夕食後のお茶の時間に3人で話すことになりました。お姉さまとはあまり話す機会がありませんし、良い機会です。
「私はキズモノ令嬢になったのでしょうか?」
「マリーをキズモノなどという輩は切り捨てて…」
「お兄さまは物騒なのよ。大丈夫よ、その辺は公爵家としてなんとかするから」
お金の力ですか?
「問題はマリーの結婚相手よ!マリーはお兄さまを見て育ってるから、イケメン慣れしてるんでしょ?なおかつ、私みたいに優秀じゃないといけないわけで…」
「優秀でイケメンの男…いないわけじゃないけど」
「私も頭に一人浮かんでるんだけど…。お兄さまと同じ人じゃないといいけど。せーので言いましょう。せーのっ!」
「「殿下!!」」
なにやら高貴なビッグネームが飛び出した。気のせいでしょうか?
「「はぁぁぁ」」
二人して、大きなため息です。
「殿下はなぁ。うちの家柄なら問題はないけどなぁ」
「あの方はねぇ。マリーに苦労させるのが分かる選択よね。それしかいないのかしら?」
「サリー?隣国にもいないのか?考えたわよ、当然。でも、イケメンで優秀っていうのはこの国の殿下くらいかしら?ただのイケメンならいるけど、頭が空っぽだったりするのよ」
「なるほど。そんなのに大事なマリーは任せられないな。それにしても…殿下か…」
私だってビッグネームで驚いた。
「俺の部下なら、性格は叩き直させるし、浮気も許さないが、それほどイケメンでも頭脳が優れているわけでもないんだよなぁ」
「騎士の方はどちらかと言うと、脳筋…」
「それだ!それなんだよなぁ。参謀タイプに優れたイケメンはいないしなぁ。やっぱり殿下か?」
兄と姉で私の結婚相手についてすごく議論をしていますが…
「そうですね、私はお兄さまみたいにカッコよくて、お姉さまみたいに賢い方に惹かれますね」
「やっぱり、殿下なの…」
と、お姉さまは呟く。
「でも、殿下だと俺が将来近衛騎士長になった時にマリーも同時に警護できる!そんなメリットがある」
「まぁ、私もマリーがこの国の王妃なら貿易にちょっと手心加えちゃうかもってメリットはあるわね」
「どうする?マリー?」
「どうするの?マリー?」
「と…とにかく、会ってみて考える。会ってみて、ホラ性格の不一致とかあるかもしれないし?」
お兄さまとお姉さまの感じだとなさそうなんだよなぁ…。
私の結婚相手は殿下で決定!みたいな感じで話してる…。
お兄さまとお姉さまの力で翌日に登城することとなった。
こんなドレスで失礼ないだろうか?とドキドキしながら私は王宮に行った。
実は私はワークズ公爵家の深窓の姫として、今まで社交をしていません。
なので、私の顔を知っているのは私の家の人間とヨハネス家の方々だけです。
「お兄さま、私はどういう風に動けばいいの?」
「とりあえず、謁見のまで陛下に挨拶をしよう。今まで会ったことないからね。サリーは一足早く行ってるはずだよ」
お姉さまはフットワークが軽いなぁ。
「国の陛下たる方に初めてお会いします。ワークズ公爵家次女のマリーと申します。初めまして」
「ほう。ライリーやサリー殿が囲い込む通りに可愛らしいお嬢さんだ。年齢は?」
「今年で15になります」
「来年あたりがデビュタントか?まぁいい。目的はこの国の王子との面会だったな。応接室に行くがよい。先にサリー殿が行っているぞ」
「恐れ入ります」
「ライリーは、別の話があるから残るように」
そう言われたので、私は一人応接室に行った。
私とアンペール様が入場という事になりました。 私はドレスが似合わないとか言われないかなぁ?とかドキドキです。そんな私の気持ちを慮ったのかアンペール様はしっかりとエスコートをしてくださいました。 陛下とはいつも顔を合わせているのですが、今日はなんだか特別です。「おお、今日のドレスはまた美しい!」「陛下!それではドレスが美しいのか、マリーが美しいのかわかりません!」「そうだな、そのドレスをきたマリー嬢が美しい。今後も我が息子をよろしく頼むぞ」「こちらこそよろしくお願いいたします!」 きちんと挨拶できたよね? ダンスホールでは、王子妃教育で学んだ社交ダンスの成果を遺憾なく発揮できたと思います。聴衆の目が私達に向いていたし。