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第825話
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交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第1100話
陽は恐らくこの「商売」というものが何なのかはわかっていないのだろう。しかし、母親がここにいて、叔母の唯花とその夫は例外であるだけで、それ以外の人は例外ではないのだということを知っているのだ。俊介はそれを聞いて言葉に詰まってしまった。そしてすぐにこう言った。「陽、俺はお前のパパなんだぞ。どうして東って人とパパを比べられるんだよ。あれはよそ者だ。あいつはな、良い人間じゃないんだ。めちゃくちゃ怖い奴なんだぞ」陽はそれを認めて頷き、幼い声で言った。「あずまおじたんはとっても怖いよ。だけどね、おじたんは、わるい人じゃないもん！」前回息子を唆して、ただ隼翔が唯月のところ来るのを息子を使って妨害させようと考えた時のことを思い出した。俊介はうまいことここでタダ飯を食べようと企んでいた話題を変えて、息子とこれ以上この話題で話したくなかったが、陽は頑なにその話題から離れようとしなかった。陽は東おじさんはとても怖いが、悪い人ではないと言った。父親である彼がいくらその考えを変えさせようとしても、一向に変えることができなかった。「わかったよ。金払えばいいんだろ、金をさ。唯月、離婚してから、お前って本当に金にがめつい女になったよな。ものすごいケチになってるぞ。何から何まで俺に金、金って。これでも俺らは昔は夫婦だったんだぞ」俊介は文句を垂れながら、息子を下におろして財布を取り出し、その中から五百円を取り出して唯月に渡し、言った。「その朝食セットをくれ」唯月は彼のお金を受け取り、五十円おつりを渡した。「まだ離婚してなかった頃、あなたは私と生活費は半分ずつ出せと言ったでしょ。何をするのもあなたは私にお金を払わせたじゃないの。今、あなたと私は一切の関係もないのよ、なのにどうしてこの店でタダでご飯が食べられると思えるわけ？」俊介はまた言葉を詰まらせた。女は本当に恨みをいつまでも覚えている生き物だ。あの生活費を夫婦で折半していた日々は、たったの一カ月か二か月ぐらいだった。離婚してから今に至るまでもう数カ月も経っているというのに、唯月はあの時の恨みを今でも心に留めている。「俺は陽の父親だぞ」「まんぷく亭は私の店であって、陽の店ではないわ。あなたは確かに陽の父親だけど、私の父親ではないわよ。その父親だとかいう肩書をどっかに置いてきなさいよ」俊介「……
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第1099話
陽はとても言うことを聞く子だ。それでもやはりまだ三歳にも満たない小さな子供だから、少しやんちゃな部分もある。俊介はあの日、陽を連れて近くの小さな公園に遊びに行った。陽はやんちゃでよく動き回る。あちこちを走り回って、うっかりすると遠くまで走っていってしまいそうになるのだ。それでしょっちゅう俊介は息子を見失ってしまうんじゃないかとヒヤヒヤしていた。俊介はあの一回陽を連れて遊びに行っただけで怖くなり、もう二度と息子を連れ出したくないと思っていた。それに、初めて外に陽を連れて行くのも単なる唯月のところに来るための口実に過ぎない。それで仕方なく息子を公園に連れて行かざるを得なかったのだった。陽は物分かりよく「そっか」とひとこと言うと、俊介に尋ねた。「パパ、仕事に行くの？」俊介は嘘をついた。「ああ、パパは仕事に行って稼がなくちゃいけないから」彼はまだ仕事が見つかっていない。この時、唯月が小さな店を開き、商売もなかなか順調そうなのを見て、俊介もピンと何かを閃いた。彼と莉奈が結婚式を挙げた後、彼女と一緒に店を開いて自分が店長になればいいんじゃないかと考えていたのだった。上司の顔色を窺う必要もなく、自由に働くことができる。ただ、彼が店を開いたら、理仁は引き続きそれを潰しにかかるだろうか？俊介が一番恐れているのは、理仁が俊介を許さないことだった。何をしても成功しないように何かと手出しをしてきそうだ。どうしても駄目なら、タクシーの運転手でもすれば、少し苦労をしてでも少しは稼ぐことができる。俊介は自分が人の夫であり息子であり、家族がいるのだから、彼が家を養っていかなければならないという重荷を担っていることを忘れていなかった。「そっか」陽は父親がお金を稼ぎに会社に行くことをすぐ受け入れた。母親が以前彼にずっと、父親は毎日働いてお金を稼がないといけないのだと言っていたからだ。それを聞きすぎて、陽は父親というものは毎日仕事に行くものなのだと理解していた。唯月は元夫がまた来たのを見ても、彼に構いたくなかったし、忙しすぎて構う暇すらなかった。俊介は息子を抱きながらやって来て、唯月に言った。「唯月、俺、まだ朝食食べてなくてさ、ここのおかずを適当に選んでよそってくれよ」唯月がそれに返事をする前に、清水が来て他のお客に頼まれた弁当を包み終
