シャンデリアの舞う海へ

シャンデリアの舞う海へ

last updateLast Updated : 2025-10-15
By:  空蝉ゆあんUpdated just now
Language: Japanese
goodnovel18goodnovel
Not enough ratings
3Chapters
20views
Read
Add to library

Share:  

Report
Overview
Catalog
SCAN CODE TO READ ON APP

ダンス大会で彼と出会った。コロコロと表情を見せてくれるリオンに振り回される私。 二人の恋を妨害する物事が裏に隠れながらも、立ち向かおうとする。 私は年下に興味なんてなかった。シャンデリアが光り輝く会場の中でひと際目立つリオンと出会う。彼を自分のものにしたい欲望が重なっていく。 「貴方は私のもの」 例えリオンが彼女を見ていたとしても私には関係がない。 何処にも逃げれないようにと、彼とのつながりを維持していく中でどんな結末が待っているのか。 ──それは私にも分からない

View More

Chapter 1

0話 ステップ 第一幕

 0話 ステップ

 私の隣には貴方がいる。それは永遠と続くものだと思いながら、彼とのダンスを楽しんでいた。私は体を彼に預けるとフフッと微笑みながら、見つめる。彼は私より若い、それでも私とのダンスを選択してくれた事が嬉しい。

 「リオン」

 「──ん?」

 私の言葉を待ちながら、ステップを踏んでいる私達。そんな二人を遠目から見つめてくる彼女の視線が痛い。きっと私がリアンを独占している事が許せないのだろう。

 現実はミシャを選ばず、私の手をとった。それが答えであり、私が彼女に勝った証明の一つ。

 まぁ? 私が彼を支配しているからミシャの元へ行けないんだけどね。

 嬉しそうに彼女の悔しそうな表情を思い浮かべながら、言葉を紡いでいく。

 「私をダンスの相手に選んでくれてありがとう」

 「……あぁ」

 「今日の貴方、とても素敵ね。いつもより輝いてる」

 「……そうか?」

 「ええ」

 彼は困ったような顔をしながらも、私の言葉に声に答えてくれる。その度に満たされていく心の中。表面的に出さないようにしないと、と自分を戒めながら、ふんわりと笑顔を作っていく。

 リオンと初めて出会ったのは二年前のこの日。このダンス会場で彼を見つけたの。華奢な体に赤い髪、その間にふんわりと隠れている金色に光る髪。変わった髪色をしている子ね……それが彼の第一印象。本来なら自分より年下の子なんて興味がなかった。

 私の運が悪かったのか、色々な意味での経験不足な男ばかりだった。だからきっとリオンも同じだと思っていたの。

 ──もう、二年経ったのね

 キラキラ輝く、天井に敷き詰められているシャンデリア達が微笑みながら「あの時」へと戻してくれるの。

 第一幕

 私は視線を彼からシャンデリアへと注ぎ、ホウッとため息を吐く。週末になると開かれるこのダンス会場。ここには色々な立場の人達が集まり、ひと時の癒しとして出会いとダンスを楽しんでいる。

 自分の意思で来た訳じゃないのに、何故だか天井から零れ落ちそうなシャンデリアを見る事が楽しみになっている。お父様が「結婚」の二文字を出して、ここに来ている訳だけど、そんな気は起きなかった。

 「綺麗」

 シャンデリアはまるで海のようで幻想的な絵画を見ているように感じた。私はその光景に目を奪われていると、声をかけてくる人がいた。

 「シャデリーゼ様ですか?」

 私はフッと我に返り、問いかけてくる人物へと視線を移していく。

 「そうですが? 貴方は?」

 「貴女に見とれている男ですよ」

 ああ。さっきの目立っていた子ね、私は彼が求めるであろう笑顔を演出しながら、仮面を被っていく。きっと貴方も他の男と同じ。本当の私を見る訳じゃない、気づく訳じゃない、と決めつけて……

 「ダンスの相手は見つかりましたか?」

 「……」

 「もしよろしければ、僕とダンスしてくれませんか?」

 「え」

 名前も立場も名乗っていないこの状況でダンスに誘うなんて何を考えているのかしら。私は笑顔を作っていた事も忘れそうになってしまう。彼に気付かれないように小さくため息を吐くと、こう言った。

 「名前を名乗らない方との申し受けは出来ませんわ」

 少し冷たい言い方だったのかもしれない。しかし最低限のマナーくらいは守ってほしい所。まだ私だからよかったものの、他の女性にしていたらそれこそ後ろ指を指されてしまうわよ? 貴方。

