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第86話

Author: 星柚子
奈穂は頷いた。

正修が電話に出ると、電話の向こうの誰かが何かを言ったのだろう、彼の顔色はたちまち変わった。

「その情報は確かか?分かった。すぐ戻る」

彼の真剣な表情を見て、奈穂の心も幾分か重くなった。

正修が電話を切るのを待って、彼女は慌てて尋ねた。

「何かあったんですか?」

正修は彼女を見つめ、できるだけ自分の眉間の皺を和らげようとした。

「大したことない。もう遅い。水戸さんも早く休んで。おやすみ」

そう言って、奈穂が再び口を開く間もなく、正修は急いで車に乗り込み、去っていった。

奈穂は、何か手伝えることはないかと尋ねたかった。

彼には多くの恩義があり、いつか返さなければならないからだ。

まさか正修がこんなに慌てて去るとは思わなかった。

でも逆に考えれば、これは何かが起きていることを示唆していた。

奈穂の心は沈んだ。

家に帰ると、ちょうどリビングで恭子に会った。

「お祖母ちゃん、まだ起きていたの?」奈穂は慌てて尋ねた。

「眠れなくてね、ちょっと散歩してたの」恭子は言った。

「さっき出かけてたの?」

「うん、少し……九条社長と話してたの」

「九条社長?正修のこと?」恭子はにこやかに言った。

「まったく、本当に元気なこと……」

「お祖母ちゃん、違うって……」

恭子は奈穂の手を握り、優しく微笑んだ。

「奈穂が幸せなら、それでいいんだよ」

奈穂は胸が熱くなり、恭子の手を力強く握り返した。

「お祖母ちゃん、私、ここに帰って来られて本当によかった」

「ここはいつでも奈穂の家よ。どこへ行こうとも、いつでも帰ってきていいの」

恭子は愛情を込めて彼女の頭をなでた。

「うん、分かってる」奈穂は目を赤くして微笑んだ。

二人が少し話をした後、奈穂は突然何かを思い出したように尋ねた。

「ところでお祖母ちゃん、伊集院水紀っていう人知ってる?」

「伊集院水紀?」恭子は考えた。

「どこかで聞いたことがあるような……でも、すぐには思い出せないね……」

奈穂は心の中で納得した。やはり、水紀は嘘をついていたのだ。

「彼女は水戸家とは親密な関係で、海外にいた時に水戸家の人たちと知り合って、おばあ様にも気に入られたって言ってたよ」

これは、北斗が以前彼女に話した言葉だ。

明らかに、水紀が彼にそう伝えたのだろう。

しかし今、「水戸家の
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