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第1098話
唯花と理仁は、もう結婚してからだいぶ経ってきて、お互い気持ちも深くなり、親しくなっているのに恥ずかしがってどうするのだ。少ししてから、唯花が部屋から出てきた。するとまたおばあさんが存在しないはずの老眼鏡をあちこち探しまわっている姿を見て、言った。「おばあちゃん、見つからないならもういいじゃない。後で新しいのを作りに行きましょ」「それもいいわ。じゃ、もう探すのは諦めましょ。年を取って記憶力が衰えてきたのよ。ここに絶対置いたのに、今見つからないんだもの。もしかして手足でも生えてどこかに行っちゃったのかしら」唯花は笑って言った。「きっと羽根が生えて、蝶々になって飛んでいったのよ」おばあさんは残念そうに言った。「蝶々に変身して飛んでいったのを見られなくて残念ね」唯花はおばあさんの言葉に笑っていた。「おばあちゃん、昨日は何時に帰ってきたの？」「あなた達よりも早く帰ってきてたのよ。昨夜は早めに寝たの。あなた達がいつ帰って来たのかこっちこそわからないわよ」唯花はその言葉をあまり信じられなかったが、それ以上は追及しなかった。三人は朝食を済ませると、おばあさんは、マンションの他のご老人とおしゃべりをすると言って出かけていった。理仁は唯花を店まで送っていった。唯花は途中で姉に電話をかけた。「お姉ちゃん、今日はお店のほうはどう？」「順調よ。忙しくて全く休憩できないくらい。清水さんが早くに手伝いに来てくれたからよかったわ。もし、毎日毎日こんなに忙しいんじゃ、誰かアルバイトでも雇わないといけないもの」清水は妹の家の家政婦なので、ずっと手を借りておくわけにはいかないだろう。唯月は初め、アルバイトを雇う気になれなかったのだ。店がオープンしてその売上がどうなるか未知数だったからだ。「絶対ずっとその順調なのが続くわよ」唯花は姉が弁当屋を開くと決めた時、その店は絶対に人気になると思っていたのだ。「唯花、お姉ちゃん今忙しいから、後で暇になってからまた話しましょ」唯月は忙しすぎて猫の手でも借りたいくらいなのだ。妹と電話をする時間もない。「じゃ、お姉ちゃん頑張ってね。昼過ぎに陽ちゃんを連れてご飯食べにおいでよ。あなた達が好きなものを買っておくから」唯月はそれに快く返事した。彼女は妹のところに行く用事があった。あの内海家から実家を取り戻す
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第1097話
唯花は自分が風呂に入っている間に、夫がすでに全て手配し終わっているとは知らなかった。彼女がバスルームから出てくると、理仁がベッドに腰かけていて、彼の傍に近づいていき、自然な流れで理仁の首に手を回し、そのまま彼をベッドの上に彼女が上に覆う形で押し倒した。「唯花、これじゃ、ちょっときついよ」理仁は低くかすれた声で愛する妻に注意した。唯花は微笑み、彼の顔にキスの雨を降らせ、彼の体から離れて、ベッドの上に寝転がり、彼を足でツンツンと突っついた。「お風呂に行ってらっしゃい。タバコの匂いがするわよ」「吸ってないよ」「周りが吸ってたのよ。その匂いがあなたの服についちゃってるの」理仁は自分で服の匂いを嗅いでみたが、タバコの匂いはしなかった。しかし、妻が彼からタバコ臭がすると言ったので、彼はただ大人しく妻の言うことを聞いて風呂に行くしかなかった。新しい服に着替えるのだ。彼が風呂を終わらせて出てきた時には、唯花はすでに夢の中だった。理仁は彼女の静かに眠る顔を見つめた。たまに彼女のことをとても羨ましく思うのだ。何が起こっても、食事と休息のこの二つに関しては、普段と変わらずに行える。如何なることも、彼女が大好きな食べることと、寝ることに影響を与えることはできないのだった。このような人は、すぐに悩みから解き放たれて、寛容に人を包み込むことができ、あまりそのことにうだうだと囚われることはないのだ。一つの事にこだわり続けることはない。ひとことで言い表せば、楽観視できる人間だ。この世が終わりを迎えようとも、布団を被ってすやすやと眠る。理仁は身を屈めて、唯花の頬にキスをして優しい声で言った。「唯花、良い夢を見てね。夢でも俺に会ってくれよ」唯花は一度寝ると朝になるまで眠り続け、どのような夢も見なかった。それだから、夢で理仁に会うことなどなかった。彼女が目を覚ました時、理仁はキッチンで朝食の準備をしていた。おばあさんは家にいないと思っていて、唯花はナイトウェアのまま部屋から出て、良い匂いに誘われてキッチンに入っていった。そして背中から理仁を抱きしめて、頭を彼の背中にピタリと当て、甘えた声を出した。「理仁」このように甘えた口調で呼ばれて、理仁は骨までふにゃふにゃになってしまいそうだった。理仁は後ろを振り返り、彼女を抱きしめて朝のおはよ
