Mag-log in高校時代、幼馴染の海皇星桜生に容姿を侮辱されたトラウマをバネに、望月レナは自分を磨き上げ若手敏腕CEOとして成功を収める。だが美しく変貌した彼女の前に桜生が再び現れ、遅すぎた後悔と異常な独占欲で強引に迫ってくる。 さらに、最新技術(GPS)と財力で歪んだ愛を注ぐIT企業副社長・花川大成、身を挺して愚直に守ろうとするボディガードの山川眞。三人の男たちの執着が交錯する中、レナは経営者としての誇りを胸に戦う。 過去の傷と激しい愛憎劇の狭間で、彼女が最後に選ぶ真実のパートナーとは
view more全国放送の生放送。
私の姿は今、この瞬間日本中へ流れている。 高校時代の私を知る人がこの光景を見たら、きっと目を疑うだろう。 地味で、芋くさくて、取り柄のない女。笑われ続けた私が、今こうして全国放送のスタジオでスポットライトを浴びているのだから。 ……何より。「桜生、ごめん。少し疲れたかも。目の前がくらくらする」 私はそう言って、リビングルームを後にしようとした。 桜生の大きな手が私の手を掴む。 振り返り、桜生の目を見ると、 「レナ? 本当に、俺に隠し事はないか?」 悲しそうに見つめてくる桜生の目を見て、心がギュッと苦しくなった。 「信用してくれないのか? これまでの俺の行動や言動のせいか?」 「そんなことない。私は少し人間恐怖症なの」 「そう……か」 「だから、安全だと思っていた桜生の庭で追いかけられたことも、正直、不安で仕方ない」 私はそっと桜生の手を離す。 「今日は、もう寝たい」 そう言って、リビングルームを後にした。 自分の部屋に戻り、明かりも付けずにベッドへ横になる。 山川と直接顔を合わせて聞きたいのだけど、心が落ち着かない。 スマートフォンを取りだし、メッセージ欄を見る。 こんな気持ちもまま朝まで眠れる気がしない。 『山川さん。巡回してくれて、ありがとう。だけど、不法侵入した人がいたの』 文字を打ち込み送信をする。 スマートフォンの画面を一度閉じる。 右腕を自分の目の上に乗せた。 桜生のことを信じようとしているところに、山川が何かを企んでいるとしたら。 私は、桜生と結婚してはいけないと思う気持ちがさらに増した。一人の男性を選んだことによって、せっかくこれまでずっと私を支えてくれた山川と真紀子を失いたくない。 手放したくない。 誰を選んだらいいというわけでもないけれど、桜生との結婚を反対する人が大成さんに山川だとしたら……。 ずっと気になっていた二人の共通点。それは、私のことを大切に思ってくれていること。それが、私が鈍感なのか、大切に思うことの意味をはき違えていた。 恋、愛だったとしたら……。 ずっと、仕事のことしか考えてこなかった私にとってはいい迷惑でもある。だけど、逆の立場だったら、辛いと思う。 『侵入者ですか? レナ代表、お怪我はありませんか? 海皇星様はご一緒ですか?』 山川から返信が届いたけれど、違和感はない。 続けてメッセージが送られた。 『私の巡回が行き届いておりませんでした。もう少し人数を増やす必要がありそうですね! 明日、海皇星様とご一緒に提案いたしましょう』 山川が仕組んだわけではなさそう。 『そうね。明日の朝一番に、桜生と
二人同時に、玄関の中へ飛び込んだ。 やっとの思いで背中をドアにもたれさせる。呼吸は激しく乱れ、まともに会話すらできないと思った。それなのに、なぜかお腹を抱えて笑いたい。こんなにも必死に走ったのはいつぶりだろうか。それも、桜生と私の組合せなんてこれまでに一度もなかった。気分が高まり、楽しかったと思う気持ちが増す。これが青春といえるべき出来事ではないのかと思うほどだった。 笑いたいけれど、息が苦しく笑えない。 余計に苦しさが増す。 数分、二人の荒い息遣いは続いた。 「桜生、さっきの人たち誰だったと思う?」 やっとのことで絞り出した私の問いに、桜生は乱れた前髪を乱暴に手で拭いながら、険しい顔で首を横に振った。 「あんな訓練された動き、ただのチンピラや野次馬じゃない……間違いなく、俺たちを狙った組織的な連中だろうな。レナに送ってきたメッセージの件も含めて、偶然なんてあり得ないだろう」 桜生の分析に、私は本当のことを言えず俯いた。さっきまでの楽しさが一気に、奈落の底に落ちたようだ。 まさかだけど、山川が私をおびき寄せるために仕掛けた? それは違う。 大成さんに連絡できる人は、いないはず。 山川は大成さんのことをかなり警戒している。 それか、真紀子と土門さんなら連絡先を交換しているはずだからあり得る。 けど、真紀子は絶対にそんなことはしない。 じゃ誰なの? 玄関のチャイムが鳴った。 私と桜生は玄関のドア前で、互いの顔を向き合わせた。 「レナはリビングルームで待っていろ。俺が出る」 「うん」 「あ、俺が五分以上リビングルームへ向かわなかったら、俺の部屋の窓から本邸へ走れ」 「分かった」 私はリビングルームへ向かう。 玄関の様子が見えない、聞こえない。 余計に不安になる。 スマートフォンの時計をジッと見つめた。 五分以上って、こんなにも長かったかな。手が震える、足に力が入らない。 ソファに腰をかける。それでも、不安と恐怖は拭えない。 メッセージをタップする。 『黒川さん、今どこに居ますか?』 真紀子へメッセージを送信した。 二分、三分……既読にならない。 山川の情報だと本邸へ向かっているはず。だけど、既に本邸へ着いていてもおかしくない時間。 既読が着いた。文字を打ち込んでいるマークが表示されている。 『本邸の客室
