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第321話

Author: 小円満
私は前置きもせず、切り出した。「最近、黒澤グループが学術的な問題を抱えた研究者を高給で採用した、という話を耳にしました。この件についてどうお考えですか?」

時生は軽く笑い、私の録音機をさっと止めた。「狙いは津賀家だろ。だったら最初からそう言えばいい。昭乃、どうしてお前はいつも、津賀家と張り合おうとするんだ?」

私は淡々と答えた。「誰かと張り合ってるつもりはありません。ただ、仕事をしているだけです。とはいえ……黒澤グループが、いつからゴミの受け入れ先になったのかは、ちょっと気になりますけど」

時生の表情が一瞬、曇った。けれど怒る様子はなく、むしろ当然だと言わんばかりの口調で言う。「忠平は生体機器開発の分野じゃ無視できない存在だ。黒澤グループの研究部門はいま、人手が必要なんだ。

彼が出した条件は、息子も一緒に雇うこと。それだけだ。まあ、言ってみれば一つ買ったら一つ付いてくる、ってやつだな。おまけは出来がよくなくても、本命のためなら払う価値はある」

私は鼻で笑った。「目的のためなら手段を選ばない、いかにもあなたらしいやり方ですね」

時生の顔に、わずかな苛立ちが浮かぶ。「忘れるな。
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