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第1096話
悟は笑って言った。「理仁、君はもう俺が知っている理仁じゃなくなったな。こんな話を安永社長に言えるとはね」「うちの唯花さんが、家に帰る途中で、不良どもに車を壊されたんだ」悟はそれを聞いてわくわくしてきたようだ。「怖いもの知らずな奴だな。君の奥様の車を襲うなんて死ぬのが怖くないのか？病院送りになったか？」理仁はその瞬間、泣けばいいのか笑えばいいのか、どんな感情になればいいのかわからなかった。「今から調査させるよ」「必要ない。誰の仕業かはわかっている」「誰だ？」悟は好奇心旺盛に尋ねた。ここで噂好きの血が騒ぎ出し、彼の豊富な想像力を発揮し始めた。「君の追っかけしてる女の子かい？」理仁「勝手な事言うな！そんなわけないだろう！」彼は怒った様子で言った。「柴尾鈴という女だ」悟は即座にどの柴尾家なのか理解し言った。「柴尾鈴って言えば、奥さんと一悶着あった人だろう。またやってしまったって？それはまずいだろう。柴尾社長自ら君に謝罪に来てからまだ数日しか経ってないじゃないか。あの社長の愛娘がまた君たち夫婦を怒らせたのか。で、捕まえたか？」「警察に通報した。証拠があるから、すぐに犯人を捕まえることができたんだ。悟、俺がこれを話したのは、ちょっと頼みがあるからなんだ。数人雇って、こっそり柴尾社長夫婦の一挙一動を観察させてくれないか。それに唯花さんのクズ親戚どももな」悟はそれを聞いただけで全て理解した。「つまり、柴尾社長がこそこそ報復してこないか心配なわけだね？」「用心するに越したことないからな。柴尾鈴はあの夫婦の溺愛している娘だ。甘やかされて育てられたもんだから、今彼女が警察に捕まり、柴尾社長夫妻が報復行動に出る可能性は高い。動きを観察しておけば、ある程度避けられることは多くなるだろう」悟も親友のその話には一理あると思い、快く引き受けた。「わかった。帰ったら、その二つの家の行動を監視する手配をしとくよ」「頭の冴えた人を雇ってくれ。柴尾家のあの夫婦は決していい人間ではないからな」理仁と唯花二人は柴尾咲の父親の件を分析し、陰謀により亡くなった可能性を感じていた。柴尾社長は実の弟が死んだ後、彼の妻と結婚した。彼は周りに、弟に代わってその妻と娘の面倒を見るためだと言っていたが、それを周りが本気にするとでも思っているのだろうか？柴尾社
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第1095話
「唯花さん、そんなに負担に感じないで、ただ念のためにそうするだけだから。それに、俺たちのような家柄の人間はみんな出かける時にはボディガードを連れているんだ。ボディガードがいない名家の方が逆におかしいだろう？」唯花はかなり自分を責めた様子で言った。「柴尾家が私に対する報復のために、お姉ちゃんと陽ちゃんを巻き込まないか心配だわ」しかしそれでも、咲を助けたことを後悔していなかった。柴尾鈴は本当に行き過ぎた行為をしたのだから。「そんなことにはならないから、安心して。俺がいるんだから。それに義姉さんは隼翔の店舗を借りているだろう。隼翔は貸主としてかなり強い責任感を持っているよ。借主が何か問題に巻き込まれるようなことは絶対にあいつがさせないから。あの通りにずらりと並んだあいつの持ちテナントは、今まで何かトラブルに巻き込まれたことはないよ」それに、隼翔は昔危険なグループに混ざっていたことがある。彼が足を洗ってまっとうな道に戻ってきてからも、知り合いはたくさんいる。だから、彼の縄張りで何か騒ぎを起こそうと思いつくような輩はいないのだ。隼翔があそこまで陽のことを気に入っているのに、陽に手でも出して、あの恐ろしい隼翔の逆鱗に触れる度胸のある者などいるだろうか？「唯花さんと君の大切な人に手を出してこようとするのは、柴尾家のあの母娘以外に、内海家のあのクズな親戚ぐらいだろう。俺が悟に頼んで、あの二つの家を見張る手配をしてもらうよ。何かおかしな動きがあれば、すぐに俺らに伝えてもらおう。そうすれば早めに対策が取れるしね」理仁は言い終わると、愛妻に尋ねた。「もし、時間が巻き戻っても、やっぱり柴尾咲さんを助けてあげると思う？」唯花は考えるまでもなくすぐこう言った。「もちろんよ。あの夜、私と姫華が助けに入っていなければ、彼女は死んでいたかもしれないわ」彼女はただ、まさか柴尾鈴がどんなことにも手を染めるような人だとは思ってもいなかった。理仁はそれを聞いて笑った。彼の妻は正義感の強いタイプの人なのだ。「それなら、自分を責めることはないよ。君がしたことは誰だって尊敬するさ。心の狭い人間はいつも誰かを憎んでいるもんだ。この世に生きている限り、誰からも好かれることなんてないんだし。いつかは必ずその心の狭い人間に出くわしてしまう。だから用心するに越したことはな
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