おかげで私はミスが許されなかったんですけど。 アンペール様を踏みそうになった時は、ギリッギリのところでアンペール様がリフトをしてくださって、難を逃れました。 あのドレス、体型がまるっきりわかるのですが、大丈夫でしょうか?「マリー、ダンスはもうやめようか?これ以上マリーの体形を他人の目に晒すことは本意ではない」 そう仰ったアンペール様の耳は赤い。翌年にはアンペールが正式に王太子となり、マリーも王太子妃となった。同時に正式に結婚式も執り行った。結婚式には各国の来賓を迎えて国の慶事となった。当然、サリーも隣国の王太子妃であるから、出席をし、近衛騎士団副団長となったライリーは警護として出席した。二人とも滂沱の涙を流し、祝った。マリーも喜んだ。その後、王家には2人の王子が生まれ、マリーは妊娠中。アンペール王子は「姫がいい」と言っているが、それは神のみぞ知る。だ。忘れていたがたまに貴族の噂になるヨハネス侯爵家は没落し、一家全員平民暮らしをしているそうだ。
王城でお兄さまに会った時に聞いてみた。「お兄さまって婚約者がいたり、意中の方がいらっしゃったりするのですか?」「そりゃあ、俺だってさぁ。小さい頃からサリーみたいな賢い女性とマリーみたいな可愛い女性見て育ってるんだ。可愛くて、賢い子が言いに決まってるじゃないか!そうするとなかなかいないもんだなぁ。世の中難しいよなぁ」 ナルホド。「あ、このことは殿下もご存じで、多方面で探して下さっている。が難航しているのが現実だ。うちの爵位と並べるような家柄っていうのも重要になるからなぁ」 ああ、家柄ってのもあるのかぁ。そうだよね、今後ワークズ公爵家を支えていくのに、教養に欠けている人だといけないし、お兄さまにも好みというものが存在しますものね。 そうこうしているうちに、私のデビュタントのための準備が着々と進むこととなった。 ドレスを作るための採寸。成長はもうしないだろうから今のサイズで大丈夫よね。 デザインは―――アンペール様の好みらしい。当日までの秘密らしい。仮縫いとかしなくて大丈夫なのかな? デビュタント当日。ドレスのアクセントには金の刺繍が施されている。金糸……高価じゃないのかなぁ?アンペール様の髪の色を意識しているのでしょうか?アクセサリーは全部サファイア?ガラスに着色した物とか…はないかな?王家だし。 逆にアンペール様の衣装には銀糸で刺繍が施され、紫のポケットチーフが…!グレーのスーツですが、『王家でーす』って襷(名前は知らない)してて素敵です。「やっぱり、そのドレスが似合うと思ったんだ」「マーメイドラインのドレスなんて…恥ずかしいわ。大丈夫かしら?私はまだ子供っぽいんじゃないのか心配だわ」「素敵だよ」「アンペール様も素敵です」 そんなやり取りをしていると、近衛騎士に昇格したお兄さまが盛大に咳払いをし、雰囲気をぶち壊した。「二人とも、一番最後の入場となります。今しばらくお待ちください」「お兄さまも久しぶりです!それが騎士服の正装ですか?徽章がたくさんついていて素敵です!」「マリーがそんなに言うのなら、騎士服を徽章で覆いつくすように頑張っちゃおうかな?」「ライリー!あくまでも国のために頑張れよ?」「承知しております!」 さすがは近衛騎士ね。王太子にはきちんと敬礼をするのね。前のような喧嘩にならなくて良かった。「マ
「ライリー、誰のマリーだって?マリーは俺の婚約者だ。すなわち俺のマリーだ」 こんなところ(王宮の廊下)で喧嘩はやめて~。「これはこれは、殿下。殿下は俺のマリーと結婚するのでしたら、俺の義弟という事になるのでしょうか?」「そうですね。俺は必ずマリーと結婚しますので!」 二人の口喧嘩は私の体感で10分くらいですけど、その間にアンペール様とお兄さまの間を行ったり来たり。互いに私をひっぺがすように取りあいをして……。大人気ないですよ!「お二人とも!こんな公の場で恥ずかしい!あんまり酷いとしばらく口をききませんよ?」「「ごめんなさい」」 二人とも大人しくなった。二人には仲良くしてほしい。義兄弟になるわけだし、お兄さまは騎士団長として王家を守ってくれるんでしょう?アンペール様は言わずもがな。将来的に国王ですからね。