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第271話

Auteur: つき酔
全員の意識が主屋の火に向いていた。その隙に、誰かがそっと車へ乗り込んだことに気づく者はいなかった。

莉奈はエンジンをかけた。ドアを閉める直前、将軍が運転席へ飛び乗り、そのまま助手席へ移って、胸を張るようにきちんと座った。

車が動き出した瞬間、エンジン音は消火作業の喧騒に紛れた。

莉奈はハンドルを強く握った。前方には見張りの詰め所がある。あそこを抜ければ、もう誰も莉奈を止められない。

だが、詰め所にいたボディーガードたちは、フロントガラス越しに莉奈を認めると、すぐに全員で飛び出してきた。

「将軍!」

莉奈は速度を落とす一瞬の隙にドアを開けた。将軍は弾かれたように車から飛び降り、激しく吠えながら数人のボディーガードへ向かって駆けていく。

「ワンッ!ワンワンッ!」

将軍が切り開いてくれた隙を逃さず、莉奈はアクセルを最後まで踏み込んだ。車は放たれた矢のように、詰め所の脇をすり抜けていく。莉奈はバックミラーを一度だけ見た。

将軍はまだ莉奈のために時間を稼いでいる。あの人たちは将軍の顔を知っているから、むやみに傷つけることはないはずだ。

そう思い、莉奈は視線を前へ戻した。

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