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第318話
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元カレのことを絶対に許さない雨宮さん 第320話
「警備員はまだ来てないの？！早くあの人たちを止めてくれ——」混乱の中、理子はやけくそになって、声を張り上げて叫んだ——「入江美琴はどこ？入江美琴って誰よ！入江美琴を探してるの、出てこいこのクソ女！」理子と息子の時見峯人（ときみ みねと）は二日前に帝都に到着し、まず入院中の晴香を見舞いにいった。そして……そのまま病室に居座ったのだ。「ホテルなんて泊まる必要ある？ホテル代高いじゃない！この病室が広くて明るいし、何よりタダなのよ！」「でもベッドが一つしかないのに、あなたと峯人は……」「何が問題ある？親子なんだから気にしないよ？」峯人は昼食を終えたばかりで、爪楊枝を使いながら頷いた。「そうだよ！家でもよく母さんと一緒に寝てたし、エアコンは一台しかつけなくて済むから、節約できたぞ」説得が実らず、理子と峯人は病室に居座ることになった。病院のルールでは、VIP病室には付添い用ベッドが設置されていて、家族の宿泊は認められていたため、特に何も言わなかった。とにかく費用は口座から引き落とされていた。晴香がどれだけ長く入院しても構わないのだから、ましてや付添い用のベッド一つ増えるだけは何の問題もない。理子が二日間滞在するうちに、消毒液の匂いにも慣れたが、それでも男の家族は一人も見舞いに来なかった。お手伝いさんでさえ来なかった。「ふん、会わずにいれば済むと思ってるの？甘いわ！」「母さん、どうするつもり？」峯人は腕まくりをして、やる気満々だった。「彼らが会いに来なければ、こっちから会いに行けばいいじゃない！」というわけで、朝になって、晴香がSNSで美琴が外出して集まりの写真を投稿しているのを見つけ、背景が以前美琴に連れて行かれたホテルの個室だと気づいた。すぐにホテルの住所を理子に伝えた。親子二人は一秒も無駄にせず、すぐに向かった。美琴は遠くから騒ぎを見ていたが、急に自分の名前を呼ばれて、耳を疑った。しかしその女が二度叫んだ時、確かに自分の名前だと分かっていた。美琴は胸騒ぎを覚えた。フロントがその女を抑えきれないのを見て、美琴は思わず背を向けて、個室に戻ろうとした。その時、給仕がトレイを持ってやってきて、彼女が去ろうとするのを見て、遠くから叫んだ——「入江さま！お水をお持ちしましたが、入江さ
元カレのことを絶対に許さない雨宮さん 第319話
あの内藤とかいうやつより、自分の方がずっと人脈が広いぞ。彼のその自信満々で「俺が一番」を言ってるような態度を見て、すみれは数秒間不審な目を向けた。「本気で私と協力するって言うの？」「もちろん。その目は何だよ？なめてるのか？」すみれは彼を上から下まで、下から上までじっくり眺めた。桐生家は言うまでもなく、帝都八大名家の一つで、内藤家よりずっと上だ。さらに桐生広輝という男は、女に平手打ちされても手を返さなかった。性格が安定していて、紳士的だと言える。遊び人でスキャンダルも多いけど、別に本当に付き合って結婚するわけじゃないから。それに…すみれだって遊び人なんだから！ちょうどいいじゃないか！お互いを干渉しなくて済む！クラブで会ったら、一緒に遊べるかも。何より、この男は別れる時はさっぱり別れる。クズではあるけど、ある意味で割り切れる性格の証拠だ。将来別れる時も、未練がましいことにならず、きれいにお別れを告げられるじゃない。すみれは見れば見るほど彼がふさわしく思え、考えれば考えるほど気に入った。「いいわ、中で話しようか？」広輝は鼻で笑った。「話すなら話すさ、誰が怖いもんか？」すみれは満足そうに笑った。「ぼーっとしてどうするの？行くわよ」すみれはさりげなく彼のネクタイを引っ張った。「げほっ！」広輝はそれで前のめりによろけた。この女、いきなり触ってきてどういうつもり？ちっとも優しくないじゃん。……孫がいなくなって、美琴は二日間落ち込んだ。でも、二日だけだった。あの卑しい女、晴香の面倒を見なくていいどころか、これから二度と会わなくて済むと思うと、美琴は心底嬉しかった。彼女は以前のように、パーティーに出席したり、麻雀をしたりする優雅な生活に戻れる。ある日、奥様方の集まりがあり、お茶会に誘われた。最高級のハーブティーと、繊細で美味しいお菓子。美琴はCブランドの最新作を着て、柔らかく快適なソファに座り、音楽を楽しみながら、他の奥様方とおしゃべりしていた。「しばらくお会いしていなかったが、入江さんどうもお顔色がよくないようだね？お疲れの様子だが、ご家族に何かあったのかしら？」そう話したのは山下家の奥さんで、上場企業を経営する家柄で、投資界ではちょっとした有名人だった。丸みのあ
