、ベッドにあるナースコールを押し、看護師に換えに来てもらった。点滴剤を新しいものに換えてもらった後、唯花はまた数分間見つめていてから、振り返ってそっと音を立てないように離れていった。この時、理仁が部屋に入ってきた。するとソファの上で唯花がぼうっとしていた。彼は彼女に近づいてきて、唯花の隣に座り、肩に手を回して優しく尋ねた。「どうしたの?義姉さんは寝てしまった?」「お姉ちゃんも







