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第13話

Author: 逆行者
葵は明士に怯えて、その場に倒れこんだ。

明士はまだ満足せず、彼女を殴ろうとした。

葵は必死に逃げ回り、まもなくリビングはめちゃくちゃになった。

萌々は怖がって壁の隅に縮こまり、動けなかった。

明士は死神のようにゆっくりと萌々に近づき、優しく胸を撫でながら言った。

「ここで鼓動しているのは、本来なら俺の娘の心臓だ。

葵、何年も俺を手玉に取って、さぞや得意だろう?

もし病院で病歴を調べなければ、萌々が俺の娘ではないなんて気づかなかった。

俺もお前も血液型はB型なんだ。A型の娘を産めるわけない!

お前のために、俺は実の娘を手にかけた!満足か?」

葵は真実を知っても怯えず怖がらず、逆にこう言った。

「全部あんたがバカだからだ!あんたは何様だと思ってる?あんたに尽くすわけないでしょ。

何もくれないくせに、何年もあんたについてきたのよ。萌々の命はその報酬よ。

あんた自身がすべての決断を下したって言ったでしょう!今さら私のせいにするなんて、夢でも見てなさい!」

葵は萌々を連れて逃げようとしたが、明士は二人を阻んだ。

「彼女たちはもう死んだ。お前らが生きてる資格はない」

葵は怯え、許しを乞い始めたが、明士は狂ったようにその二人を椅子に縛りつけた。

萌々が人形に刺していたあの針で、二人の体をひっきりなしに刺し続けた。

針は太くはなかったが、刺さるたびに骨の髄まで響くほどの痛みだった。

まさに生き地獄だ。

一晩中、明士は二人の体に無数の穴を開け続けた。

ようやく、彼はうんざりしたらしく、こう言った。

「お前たちが味わった苦しみなど、彼女たちの千分の一にも及ばない。地獄に堕ちろ!彼女たちに償え」

そう言い残し、明士はナイフで二人の頸を切り裂いた。

血しぶきが高く上がり飛び散り、彼の服を赤く染めた。

二人が絶命したことを確認すると、明士はゆっくりと部屋を出た。

その様子を見ると、通りすがりの人は驚き、すぐに警察に通報した。

明士は殺人を認めた。さらに、金を使って医者を買収し、心臓ドナーをすり替えたことも自白した。

この悪質な殺人事件は家庭のもつれが絡み、ネット上で一気に話題となった。

明士は死刑判決を受けた。

裁判当日、たくさんの人が彼の家の前に押し寄せて、彼を一発ぶん殴ろうと待ち構えていたらしい。

明士は避けることなく、それを
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