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第1219話

Author: 心温まるお言葉
手術室には、冷たい空気を纏う霜村涼平と、手術台に横たわる白石沙耶香だけが残った。

「なぜだ?」

傍らの男は、余計な言葉を言わず、ただそれだけを尋ねた。

白石沙耶香は手術室の外に立つ由紀を見やり、深く眉をひそめた後、怒りを露わにする霜村涼平へと顔を向けた。

「なぜも何も......」

霜村涼平が来て手術はできないと悟った白石沙耶香は、手術台から降りようとした。だが、涼平に手首を掴まれた。

彼の握力は強く、指が深く肌に食い込む。白石沙耶香は痛みに顔を歪めたが、歯を食いしばって声を上げなかった......

彼女が何も言わず、自分を見ようともしない様子に、霜村涼平は怒りを爆発させた――

「沙耶香、これがお前の答えか?」

帰国したら返事をくれると約束したのに、彼女の答えは、密かに子供を堕ろすことだった。

霜村涼平は由紀からの電話に出た瞬間、沙耶香との結婚に胸を膨らませていた気持ちが、一気に冷めてしまった。

あれほどまでに彼女を追い求めたのに、白石沙耶香に何度も拒絶され、その想いは粉々に砕け散った。

「沙耶香、なぜなのか教えてくれ。ちゃんと理由を聞かせてくれたら、もう二度と会いに来ないから」

もう疲れ果てた。諦める。だが、せめて理由を知ってから諦めるんだ。

うつむいていた白石沙耶香は、ゆっくりと瞼を上げ、絶望に満ちた霜村涼平の顔を見つめた。

確かに、決着が必要だ。どう決着をつけるのか。それは、全てを明らかにすること......

「あなたとゆきなが何もなかったなんて、信じられない」

白石沙耶香をじっと見つめていた霜村涼平の顔色が、陰りはじめた。

「彼女はちゃんと説明してくれた。彼女が一人で仕組んだことだって。なぜ信じないのか?」

「その後、彼女からICレコーダーを渡された。彼女の言う説明は、柳さんに脅されて言わされたものだった」

霜村涼平は一瞬、言葉を失った。疑念が頭をよぎったものの、沙耶香の言葉を疑うくらいなら、母さんがやったんだと信じたかった。

「沙耶香、お母さんが脅迫したのかどうかは知らない。ゆきなのICレコーダーの件も知らない。ただ、僕は何もしていない」

彼は両手を上げて白石沙耶香の肩を掴み、真剣な眼差しで彼女の瞳を見つめた。

「僕は何もしていない。信じてくれるか?」

白石沙耶香は首を横に振った。

「信じない」

霜村涼平
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