元カレのことを絶対に許さない雨宮さん 第318話
女性はそう言って、ハイヒールを鳴らして踵を返した。広輝はただ軽く笑い、彼女の言葉を信じないように嗤った。恋の苦しみだと？ふん——冗談じゃないぜ！女性が立ち去ってからすぐに、バーからプリーツスカートを穿いた若い女の子が出てきた。白くて長い脚を露わにし、ウエーブのかかった髪を下ろし、きれいなメイクをして、まるでリアルなフィギュアのようだった。「桐生さ……」彼女は自ら近寄ってきた。男が拒まないだろうと思ったが、次の瞬間、広輝は身をかわした。長い腕を伸ばし、すみれの腰を抱き寄せた。面白おかしく眺めていたすみれは驚いた。広輝は少女を見上げて言った。「悪いけど、遅かったね」少女は唇を噛み、すみれを恨めしげに見つめてから、しぶしぶと立ち去った。「私を盾にしたの？」すみれは腕組みしながら冷笑した。「その汚い手を放して？！」広輝は元々離すつもりだったが、そう言われると逆に思わなくなった。「離さないなら、どうする？」すみれは呆れ笑いをした。「私に八つ当たりするの？いいわ」広輝はまだ彼女の笑みの意味を理解できなかったが、次の瞬間、逆に腕を捻られた。「なに！いたたた——」たちまち、悲鳴が上がった。「まだ言うつもり？」「言わない、もう言わない！悪かったよ！早く放せ、腕が折れる！」すみれは白い目を向けた。「使えない男だ……」そう言って力を抜いたが、すみれはその手を放さず、逆に自分の腰に戻した。広輝の困惑した視線を受けながら、すみれは淡々と言った。「これで手を離せる？よろしくね」男は呆れて笑い出した。笑いは作り物、呆れたのは本当だ。まさかこいつはまた彼の手を元の位置に戻して、それから離させるだと？どこでいじめられたか、そこから仕返しするのか。まるで……親が子供に「転んだところから立ち上がれ」と要求するようだった。そして広輝は子供で……すみれは親という意味だ！くそ！これは侮辱だ！明らかな侮辱だ！その時、バーから怒りに満ちた人が現れ、遠くからでも彼の怒りが伝わってきた——「庄司すみれ！頭イカれてんのか？！8時に会うって約束したのに、今何時だと思ってる？どれだけ遅刻したかわかる？！お互い時間が貴重なんだから、お前だけが忙しいわけじゃない」「途中で何かあったのか、急
元カレのことを絶対に許さない雨宮さん 第317話
凛は人生初めて憧れのような感情を抱いた。彼女はまだ知らなかった。この複雑な感情は——強者への憧れだ。……一方、すみれは二人を送ったあと、すぐにバーへ向かって車を走らせた。道中は平穏だったが、バーの入り口に着き、駐車しようとした時——ドン！斜め後ろからマセラティが飛び出し、ちょうど彼女の車の後部にぶつかった。すみれは怒った。ドアをバタンと閉めると、相手の車まで駆け寄って怒鳴った。「あんた運転できるの？！まさかアクセル踏みっぱなしなの？！こんな道でそんなスピード出して、それだけならまだしも、ちゃんと前見てないの？私の車、まだ半分以上駐車スペースに入ってないのに、見えてないの？こんなところでぶつかるのってあり得ないわ？！」マセラティの運転席のドアが内側から開き、男が笑いながら降りてきた。「おっ、誰かと思ったぜ。大したことないさ、そんなに怒るなよ」広輝はニヤニヤ笑いながら、すみれの前に歩み寄った。「あら、桐——生——坊——ちゃん——じゃないか」彼女はわざと声を引き延ばし、皮肉に言った。広輝はフェラーリの後部を軽くチェックした。うーん、確かに結構ひどい傷だった。しかし口では同じような言い方をした。「大したことじゃないぞ。さっきちょっとスピード出しすぎて、それに注意してなかったから、お前とちょっとした親密な接触をしちゃったわけさ」「誰があなたと親密な接触をしたの？」すみれは白い目を向けた。「はっきり言いなさい」「ゴホン！『俺たちの車が親密な接触をした』ってことでいい？」すみれは口を尖らせた。「俺が全部の責任を取ればいいだろう。保険会社に連絡してお前の車を修理に出させる」「『全部の責任を取ればいい』ってどういう意味？最初から責任はすべてあなたにあるのよ！保険会社に連絡してもらうのは当然でしょう！これからしばらく車に乗れなくなるなんだから……」「庄司のお嬢様に車がないなんてことがあるか？冗談だろう？」すみれは彼と無駄口を叩く気もなく、車のキーを投げつけた。「用事があるから、車のことは任せたわ」そう言って、バーに入ろうとした。その時、一人の女性が急に駆け寄り、広輝の顔に平手打ちを食らわせた。パシッと——はっきりした！よく響く音だった！すみれは呆れ気味で、ここまでやるの？と思った