 「そうでしたね、僕の名前は「リオン」と申します」

 にっこりと凶器的な笑顔を見せつけてくるリオン。私は見るからに年下で、礼儀もない彼を子供のようにしか思えなくて、あしらおうとする。

 一応お父様の顔に泥を塗らない程度にやんわりと……

 「すみません、先客がいますので」

 「先客ですか? そのような方見えませんね」

 「……えっと。トイレに行っているのです」

 「それでは「その方」が戻られるまでお相手願いませんか?」

 彼はどうにかして断ろうと理由付けをしている私に気付いているよう。どうしてここまでしつこくしてくるのか分からない。

 声を荒げてきっぱりとお断りしたいのに、それが出来ない……してしまったらお父様が用意した好きでもなんでもない「婚約者」を勝手に決められてしまう可能性があるから。

 ぐっ、と拳を握りながら耐える。

 それしか逃げ道がなかった。

 「大丈夫ですよ、僕がサポートしますので、ダンス経験がないシャデリーゼ様でも」

 「なっ……!!」

 ダンス経験がないですって? 私はその一言にカチンときてしまい、彼に言った。

 「ダンスくらいできるわよ、バカにしないで」

 プライドが高い私の性格に気付いていたのだろうか、それともそういう情報がまわっているかもしれない。私は彼の挑発に簡単に乗ってしまったの。

 彼は満足そうな笑みでサッと手を差し出し、エスコートをする。

 「行きましょう、お嬢様」

Expand
Next Chapter
Download

Latest chapter

More Chapters

Comments

No Comments
3 Chapters
0話 ステップ 第一幕
 0話 ステップ 私の隣には貴方がいる。それは永遠と続くものだと思いながら、彼とのダンスを楽しんでいた。私は体を彼に預けるとフフッと微笑みながら、見つめる。彼は私より若い、それでも私とのダンスを選択してくれた事が嬉しい。 「リオン」 「──ん?」 私の言葉を待ちながら、ステップを踏んでいる私達。そんな二人を遠目から見つめてくる彼女の視線が痛い。きっと私がリアンを独占している事が許せないのだろう。 現実はミシャを選ばず、私の手をとった。それが答えであり、私が彼女に勝った証明の一つ。 まぁ? 私が彼を支配しているからミシャの元へ行けないんだけどね。 嬉しそうに彼女の悔しそうな表情を思い浮かべながら、言葉を紡いでいく。 「私をダンスの相手に選んでくれてありがとう」 「……あぁ」 「今日の貴方、とても素敵ね。いつもより輝いてる」 「……そうか?」 「ええ」 彼は困ったような顔をしながらも、私の言葉に声に答えてくれる。その度に満たされていく心の中。表面的に出さないようにしないと、と自分を戒めながら、ふんわりと笑顔を作っていく。 リオンと初めて出会ったのは二年前のこの日。このダンス会場で彼を見つけたの。華奢な体に赤い髪、その間にふんわりと隠れている金色に光る髪。変わった髪色をしている子ね……それが彼の第一印象。本来なら自分より年下の子なんて興味がなかった。 私の運が悪かったのか、色々な意味での経験不足な男ばかりだった。だからきっとリオンも同じだと思っていたの。 ──もう、二年経ったのね キラキラ輝く、天井に敷き詰められているシャンデリア達が微笑みながら「あの時」へと戻してくれるの。  第一幕 私は視線を彼からシャンデリアへと注ぎ、ホウッとため息を吐く。週末になると開かれるこのダンス会場。ここには色々な立場の人達が集まり、ひと時の癒しとして出会いとダンスを楽しんでいる。 自分の意思で来た訳じゃないのに、何故だか天井から零れ落ちそうなシャンデリアを見る事が楽しみになっている。お父様が「結婚」の二文字を出して、ここに来ている訳だけど、そんな気は起きなかった。 「綺麗」 シャンデリアはまるで海のようで幻想的な絵画を見ているように感じた。私はその光景に目を奪われていると、声をかけてくる人がいた。 「シャデリーゼ様ですか?」 私はフッと我
last updateLast Updated : 2025-10-15
Read more
第二幕〜第四幕
