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第2話

Author: ソフトクリーム
「なんだかお二人、そろそろ結婚するんじゃないかって気がするんですけど」

スタッフたちの囃し立てる声に、俺の思考は一瞬止まった。明音は州平と付き合っている。それも、もう3年になるらしい。

だとしたら、さっきスタッフが話していた「命の恩人」も州平だということなのか。彼女に腎臓を提供したのは、この俺なのに。

必死に状況を整理していると、州平が言いにくそうに口を開いた。

「そういえば明音、兄さんから、ずっと連絡はないの?」

俺は目を見開いた。俺が癌に侵されていることを知っていたのは州平だけだ。

偶然検査結果を見られてしまった俺は、誰にも心配をかけたくなくて、手術が終わるまで黙っていてくれと彼に頼み込んでいた。

それなのに、今の州平の言い草は、明らかに俺がどこかで生きているかのような口ぶりだ。

明音は不快そうに眉をひそめた。

「どうして今さら、恒介の話なんかするの?」

州平は無理に笑ってみせる。

「ただ、少し心配になって。ひとりで海外にいたら、何か嫌な目に遭っているかもしれないし。君が倒れる前は、兄さんも君のことを大切にしていたからね」

「あんな人が私を大切にするわけないでしょう?」

明音は突如として激怒し、まるで生ゴミでも見るような目つきで、俺への嫌悪感を露わにした。

俺は眉を寄せた。昔、真夜中に明音が高熱を出したのに、タクシーがまったく捕まらなかったことがあった。俺は彼女を背負い、息も絶え絶えになりながら病院まで走った。

あのとき明音は、「私を一番大切にしてくれるのは恒介だけ。これからもずっと恒介だけを愛する」と言ってくれた。

それが今は、俺を道端のゴミのように扱っている。

明音は深く息を吐き、怒りを押し殺すように続けた。

「あなたは人が良すぎるのよ。昔、恒介がどんな酷いことしたか忘れたの?

病気の私を厄介者扱いして捨てたばかりか、あなたのお金を騙し取って海外に逃げたじゃないの!」

俺は強く拳を握りしめた。この瞬間、ようやく確信した――州平は俺の死を隠しただけではない。俺が腎臓を提供した手柄を奪い、あろうことか俺を悪者に仕立て上げたのだ。

俺がどれほど失望の眼差しを向けても、彼女は州平の嘘を微塵も疑わなかった。

州平は俺をかばうふりをして、ひらひらと手を振った。

「兄さんにも、きっと何か事情が……」

明音はそれをすぐに遮った。

「もうあの人の話はやめて。これから食事に行くのに、気分が悪くなるわ。少し待っていて。すぐに片づけるから」

明音はスタッフたちへ向き直り、仕事の顔に戻った。

「今日の担当は誰ですか?この資料のご遺族へ電話してください。必ず連絡をつけて、あの薄情な婚約者に遺骨を引き取らせてください」

そう言いながら、彼女は手元の資料をめくった。

「ええと、名前は……鳴海、こう……恒介?」

明音の手がピタリと止まり、その目に信じられないものを見るような色が浮かんだ。

彼女は資料の文字を何度も見返した。そこに書かれているのは、間違いなく俺の情報だった。

資料を見つめる明音の顔から、スッと表情が消えていく。俺は、もしかしたら彼女が俺の死を悲しみ、州平の嘘に気づくのではないかと、わずかに期待した。

引き取り手のない遺骨を斎場が保管できるのは、最長でも3年だ。俺が海外へ逃げたのではなく、3年前に死んだという何よりの証拠になるからだ。

州平は明音の異変に気づき、作業室の奥へ歩み寄った。

「明音、どうした?」

明音は顔を上げて彼を見つめ、かすれた声でつぶやいた。

「恒介が死んだの……」

州平の目に動揺の色が走ったが、すぐに悲しみの表情でそれを覆い隠し、わざと驚いたふうを装って言った。

「何だと?あのとき、僕は空港まで兄さんを追いかけたのに。まさか、この3年のあいだに帰国していたっていうのか?」

明音は鼻で笑い、すべてを見抜いたような顔をした。

「どうせ海外でうまくいかなくて、こっそり戻ってきたのよ。その結果、天罰が下って死んだのね。

この資料にある情報は、生前に本人が書いたものよ。見て、州平。あいつ、あなたが私に腎臓を提供したことを知ってて、わざと嘘を書いてあなたの手柄を横取りしようとしたのよ」

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