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第4話

Auteur: 涼風
私がよろよろと起き上がると、彰が葵に駆け寄り、彼女を抱きかかえているのが見えた。

「あら、そう」

私はその言葉を聞いて、ただ笑みを浮かべることしかできなかった。

彰は目の前の人が私だと分かると、急に慌てはじめ、さっと表情を変えた。

「雫、どうしてここにいるんだ?」

私が答えるより先に、葵が泣き出した。

「彰、雫が私を恨んでいるのは分かってる。でも、わざとじゃないの。ただ謝りたかっただけなの......」

彰は眉をひそめて私を見つめ、不機嫌そうな顔をした。

「雫、あの時のことはもう過ぎたことなんだ。葵も罪を償った。お前が今更こんなことをするべきではない」

私は何も言わず、彼の目を見つめながら言った。

「彰、彼女は本当に刑務所に入ったの?私を騙してそんなに楽しいかしら?」

彰は一瞬たじろぎ、慌てて言い訳しようとした。

「雫......」

しかし、葵は自分の足首を押さえ、苦しそうな表情を浮かべた。

「彰、足が痛い。もしかしたら折れてるかも......」

彼は私の方を一度見たが、視線を下に移し葵を見た。目には一瞬迷いがよぎったが、結局彼は彼女を抱き上げた。

「雫、俺が戻るまで待っていてくれ。また後で説明するから」

彼は息子に私と一緒に帰るように言い残し、葵を抱えて急いで立ち去った。

息子が私の後ろで、恐る恐る声をかけた。

「ママ」

私が何も言わないのを見て、彼はさらに不安げな表情を浮かべ、すすり泣きながら言った。

「ママ、無視しないで。僕が悪かったから、もう怒らないで」

少し迷ったが、私は彼に最後のチャンスを与えることにした。

「優斗、もしお父さんとお母さんが離婚したら、どっちと一緒に暮らしたい?」

息子はオロオロとした様子で私を見つめ、唇を噛み、しばらく黙り込んでから顔を上げた。

「ママ、パパは何か悪いことをしたの?僕が好き嫌いするのと同じように......許してあげられない?僕がママと一緒に行ったら、パパは悲しむよ」

「パパはママのこと大好きだって言ってた。だから離婚しないで」

私は彼を見つめながら、胸の内に広がる苦味を感じていた。しかし、息子が迷いを見せたあの時、すでに私の答えは出ていた。

もういい。どちらもいらない。

私は彼の頭を撫でた。

「お母さんは先生と話があるから、先に帰って。

寝室のベッドの横の棚に木の箱があるから、お父さんに渡して。そうしたら許してあげる」

彼はそれを聞くと、満面の笑みで家に向かって走って行った。

彼の小さくなっていく背中を見つめながら、私は心の中で「さようなら」と呟き、反対方向へ歩き出した。

......

病院で葵の看病をしていた彰は、一段落つくと、雫に電話をかけた。

雫は自分を愛しているのだと彰は信じていたため、彼女に誠心誠意謝罪すれば、きっと自分と息子から離れることはないだろうと思っていた。

しかし、何度も電話をかけても、繋がらない。

結婚して5年になるが、こんなことは今まで一度も無かった。だから、彼女はきっと寝ているのだろうと思っていた。

しかし、携帯から「おかけになった電話番号は、電源が入っていないか......」というアナウンスが聞こえたため、彰の淡い期待は打ち砕かれた。

彼はじっとしていられなかった。葵の声も耳に入らず、病院の外へ飛び出していった。

途中デパートに寄り、高価なネックレスを購入した。

そして9999本のバラの花束を注文した。それでも足りないと思い、雫が好きそうなものを全て買い占めた。

彼は猛スピードで家まで戻ったが、家の中に雫の姿はなかった。

彼は雫の名前を叫び続けたが、返事が帰ってくることはなかった。

その時、息子が彼を見つけて、嬉しそうに階段を駆け下りてきて、木の箱を渡した。

「パパ、ママがこれをパパに渡してって言ってた」

息子を見て、彰の不安は少し和らいだ。

息子はまだここにいる。彼女が息子を置いていくはずがない。

彼女がこの家を捨てるはずがない。

彰は安堵の笑みを浮かべ木の箱を受け取ったが、蓋を開けた瞬間、彼の表情は凍り付いた。

そこには親子関係に関する「絶縁書」が入っていた。

彰の体は思わず震えた。そして、まるでその木の箱が灼けるように熱いものであるかのように、彼は手を滑らせ落としてしまった。

そして、木の箱は砕けた......

親子関係の「絶縁書」の下には、離婚協議書が隠れていた......
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