桜生が私の部屋を去ってから、どのくらいの時間が経っただろう。 離れは本邸よりも静かで、ゆったりした時間が流れている。これまでに、これほど時計を確認しない時間はあっただろうか。私と桜生の歩み道は本当にこれでよかったのか。そんなことを繰り返し考えていた。 すると、私のスマートフォンのメッセージの通知音が鳴った。 スマートフォンを手に取ると、山川からだ。 『レナ代表。深夜に申し訳ございません。ただいま離れ周辺を黒川さんと巡回しておりますが、何やら本邸の敷地門辺りで騒ぎが起きたようです。今、黒川さんが本邸へ駆けつけています。連絡が入り次第、メッセージを送ります。レナ代表は、このまましばらく部屋から出ないようお願いします。僕はレナ代表の部屋の近くで待機します』 海皇星家はかなり広い土地を所有している。その屋敷の敷地門辺りで騒ぎがあった? 一体、何があったのか。黒崎グループが何か商談を考えて訪れることもありそうだけど、こんな遅い時間に? 失礼にも程ある。それに、桜生のお父様は現在、黒崎グループ関係との仕事を受けていないと言っていたはずだ。 数十分経過した。 スマートフォンのメッセージ通知音が鳴った。 『黒川さんから連絡が入りました! どうやら花川様が門にいるそうです「レナに会わせてくれ」と使用人や護衛の方に言っているそうです』 これはどうしたらいい。 私はこの屋敷に居ないことになっている。別の誰かに誘拐されていると伝えてある。だから、大成さんと顔を合わすわけにはいかない。 山川からメッセージが入った。 『レナ代表! とにかく部屋を出ないでください。今、黒川さんと状況を確認しています』 私は山川へ返信をする。 『山川さん。大成さんがここに居ることを、探知機とかそんな機械で分かったってことよね? そうしたら、いつまでもここでジッとしているわけにはいかないかもしれない。だから、門へ向かいます』 送信をタップして、私はスマートフォンを片手に部屋を飛び出した。 玄関に向かい、ドアの前で「行ってきます」と呟く。 小さな声でも反応する音声認識に驚きながらも、桜生と一緒に歩いた日本庭園を一人、走り抜ける。 唇を交わした周辺で足を止めた。一瞬でも、幸せだと思った場所。でも、今は桜生のことが分からない。立ち止まったからと言って
「桜生。今一度、しっかり現状を知ってほしいの。私と山川さんと黒川さんは、これまでずっと一緒に仕事をしてきた仲間。一から、いいえ、ゼロから一緒に積み上げてきたの。それは知っているよね?」 「詳しくは、あまり知らないが。三人がいつも一緒であることくらいは知っている」 「で、何が言いたいかというと。私は何度も誘拐や連れ去り未遂のような出来事が多かったの。今回、桜生やお父様やお母様のお陰で、色々見えてきたでしょう」 「そんなこと、俺にだって分かる」 「以前から防弾チョッキのようなものを身につけて対策するのもありじゃないかって、山川さんの提案があって、防弾チョッキをおしゃれ着のようにできると、ストーカーに悩まされている人やそうなる可能性のある女性たちには心強いよねってことで新規プロジェクトとして、手を組ませてもらったわけ」 「防弾チョッキを、おしゃれ着に? レナらしいな」 ようやく、桜生は理解してくれた。 私はホッとため息をついた。 ずっと、一緒に居たならここまで話をする必要もなかったのかもしれないけれど、一から十まで話さなければいけないと思うと気が遠くなりそうだ。 「桜生はどうして、私と山川さんに何かあると思ったわけ?」 私のことをずっと好きでいてくれたことは理解しているけれど、今の桜生を見ていると独占欲の塊にしか見えない。この先、愛していける自信なんてない。なくなる。 それは、私を縛り付けるだけの存在へと変わってしまいそうだから。 「俺とレナの新居に、男を、夜に入れてほしくないだけだ」 桜生の言葉はあまりにもストレートだった。 逆に言えば、私は桜生から信用されていないということにもなる。どうしたら、分かってもらえるのだろうか。本当に、私のことを好きなのかも疑わしい。ご両親から『レナちゃんを守ってあげて』とか『レナちゃんと桜生は結婚するようになる』とか、そう言われて勝手に好きだと思うようになったのではないか。 「桜生、本当の気持ちを教えて?」 「……」 桜生は何も言わなかった。 私の質問がおかしいのかもしれない。 「私のこと本当に、好きで愛していて、だから結婚したいと思ってくれているの?」 そう口にしてみたら、私は卑怯な女だと思った。 自分の口から、桜生のことが好きですとも愛しているとも言わないで、相手の気持ちだけを聞こうとしてい