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6話

作者: Amy
last update publish date: 2026-08-07 20:08:42

カードの利用明細なら、私にも見られる。

家族カードではない。結婚したとき、生活費と固定費をまとめるために作った夫婦共通のカードだ。契約者は崇でも、毎月の明細を確認し、家計簿へ入力するのは私の役目だった。

ログイン情報も、崇が自分で家計用ファイルへ入れた。

見ること自体は、いつもの家事だ。見ないままにしていた範囲を、広げるだけ。

陽翔を幼稚園バスへ乗せたあと、私はパソコンを開いた。

まず、「韓国出張」の期間。

駅前のカフェ。

都内の百貨店。

タクシー会社。

スーツから出てきた3枚と、日付も金額も一致した。

そして、帰国した日の欄に、見慣れない請求があった。

【ホテルS 18万6400円】

韓国にいたはずの10日間を、まとめて精算したような金額だった。

ホテルSは、駅前にある高層ホテルだった。出張前、崇が「接待」と言って遅くなった夜にも、同じ名前がある。

画面を3カ月、半年と遡った。

4月12日。ホテルS、2万8000円。

5月17日。ホテルS、2万8000円。

6月8日。ホテルS、3万1000円。

そして今回、18万6400円。

同じホテルが、4回。

金額と日付を表にした。その隣へ、その日に崇が私へ言ったことを書く。

【部の飲み会】

【会議が長引く】

【接待】

【韓国出張】

嘘の名前が、4種類並んだ。

私は、表の見出しにすぐ『不倫』とは書かなかった。

ホテルに会議室があった可能性はある。接待のあと、宿泊しただけかもしれない。誰かの立て替えを共通カードで精算したという説明だって、あり得なくはない。

考えつく理由を、明細の横へ1つずつ書いた。崇がまだ口にしていない言い訳を、私の方が先に作っているようで、途中で手が止まった。

どの説明を当てはめても、「韓国にいた」という崇の言葉だけは、国内の利用記録と同じ表へ収まらない。

私は列を2つ増やした。

【確定していること】

家計用カードで、ホテルSの利用が4回ある。

崇が私へ伝えた予定と、日付が重なっている。

【まだ確定していないこと】

誰と利用したのか。宿泊したのか。何のためだったのか。

数字は崇を責めない。私を慰めもしない。ただ、崇の説明に合わせて形を変えてはくれなかった。

4月12日の行で、指が止まった。

陽翔の幼稚園の入園式だった。

崇は「どうしても外せない会議がある」と言って欠席した。式が終わったあと、私は泣き疲れて眠った陽翔の写真を送った。

【泣いちゃって大変だったよ。でも、最後まで座れた】

返事は、その日の夜だった。

【そっか。がんばったな】

カード明細に残ったホテルSの日付も、4月12日だった。

返信だけなら、ホテルからでもできる。

写真の中で、陽翔は大きすぎる制服の袖から手を出して笑っている。その顔を見ながら、私は歯を食いしばった。

この人は、いい父親だ。そう思おうとしてきた。

子どもの入園式より、ホテルへ行く予定を優先した日が、数字になって残っている。

ホテルに誰といたのかは、まだわからない。

でも、「今回だけ」ではなかった。

私は明細をPDFで保存し、印刷した。元データ、保存データ、紙。日付ごとに3つそろえる。

投稿には、ホテル名も金額も書かなかった。

【カード明細を確認しました。国内のレシートと一致しました。同じホテルの利用が、半年で4回ありました。そのうち1回は、息子の入園式の日でした】

しばらくして、Rからコメントが届いた。

【事実と、ご主人が言ったことを同じ表にしてください】

もう、作ってある。

返信しようとして、やめた。その代わり、表の4行目へ赤い線を引いた。

韓国出張。10日間。ホテルS、18万6400円。

次に崇が「接待」と言った日、私はこの表の続きを確かめる。

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