好きじゃないです、と言ったら王命で結婚させられました~恋を知らない魔術師は執着騎士に囚われる~

好きじゃないです、と言ったら王命で結婚させられました~恋を知らない魔術師は執着騎士に囚われる~

last updateLast Updated : 2026-08-04
By:  美木 猫助Ongoing
Language: Japanese
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「あなたのこと、好きじゃないです」 ――そう言われたのに、なぜか王命で結婚させられた。 相手は恋を知らない魔術師ミラ。 無表情・無自覚・研究最優先。好意も執着もまったく通じない。 挨拶は通り過ぎられ、 誘えば別の女をあてがわれ、 贈り物は研究対象として処理される。 なのに。 彼女は時折、何でもない顔で笑う。 ――その一瞬のために、すべてがどうでもよくなった。 恋を知らない妻と、執着をやめられない夫。 これは「好きじゃない」から始まる、すれ違いだらけの溺愛(未成立)ラブストーリー。

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Chapter 1

※ ※ ※

騎士団の中庭に、静寂が落ちた。

昼下がりの訓練時間だった。

本来なら剣の打ち合う音や、騎士たちの怒号が響いているはずなのに、ヴィクトルには何も聞こえなかった。

人が、大勢いた。

よりによって、こんな場所で言ってしまったと、告げた後になってようやく気付く。

けれど、もう遅かった。

「俺は、ミラが好きだ」

王弟であり、騎士団副団長でもあるヴィクトル・ルーカス・エルンストが、たった一人の女へ向けて告げた言葉は、あまりにも真っ直ぐで、飾り気がなかった。

本当は、告白をする予定ではなかった。

彼は彼なりに、告白をするタイミングを見計らっていたがそれは今ではなかった。「ではいつだ?」と訊かれてしまえば、返答には詰まるが、人が大勢いる今ではなかったはずだ。

ただ、普段は表情が控えめなミラから笑顔を向けられたことで、気付けば彼女への想いを吐露していた。

目の前のミラは、黒い瞳でヴィクトルを見上げた。

首を傾げ、眼鏡がずれる。

彼女はそれを気にすることなく、ゆっくりと瞬きを繰り返した。

そして彼女もまた、真っ直ぐに答えた。

丸眼鏡の奥の瞳には、迷いがなかった。

悪意もない。

嘲笑もない。

ただ――

「あなたのこと、好きじゃないです」

正直だった。

――ああ。

ヴィクトルは理解した。

これは、断られたのだと。

騎士団副団長ヴィクトル・ルーカス・エルンスト、三十二歳。

生まれて初めて女に告白し、そして、人生で初めて振られた瞬間だった。

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