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第978話

Author: 星柚子
真理子は微笑みながら言った。「拉致されたときは確かに怖かったわ。でも、もう全部終わったことだし、あなたもこうして元気で私のそばにいてくれるでしょう?だから私は大丈夫。あなたは、お母さんのことをそんなに弱い人間だと思っているの?」

「そんなことない!」君江は勢いよく首を横に振った。「お母さんは誰よりも強い人だもの」

母娘が穏やかに話していると、一人の介護士が君江のそばに歩み寄り、耳元で小声で何かを告げた。

その瞬間、君江の表情がわずかに変わり、目には露骨な嫌悪が浮かんだ。

「どうしたの?」真理子は心配そうに尋ねる。「何かあったの?」

「何でもないわ」君江は立ち上がった。「お母さん、ちょっと外してくるね。ゆっくり休んでて。本当に大したことじゃないから、心配しないで」

介護士に母のことを頼んでから、君江は病室を出た。

そして廊下に出るなり、そこに立っている進の姿が目に入る。

「君江」進は愛想笑いを浮かべながら近づいてきた。

君江はすぐに病室のドアを閉める。

「何をしに来たの?」その顔も声も、氷のように冷たかった。

「もちろん、お母さんのお見舞いだよ」進はもっともらしい顔
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