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第120話

Author: かおる
「......っ!」

乾いた音が病院の廊下に響き、星の頬が大きくはじかれた。

不意を突かれ、星は抵抗もできずにそのまま打たれる。

綾子の容赦ない平手打ちを喰らい、星の頬は瞬く間に赤く腫れ上がった。

「星野おばさん!」

怜が驚きの声をあげ、星に駆け寄る。

「母さん、何をしてるんだ!」

雅臣が低い声で制止する。

雨音も慌てて駆け寄った。

「お母さん、落ち着いて。

きっと何かの誤解よ!」

ただ一人、清子だけが唇の端を吊り上げ、楽しげに事の成り行きを眺めていた。

綾子の声は鋭く、廊下に響き渡る。

「誤解ですって?

普段から翔太を預かってるのはこの女でしょ!

結果、翔太がこんな目に遭ったのは、全部こいつのせいよ!

いい?

もし孫に何かあったら、あんたを絶対に許さない!

このろくでもない女!」

駆け込むように病院へ来た星は、身なりを整える余裕もなく、髪は乱れ、顔は陰に隠れて表情が見えなかった。

冷えきった指先を握りしめてきた怜が、心配そうに見上げる。

「星野おばさん......」

「大丈夫よ」

星は掠れた声で答え、ゆっくりと顔を上げた。

乱れた髪の奥からのぞく瞳には一片の熱もなく、それでいて薄い笑みを浮かべる。

――笑った。

頬を打たれた直後に笑みを浮かべたその姿に、場の全員が息を呑む。

次の瞬間、星は手を振り上げ――

「パシン!

パシン!」

二度続けざまに、雅臣の頬を打ち据えた。

誰もが凍りついた。

綾子の指が震え、星を指差す。

「な、なんてことを......息子に手をあげるなんて!」

星は真っ直ぐに綾子を見返し、一語一語を刻むように言った。

「雅臣は、あなたの息子だけではなく、私の夫、そして翔太の父親よ。

この二発は、あなたの代わりに打ったの」

綾子の体が小刻みに震え、今にも気を失いそうになった。

「あなた......逆らうつもりなの?」

星の声は冷ややかだった。

「逆らう?

大げさね。

何もしていない私が殴られるなら、翔太を連れ出した張本人にも同じ罰を受けさせるのは当然でしょ」

「何ですって?」

綾子は息を呑み、雅臣を振り返る。

雅臣は頬を赤く腫らし、険しい顔で母と視線を合わせた。

「母さん......今回の件は、星の責任じゃない」

誤解だと悟っても、綾子は素直に頭を下げることな
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