こんなところで子供じみた喧嘩をしているようでは先が思いやられますよ?「マリーは厳しいなぁ。そんなところも魅力的なんだけどね!」「俺達姉弟が育て上げたマリーは可愛いのです!」 そんなに胸を張って言う事では……。恥ずかしいじゃないですか!「あ、もう王太子妃教育の時間ですね。私は失礼しますが、二人とも仲良くしてくださいね!」「「マリーの願いならぁ」」 マリーがいなくなると二人の間の空気が変わった。「して、ライリー。なにかマリーの周りであったのか?」「すれ違う度に舌打ちをされたり、遠くから睨まれたりするようです。しかし、それがなんというか…マリーが我々と親しくしているのが原因だという話でして…」「は?俺はマリーの婚約者だぞ?親しくしていて当然ではないのか?」「はい。同様に俺もマリーの兄です。親しくしていて当然です。マリーが誑かしているとかそういった噂はないのです。ただすれ違う度に舌打ちをされたり、遠くから睨まれたり……。迷惑ですよね」「マリーを悩ませるのか?ここは陛下に相談をし、王家の影を動員しマリーを悩ませている家門を明らかにしてくれよう。そのあかつきには」「斬るんですか?」「マリーが言うように、ライリーは物騒だな。社会的に抹殺をしてくれよう。家門の者は社交界で生きていけなくなるように」「殿下もなかなかあくどいですね。社会的抹殺だと俺みたいなタイプは使えませんね」「そうだな。ライリーは実働って感じだもんな」 あれ?そういえば近
「お姉さま!」「ああ、我が可愛い妹マリー!ほら、こちらが殿下のアンペール様」「殿下、こっちが我が妹のマリーです。可愛いでしょう?もう、私もライリーも可愛がって育てましたから。かといって我儘っ子じゃないですよ!謙虚ないい子です。あ、私、邪魔ですね。では、少々庭に行きますわ。王宮は庭もキレイですもの。ホホホ」そう言ってお姉さまは嵐が去るようにいなくなった。「・・・」「・・・」「「あのっ」」ふふふっ。かぶってしまった。「殿下がお先にどうぞ」「なぜ、私と突然婚約を思い立ったんだ?」「それはですねぇ。長くなりますが、最近私は婚約破棄を言い渡されたんです」「なぜ?」「なんか、『真実の愛』というのを見つけたそうです」「どこの家?」「ヨハネス侯爵家です」いいよね?家名言っても。「それで、お兄さまは本人を斬るだの、お姉さまは家門を潰すだの過激な事を言ってたんですけれども、風向きが変わって私の今後の結婚相手についてになったんです。私はお兄さまのような容姿の方を見て育ったので、メンクイです。そして、お姉さまのような頭脳の方ではないと魅力を感じません。その結果、お兄さまとお姉さまの二人が私の結婚相手として導き出したのが殿下というわけです」「なるほど。確かに長かった。要約すると、君はメンクイで頭脳が優れている人が好きだ。で、ライリーとサリー殿が二人とも俺を指名したわけだな?」「なぜか渋っていたんですけど、殿下に何かあるんでしょうか?」「俺と婚約となると、王妃教育が待っているからそれを懸念したのでは?二人とも心配性だな」私限定ですけど。「あ、それでですかー。殿下の性格に問題があるとかかと思って心配しました。あっ不敬でした。ゴメンなさい!」「それでどうする?婚約するか?」「二人によると、殿下以外いないそうです。よろしくお願いします!」「…消去法。なんか仕方がないから…みたいな感じだな」「そんなことないです。婚約出来て幸せです。来年のデビュタントも楽しみが出来ました。私のエスコート役は殿下ですね!」「そうだな」この時マリー14才、アンペール16才。 私はアンペール様と婚約することとなり、毎日のように王太子妃教育を受けるために登城することとなりましたが、毎日登城するのは大変なので、王城の一室を賜りました。 それ(お部屋を賜ったこと)は嬉し
