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第8話

Author: キラキラ猫
深呼吸をして、遥は勢いよくカーテンを開け放った。

怒りに任せて暴言を吐き続ける老婦人を、冷ややかな目で見据える。

「口は災いの元ですよ。その悪態の報いは、お子さんたちに返ってきます」

遥はマスクをしており、顔の半分以上が隠れていた。

露わになったその瞳は、怒りを宿しながらも、吸い込まれるほどに美しかった。

「あんたに何の関係があるんだい!」と老婦人が声を張り上げた。

そこへ医師が薬を持って入ってきた。

「ここは病院です。騒ぐなら外でやってください」

目に入れても痛くない孫が病気になり、老婦人はその責任をすべて結衣と遥に押し付けていたのだ。

そこへ見ず知らずの女に説教され、怒りは頂点に達していた。

老婦人は腕を振り上げ、遥の頬を目掛けて平手打ちを食らわせようとした。

あまりに突然のことで、結衣を抱いている遥には避けることなどできない。

彼女はぎゅっと目を閉じ、顔を背けた。

だが、痛みは訪れなかった。

湊が老婦人の手首を掴んでいたのだ。

彼は不快そうに眉を寄せ、その手を乱暴に振り払った。

遥は目を開け、その光景に愕然とした。

どうして湊がここに?

さっきの通話で、自分の妻と子供がここにいると聞いて、飛んできたのだろうか?

湊が現れると、先ほどまで威勢のよかった老婦人は急に大人しくなり、気まずそうに押し黙った。

湊は老婦人を一瞥すると、すぐに視線を外した。

「悠斗の容態は?」

湊の息は少し上がっていた。走ってきたのだろう。

それだけで、彼がどれほど悠斗を心配しているかが痛いほどわかった。

その隙に、点滴を受けさせるため、遥は結衣を抱きかかえてその場を離れた。

「夕飯を食べ過ぎてお腹を壊して、熱が出ただけよ。大したことないわ」と恵が言った。

普段、恵が悠斗を叱ろうとしても、その度に義母が出てきて庇うため、悠斗は口先だけで泣き叫ぶ術を身につけてしまっていた。

「湊、どうしてここに?」

「アレルギーが出た。薬をもらいに来たんだ」

運転中、後部座席に結衣の上着があるのに気づき、遥に電話をかけたところ、受話口から争う声が聞こえてきたのだ。

湊は車を乗り捨て、急患の受付へと走ったのだ。

先ほど、遥が子供を抱いたまま、目を閉じ、平手打ちを受けようとしていた姿が脳裏をよぎる。

湊の胸中に、冷ややかな嘲笑が湧き上がる。

かつ
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