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第343話

作者: 一燈月
「過去をすべて水に流す、だと?」

圭介は嘲るように笑った。その響きには皮肉が込められていたが、彼は血の滴る手を無造作に振ってみせた。

「手がこの有様だ。サインはできないな」

それはつまり、サインする気はあるということだ!

小夜の瞳がぱっと輝いた。彼女はすぐに視線を本堂の外に控えている彰へと向け、その意図を目で訴えた。

「相変わらず非情だな」

圭介は彰を呼び入れ、傷の手当てをさせた。消毒液が傷口に注がれても、眉一つ動かさない。

小さな卓の前に座り、対面の女を見つめるその眼差しは、まるで初めて見るかのように値踏みするものでありながら、どこか懐かしさを帯びていた。

今の小夜は、かつてよりも遥かに鮮やかで、生命力に溢れ、その美貌は隠しきれないほどの輝きを放っている。

彼女を手放す?

寝言は寝て言え。

心の中で冷笑し、圭介は卓の上のペンには触れず、淡々と口を開いた。

「この協議書では、お前には何の得もない。せめてもの情けだ。山を降りたら弁護士に作り直させよう。財産分与も含めて、お前が受け取るべき利益を保証してやる」

「必要ないわ!」

猶予を与えれば、何が起こるか分かっ
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