第二幕 ──お嬢様   その言い方がなんだか含みもあって、そこでもカチンときそうになった。それでも|ここ《・・》はダンス会場なのだから、罵声を浴びせる訳にもいかず、堪えてしまう。 リオンはそんな私をよそに、サッと手を伸ばした。ふんわりと私の手に重なるとふふっ、と微笑みを漏らす彼を見て、なんて悪魔かしらと思ってしまう程、ある意味似合っている。 「どうしました? お嬢様」 「……その「お嬢様」って止めてくれない?」 「どうしてですか?」 私達は手を合わせ、体を寄せ合いながらステップを踏む。正直ダンスが得意ではなかった。しかし日頃の練習の成果もあり、ここまで踊れるようになった。 以前の私ならリオンの言葉に返答なんて出来なかっただろう。 (練習してよかったわ……) 私達がステップを踏めば踏む程、ドレスが揺れている。まるで見えない力に引き寄せられるかのように、雰囲気と空間に身を任せていく。 世界にどっぷりと浸かる、その言葉が一番似合うのかもしれない。 「私は「お嬢様」なんかじゃないわ、名前があるのですから」 「それはそれは」 「貴方からかってる?」 「そんな事ありませんよ?」 私とリオンの視線がバチッと合う。彼はニッコリと微笑み、一方私は苦笑いしか出来ない。 「そんな顔していると楽しめるものも、楽しめませんよ?」  顔と顔が近すぎて、彼の吐息が私の耳を掠める。 ──ドクン。 最初から正直印象が良くないリオン。なのにそんな彼の不意打ちに反応してしまう自分がいて戸惑う。 「っつ……」 なんだか悔しくて、恥ずかしいと思った瞬間だった。第三幕 「恥じらう姿も可愛らしいですね」 「は?」 「そんな言葉使いはよくありませんよ?」 隠したくても隠す事が出来ない感情の色。顔に出てしまった事を後悔しながらも、彼の姿をチラッと確認する。奇抜な髪色だけど、凄く綺麗な子。見た感じ私よりも年下なのは明白だ。 彼の言う通り「楽しむ」のが一番なのかもしれないと思い、今までの彼の言動をなかったモノのように割り切る。それがいい。きっと…… そう思いながらも、少し気が抜けてしまったのだろうか。私は少しよろけてしまいそうになる。  「気を抜いてはいけませんよ」 そう呟きながら、よろけそうになった私の身体をサポートし、元の体制に戻す彼。私は咄嗟に
last updateLast Updated : 2025-10-15
Read more
第五幕〜第七幕
第五幕 自分のペースで進みたいのに、リオンがそれを許さない。正直彼の事なんてどうでもよかった。どうせ目立ちたいだけ、そう思って変な目で見てただけだった。 ──それなのに。 私の身体をしっかりサポートしながら、余裕のある笑みで私を見つめるリオン。その視線が熱くて、痛くて、頬が赤くなってしまいそうになる。 視線から逃れようにも、密着度が高すぎだ。変なプライドで先ほどのように体制を崩してリオンに迷惑をかけるのも嫌だ。本来なら主導権を握るのは私なはずだった。 エスコートをされる前に自分が優位に立つ事で、安心をしていた部分もある。リオンはどうだか分からないけれど、他の男性からすると、私みたいなタイプはめんどくさいと思う。 突き放す事で、どうにか回避出来ると思ってたのが甘すぎたのかもしれない。 「何を考えているのです?」 「へ?」 「顔に出ていますよ?」 「は、はあ?」 「先ほど「楽しむ」と言った言葉は偽りだったのでしょうか」 私が他事を考えている事に気付いていたリオンは|わざと《・・・》落胆したように演技をし始めた。彼からしたら、私の反応を見る為にしただけのようだったが、そんな事に気付く事が出来ない私は、内心「マズイ」焦り始める。 「楽しんでいるわ」 「本当ですか?」 「勿論よ。じゃなくとダンスに対して失礼でしょう?」 「そうですよね。シャデリーゼ様のような素敵な方がダンスを冒涜するような真似しませんよね……僕の勘違いだったのかもしれません」 ──うっ……。 真っ直ぐ向けてくる言葉には悪意があるように感じて、ない。純粋に思っている事を口にしているだけみたいだ。私はリオンの様子を伺いながら、余計な事を考えるのはやめようと心に誓った瞬間だった。 第六幕 今までロクに殿方と踊った経験のない私は二曲目で疲れてきた。リオンの手から逃げようと何度も試みたけど、なかなか離してくれなくて困るのが本音だ。 最初、このダンス会場に来た頃は、色々な方に声をかけられていた。しかし私はお父様の言いつけの通りに来ていただけで、誰かとダンスを共有する事なんて、興味がなかった。 一応講師がついていたので、ある程度は踊る事は出来る。だけど、どうしてもこの空間に馴染めなかったのだ。 私とリオンの姿を見ている人達から、色々
last updateLast Updated : 2025-10-15
Read more
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status