元カレのことを絶対に許さない雨宮さん 第316話
三人はレストランを出た。「兄さんは本当に人気者ね。おじさんたちに囲まれて、まるでアイドルを追いかけるファンみたい」「アイドルって？」「あ、偶像よ」陽一は苦笑した。「あれらはただ利益に駆けられているからだ。偶像なんかじゃない」すみれが鼻をひくひくした。「お酒飲んだの？車できた？」「少しだけ飲んだ。車じゃないけど」「ちょうどいいわ、乗って。兄さんと凛を送っていく」すみれの車は路地の入り口まで運転して、それ以上は進めなかった。凛と陽一は路地の入り口で降り、並んで中へ歩いていった。月が明るくて星がまばらで、夜風は心地よい。静かな路地から、時折かすかな猫の鳴き声が聞こえた。陽一はゴミ袋を踏み、酒のせいもあって、ふらついた。「大丈夫ですか？」「すまない、今夜は少し飲み過ぎたようだ」陽一は酒の匂いが彼女に移らないよう、わざと距離を取った。「すまない」という言葉は、彼の口から出ると特に誠実に聞こえた。凛はぼうっとした。以前、海斗もよく酒を飲み、酔っ払うことも多かったが、彼は彼女に対して申し訳ないとは思わなかった。やはり、人はそれぞれ違うようだ。以前は、男はみんな海斗や悟、広輝のような者だと思っていた。享楽に溺れ、仕事をしながら楽しみ、人生を遊び尽くす。あるいは慎吾のように、のんびりと穏やかで、堅実な一般人。陽一に出会うまでは、そう思っていたが――彼は多くの人に慕われ、高嶺の花のように見えたが、ずっと驕らず、控えめで落ち着いていた。優れていることと気ままにすること、成功と傲慢には関連性がないのだと初めて知った。彼には放浪する資格があるのに、誰よりも自分に厳しくて自制心がある。凛は疑問に思った。「研究界でも接待が必要なの？」「人間関係で動く社会に生きていて、ギブアンドテイクを重んじる。しかし、どのようにすればいいか？酒はその媒介になる。もちろんお茶、書道、絵画、詩なども同じく媒介になれる」「このような付き合いを『接待』と定義するなら、どの業界でも避けられない。ただ頻度の違いだ」「正月や祝日には、いくら小さな子供でも実家の親戚に訪れさせられる。親戚も君の家に訪れる。これもある意味では接待じゃないか？」「でも、このようなことを普通の付き合いと定義すれば、必ずしも酒飲みでな
元カレのことを絶対に許さない雨宮さん 第315話
酔った時の話を振られ、すみれは少し気まずそうに鼻を触った。「全部母のせいだよ。青年パーティーなんかに参加させて、明らかにお見合いパーティーだったじゃない」若い男女はまるで、まな板の上で選ばれる商品のようだった。真白はどこも悪くない良い人が、心配性すぎるのが問題なんだ。「家柄が釣り合わないと幸せになれない」だの「経験から言うと、結局結婚は経済力が重要」だのと説教されて……すみれはうんざりしていた。前回実家に帰った時、真っ白とちゃんと約束した。家柄が釣り合わないといけないのは構わないが、相手は自分で選ぶのだ。条件として、真白はこれ以上勝手にお見合いパーティーや集まりを手配しないこと。「自分で選ぶ？」「そうよ、とにかく家柄さえ悪くなければ、母は受け入れてくれるわ。なら簡単よ、同じ社交界から選べばいいじゃない！」「まさか本当に選ぶつもりなの？」凛は目を瞬かせた。すみれが好みなのは「年下の犬系男子」だ。社交界の男たち……確かに年下は多いが、彼女に従順で、おだてて、お姫様のように可愛がってくれる人は……見つかる可能性はほぼない。裕福な家庭に育てば、一般人より多少傲慢さを持ってる。みんなお金持ちなんだから、なんで男は自分の矜恃を捨てて彼女をあやす必要があるの？すみれは軽く咳払いして声を落とした。「選ばなきゃダメだよ、選ばないと母に説明がつかないわ。でも恋人を選ぶではな、協力者を選ぶの」「協力者？」「そう。社交界には結婚を迫られている男女がたくさんいるの。みんな家の言いなりになりたくないんだから、協力し合えばいいのよ」「どんな協力をするの？」「人前では夫婦のようにお芝居をして、裏では各自好きに遊べばいいじゃない！」これで家への体裁も保てるし、説教を聞かされることもなくなる。さらに自由に遊び回れるんだから、どう考えても損はない。凛は彼女に慎重に考えるよう忠告した。「大丈夫、ちゃんとわかっているから」食事が終わりかけの頃、すみれがトイレに行った隙に、凛はこっそり会計を済ませた。二人が外に出ると、すみれは唇を尖らせた。「私がおごるって言ったのに、どうして凛がこっそりと払っちゃったの？」「毎回あなたに奢らせるわけにはいかないわ。私だってお金があるから」「そうだね。あなたってちょっとお金持
