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第5話

作者: 三葉ふたば
星奈は呆然と征臣を見つめた。

「征臣、私じゃないって言ったでしょう!どうして一度くらい信じてくれないの?お腹には征臣の子どもがいるのに、どうしてこんなことができるの?」

征臣は答えず、夏帆の手を取って2階へ向かった。

「俺の子を身ごもってるなら、なおさら子どもの手本になるような母親でいるべきだろ。間違ったことをしたなら、罰を受けろ!」

星奈は激しく首を横に振り、背を向けて外へ出ようとした。

「嫌よ!こんなことをされる筋合いはない!」

だが、振り返った途端、鷹取家のボディーガードたちが駆け寄ってきた。二人がかりで星奈の両腕を押さえ、門の前に正座させる。

そのうちの一人が口を開いた。

「奥様、おとなしくしていてください。抵抗されると、誤ってお腹のお子様を傷つけてしまうかもしれません」

星奈は全身をこわばらせ、それ以上動かなかった。

鷹取家の親族たちは次々と屋敷をあとにした。星奈の前を通るたび、蔑むような目を向け、嫌みを言っていった。

どれほど正座していたのか分からない。頬を伝っていた涙は、いつしか風に乾いていた。

頬はひどく腫れ上がり、乾いた唇の端は切れていた。見るも無残な姿だった。

お腹が何度も張り、星奈は見張っているボディーガードへすがるような目を向けた。

「征臣に伝えてもらえませんか?お腹の様子がおかしいんです。病院へ行かせてください」

ボディーガードは大きく膨らんだお腹を見ると、征臣へ電話をかけた。

すぐに、電話から征臣の冷たい声が聞こえてきた。

「自分が悪いことをしたんだから、罰を受けるのは当然だ。腹の子を盾にすれば、俺が許すと思うな」

それだけ言うと、一方的に電話を切った。

ボディーガードは星奈を見て、冷たく言った。

「おとなしく正座していてください」

星奈は、そのまま正座を続けるしかなかった。

門の前には、星奈のほかに、彼女を見張る二人のボディーガードしかいない。

身を切るような夜風が、薄い寝間着しか着ていない星奈の体に容赦なく吹きつける。

膝は痺れ、耐えがたいほど痛んでいる。

何度も目の前が暗くなり、とうとう耐えきれず、その場に前のめりに倒れ込んだ。

再び目を覚ますと、病院のベッドに横たわっていた。

征臣がベッドのそばに座り、星奈のお腹に手を添えている。

星奈は不安になり、反射的にお腹へ手を伸ばした。そのとき、征臣が口を開いた。

「赤ちゃんは無事だ」

星奈はほっと息をついた。そこでようやく、膝と頬の痛みに気づいた。

征臣は手を伸ばし、赤く腫れた頬に優しく触れた。

「夏帆ちゃんと結婚するって言ったのは、腹が立って、星奈を怒らせたかっただけだ。

夏帆ちゃんとは何もないって、何度も説明しただろ。子どもの頃から一緒に育っただけで、俺にとっては妹みたいな存在だ。どうしてそこまで夏帆ちゃんに突っかかるんだ?」

星奈の目には、もう何の感情も浮かんでいなかった。

もう征臣と言い争う気力さえ残っていない。

征臣の手を払いのけ、布団をめくってベッドから降りると、かすれた声で言った。

「離婚届が提出されるまで、あと22日。もうすぐ全部終わる」

征臣の顔が怒りに歪んだ。

「星奈、まだ離婚を持ち出して俺を脅すつもりか?星奈の家柄と見た目で、俺以上の男と結婚できるとでも思ってるのか?しかも、俺の子を身ごもってる。離婚した女を、誰が相手にすると思ってるんだ?」

星奈は足を引きずりながら病室の外へ向かい、冷たい声で言った。

「私のことなら、もう心配してくれなくていい」

征臣が怒鳴った。

「星奈、これが最後の機会だ!今日ここを出ていくなら、俺は本当に夏帆ちゃんと結婚する!あとで後悔して土下座しても、もう遅いぞ!」

星奈は足を止めず、そのまま病室の外へ消えた。一度も振り返らなかった。

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