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第658話

Author: 木真知子
「桜子、俺は......」

隼人が言いかけたその時、後ろから女性の高い声が響いた。

「先生!ごめんなさい、こんな遅くなっちゃって!」

桜子は急いで振り向き、亜矢子を見つけると、心の中のモヤモヤが一気に晴れ、笑顔を浮かべた。

「亜矢子!全然遅くないよ。むしろパリの展覧会で忙しいかと思ってたから、来てくれて嬉しい!」

亜矢子は駆け寄り、桜子と親しく抱き合った。

「そんなことないですよ。先生が招待してくれたんですから、すぐに来ました!」

その時、亜矢子は桜子の隣に座っている隼人に気づいた。

顔色が一瞬で曇り、眉をひそめて言った。

「先生、彼と同じテーブルで食事するんですか?気分悪くなりませんか?」

桜子は淡々と隼人を一瞥した。

「うーん、確かにちょっとね」

隼人の胸に鋭く突き刺さるような感覚を覚えたが、それでも平然とした顔で言った。

「桜子、もし俺を見るだけで気分が悪くなるなら、俺を見なくてもいいよ」

テーブルを変えるなんて無理だろう。

亜矢子は思わず目を白黒させた。

この男、ほんとに顔が厚い!
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