夕食後のお茶の時間に3人で話すことになりました。お姉さまとはあまり話す機会がありませんし、良い機会です。「私はキズモノ令嬢になったのでしょうか?」「マリーをキズモノなどという輩は切り捨てて…」「お兄さまは物騒なのよ。大丈夫よ、その辺は公爵家としてなんとかするから」お金の力ですか?「問題はマリーの結婚相手よ!マリーはお兄さまを見て育ってるから、イケメン慣れしてるんでしょ?なおかつ、私みたいに優秀じゃないといけないわけで…」「優秀でイケメンの男…いないわけじゃないけど」「私も頭に一人浮かんでるんだけど…。お兄さまと同じ人じゃないといいけど。せーので言いましょう。せーのっ!」「「殿下!!」」なにやら高貴なビッグネームが飛び出した。気のせいでしょうか?「「はぁぁぁ」」二人して、大きなため息です。「殿下はなぁ。うちの家柄なら問題はないけどなぁ」「あの方はねぇ。マリーに苦労させるのが分かる選択よね。それしかいないのかしら?」「サリー?隣国にもいないのか?考えたわよ、当然。でも、イケメンで優秀っていうのはこの国の殿下くらいかしら?ただのイケメンならいるけど、頭が空っぽだったりするのよ」「なるほど。そんなのに大事なマリーは任せられないな。それにしても…殿下か…」私だってビッグネームで驚いた。「俺の部下なら、性格は叩き直させるし、浮気も許さないが、それほどイケメンでも頭脳が優れているわけでもないんだよなぁ」「騎士の方はどちらかと言うと、脳筋…」「それだ!それなんだよなぁ。参謀タイプに優れたイケメンはいないしなぁ。やっぱり殿下か?」兄と姉で私の結婚相手についてすごく議論をしていますが…「そうですね、私はお兄さまみたいにカッコよくて、お姉さまみたいに賢い方に惹かれますね」「やっぱり、殿下なの…」と、お姉さまは呟く。「でも、殿下だと俺が将来近衛騎士長になった時にマリーも同時に警護できる!そんなメリットがある」「まぁ、私もマリーがこの国の王妃なら貿易にちょっと手心加えちゃうかもってメリットはあるわね」「どうする?マリー?」「どうするの?マリー?」「と…とにかく、会ってみて考える。会ってみて、ホラ性格の不一致とかあるかもしれないし?」お兄さまとお姉さまの感じだとなさそうなんだよなぁ…。私の結婚相手は殿下で決定!みたいな感じで話して
私は年の離れた姉と兄にことさら可愛がられて育った。それと今の状況はわからないけど…。「何~?我が可愛い妹・マリーが婚約破棄されただとー?叩っ切る!成敗だー!!」「お兄さま、物騒ですわ。可愛い・マリーが怯えてしまいます。そうですねぇ、婚約破棄をした家はどこでしたっけ?あぁ、ヨハネス家?そこが手掛ける事業を立ち行かなくしましょう?」二人とも怖いデス。婚約破棄されたと言っても、ヨハネス家の方より、ライリーお兄さまの方がずっとカッコいいし。頭脳においてサリーお姉さまの右に出るものはこの国にはいません!ヨハネス家の方と個人の名称が出てこないのは…私が覚えていないからです。印象に残らなかったんでしょうか?「「一体どんな理由で婚約破棄?」」「あー、なんか真実の愛を見つけたとか?私は全く興味なかったんですけど。だって、婚約者様よりもお兄さまの方がカッコいいし、お姉さまの方が優秀だし。私には魅力的に見えませんでした」「さすがは我が妹―!!」と、感極まったライリーお兄さまに抱きしめられました。「お兄さま、お兄さまの力では可愛いマリーが潰れてしまうわ」と、サリーお姉さまに抱きしめられた。二人ともかなりの力で抱きしめてくれたので、苦しかったです。「それにしても、真実の愛?信憑性がないわね」さすがお姉さま。一刀両断ですね。「どこの馬の骨が相手なんだ?」「なんか最近男爵家に上がった妾の子供らしいです」「本当に馬の骨だこと…」お姉さま、お口が悪いですよ。私の危機(?)と駆けつけてくれましたが、今は隣国の王太子妃。かつてはこのワークズ公爵家の長女ですから!そうなのです。うちは公爵家です。かなり優秀だと思っています。お兄さまはこれでも騎士団長だし。そのうち近衛騎士団長になるんじゃないかと専らの噂です。「でも、そのヨハネス家の方はその馬の骨がいいと?」「それで婚約破棄の運びになったのです。一応慰謝料は頂きました」「「当然」」「あぁ、マリー。そのヨハネス家の元婚約者(名前覚えていない)は生涯出世できないようにするよ」「そうねぇ、ヨハネス家が手掛ける事業も立ち行かなくすれば、そいつらまとめて平民落ちかしら?ホホホ」恐ろしいことを口にする兄・姉だなぁ。「さ、食事よ!」 なんで3人並んで食事なんでしょう?テーブルにはまだまだ座る場所があるのに。私が真ん