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第572話

Penulis: かおる
正道は鼻を鳴らした。

「ここはS市だぞ。

私が孫を連れ去るとでも思っているのか?

それに、子どもひとり満足に見ていられない神谷家の責任を、私に押しつけられても困るな」

その言葉に、明日香が小さく眉をひそめる。

「お父さん、客人がいらっしゃったわ」

彼女の声に促され、正道が振り返る。

目に入ったのは、部屋の入り口に立つ星と雅臣の姿だった。

正道の顔に、一瞬だけ柔らかな笑みが浮かぶ。

「星か。

よく来たな」

けれど、その視線が雅臣に移った途端、表情は一変する。

険しい色が浮かび、冷たく鼻を鳴らした。

「おやおや、これは雅臣さんじゃないか。

さぞお忙しいんだろう?

――息子を見失うほどに」

雅臣は、車の中ですでに綾子から事情を聞いていた。

今日は翔太を連れて射撃練習に行っていたが、知り合いに声をかけられ、ほんの少し目を離した隙に姿が見えなくなったという。

当初は施設内にいると思い探し回ったが、どこにもいなかった。

慌てて周囲を探した末、ようやく彼女は雅臣に電話をかけてきた。

そんな経緯を胸に抱えながらも、雅臣の表情は穏やかだった。

「正道さんの言うとおりです。

今後は気をつけます」

素直な返答に、正道の眉間がわずかに緩む。

そして、星に向かって手を差し出した。

「星、こっちへ来なさい。

父さんのそばに座れ」

だが、星は動かない。

静かに立ったまま、まっすぐ彼を見据えて言った。

「正道さん。

――翔太をここへ連れてきた理由を、聞かせてもらえる?」

「正道さん」という呼び方に、場の空気が一気に凍りついた。

正道の顔が瞬く間に曇り、重苦しい沈黙が落ちる。

靖も明日香も、思わず視線を交わした。

最初に声を上げたのは靖だった。

「星、お前はいったいどういう口の利き方をしてるんだ?

相手はお前の父親だぞ!」

星は彼の方を見やり、淡々と返す。

「私はもう雲井家の人間ではない――そう言ったのは、あなたたちでしょう?

自分たちの言葉を、もう忘れたの?」

靖の顔に薄氷のような怒りが走る。

「それは父さんが一時の感情で言っただけだ。

真に受ける方がどうかしてる。

星、父親はいつだって父親だ。

親を恨むのは、子としてあるまじきことだぞ。

今ここで謝りさえすれば、雲井家の娘として迎え入れてやる。

――それで
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