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第360話

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月子は尋ねた。「何か用?」

桜は答えた。「いや……別に。ちょっと挨拶しようと思って」

月子は何も言わなかった。

桜は本当は月子と少し話したかったので、脳梗塞で倒れた祖父が意識不明の状態であること、時折お見舞いに来ていることなどを話題にした。

そして、さりげなく自分の専門分野について語り、月子がハッカー技術を持っているかどうかを探ろうとした。彼女の直感では月子はハッカーだと思っていたが、月子はそれに対し終始口をつぐんでいた。

結局、桜は一人でぺちゃくちゃ喋り続けるしかなかった。

月子は呆れ果て、とうとう桜の言葉を遮った。「あなたが私にこんなに馴れ馴れしいのを知ったら、天音はまだ友達でいてくれる?」

桜は気まずそうに言った。「彼女はまだ来てないから、知られなければ、大丈夫だよ」

「……もういいから。あなたと話したいことはない」

洵がもうすぐ到着するので、月子にはおしゃべりをする暇はなかった。

桜は、月子が冷たい人だと感じた。

しかし、彼女はこのまま引き下がりたくなかった。むしろ、月子に相手にされなければされないほど、近づきたくなった。

だから、天音がまだ来てない隙に、桜は「月子さん、本当に仲良くしたいの。ライン交換してもいい?」とつけ上がるように言った。

月子は何も言えなかった。

桜の熱烈なアプローチに、月子かなり戸惑った。

今まで、彼女と何か接点があっただろうか?

どうして急に仲良くしたいだなんて言ってきたのだろうか?

「なんで私と仲良くしたいの?」月子はついに好奇心に負けた。

「言葉では言い表せない!あなたの雰囲気も、顔も……とにかく仲良くしたいの。ライン交換してもらえない!」

桜は慌ててスマホを取り出し、「お願い!」という顔をした。

月子は何も言えなかった。

「お願い!」

月子はやっぱり桜を傷つけるような断り方はしたくなかったので、こう言った。「いや、やめとくよ。天音とは一切関わりたくないので、彼女の友達とも関わりたくないんだ」

桜はがっかりした様子だったが、まだ諦めきれなかった。「絶対に迷惑はかけない!もしどうしても私が嫌だったら、いつでもブロックしていいから」

月子は何も言えなかった。

「約束する!本当に!」

本当にしつこい。

月子は結局、桜とラインを交換した。どうせいつでもブロックできるから。

桜は嬉し
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