深夜、真波は秋年を探し回っていた。電話をかけまくっている最中、ふいに一通のメッセージが届いた。「爆弾級の情報がある。メールアドレス教えてくれる?」「はぁ?ふざけてるの?」怒りの真っ只中にいた彼女は、最初無視するつもりだったが、すぐに次のメッセージで送られてきたのは――秋年が車の中である女とキスしている写真。しかも女は……まさかの亜。真波は即座にメールアドレスを教えた。数分後、届いたメールには、秋年と亜が車内で抱き合いキスしている動画が添付されていた。撮影の角度も鮮明で、顔がバッチリ写っている。事情を知らなければ、完全に18禁の映像だ。真波は激怒し、近くの花瓶を掴んで床に叩きつけ
亜が先ほど口にした言葉は、秋年にこれ以上関わってほしくない一心からだと、裕貴は分かっていた。だが、それでも――彼は、あえてその隙を突きたかった。黙り込んでうつむく亜を見つめながら、裕貴は諦めきれずにもう一度問いかけた。「もし俺と結婚することで、川井秋年から解放されるなら……君は、受け入れてくれる?」亜は顔を上げ、涙を湛えた瞳で彼を見つめた。「それは……あなたに、不公平よ」裕貴は苦笑いを浮かべた。「公平かどうかなんて、どうでもいいさ。君が彼に気持ちがないってことは、ちゃんと分かってる。だったら俺は君の盾になりたい。君のためなら、それだけで十分だよ」亜は喉を詰まらせ、言葉にならなか
「何するつもり?私たちをこんな目に遭わせて、まだ足りないの?」亜の鋭い叱責の声が響いた。秋年はその場に固まり、呆然と亜を見つめた。しばらくの間、言葉が出なかった。裕貴はさらに苦しそうに眉をひそめた。「いてて……針に刺されたみたいに痛い……亜、ちょっと見てくれない?足、どうかな……」その言葉に秋年はハッとして、すぐに掛け布団を戻した。「医者を呼んでこよう。亜にそんな知識はないから」「あなたには関係ないでしょ」亜は冷たく言い放ち、彼の言葉を一蹴した。そして、身を乗り出して裕貴の脚を丁寧に確かめはじめた。まるで宝物でも扱うかのように、優しく、慎重に。その様子を見て、秋年の心はぐち
裕貴は咄嗟に身を翻し、亜を突き飛ばした。「ぐあっ!」その直後、彼の苦痛に満ちた叫び声が響いた。梁が彼の両脚に直撃したのだった。「裕貴くん!」亜は恐怖で顔面蒼白になり、彼のもとへ這い寄ろうとした――だが、倒れてきた木板が彼女の頭部を直撃し、そのまま意識を失ってしまった。次に目を覚ましたとき、亜は病院の元の病室に戻っていた。頭には包帯が巻かれ、じくじくとした痛みが額に残っていた。彼女は咄嗟に裕貴のことを思い出し、慌ててベッドから降りようとした。ちょうどそのとき、海咲が扉を開けて入ってきた。彼女は亜の様子に驚き、急いで駆け寄って、ベッドに戻した。「裕貴くんを探したいの。彼、無事なの
二人が座った後、老婆は茶を手にして戻ってきた。綺麗な茶碗が亜たちの前に置かれ、もう二つの茶碗は欠けた磁器の器で、それぞれ老夫婦の前に置かれた。裕貴はすべてを無言で見つめながら、老夫婦の芝居をじっと観察していた。老人はまず昔話を始めたが、亜がきょとんとした顔を見せたのを見て、裕貴はますますこの二人を信用できないと思った。――この人たちは腎臓を売る相手じゃない。何か別の目的があるに違いない。「川井さん、あなたはきっと覚えていないでしょう。でも、それでいいんじゃ。私たちはずっと心に刻んでいるから。さあ、お茶を。冷めたらおいしくないよ」老人の目には涙が光っていた。演技力は確かに一流だった。
部屋に入るなり、裕貴はすぐに口を開いた。「紙に書いてあったことは本当だった。今から行くよ」その言葉に、亜はまるで怪物でも見るような目で彼を見つめた。腎臓移植なんて簡単なことじゃない。しかも彼女はもう、自分の死を受け入れる準備を始めていた。これ以上、無駄な希望を抱いて傷つきたくなかった。だが、裕貴は彼女の思いなどお構いなしに、歩み寄ってそのまま彼女を抱き上げた。「何してるのよ、降ろして!」廊下を通りかかった看護師や患者たちが振り返って見るなか、亜の顔は真っ赤になった。羞恥で穴があったら入りたい気持ちだった。けれど、裕貴に彼女を降ろす気はなかった。そのまま車に乗せると、亜は怒りをぶつ