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第4話

Author: キュートキャット
「俺の許可もないのに、誰が退職を認めたんだ!」

私は少しも慌てずに答えた。

「あなた自身よ。藤崎さんと新婚祝いをしていた、あの夜にね」

電話の向こうはしばらく黙り込んだ。

私がそのまま切ろうとしたとき、彼は低い声でようやく口を開いた。

「……あのときは、ただの業務承認だと思ったんだ。今すぐ取り消す。だから早く戻ってこい。無断欠勤にはしない」

まるで恩でも着せるような言い方が、滑稽でしかなかった。

これ以上相手にする気もなく、私はそのまま通話を切った。

すると受話口の向こうで様子をうかがっていた寧々が、すぐに涙声で言った。

「颯真、朝倉さんが、きっとまだ私のことを怒ってるのよ。私、今から謝りに行くわ……」

その言葉に颯真はすっかり胸を打たれたようだった。

「俺があいつを甘やかしすぎたせいだ。嫌な思いをさせて悪かった」

「颯真が私を愛してくれるなら、朝倉さんにどんなふうに責められても平気よ」

その健気さに、颯真はいっそう寧々を不憫に思ったのだろう。

「心配するな。俺も一緒に行く」

高橋家の病院の正門を出て、ちょうど立ち去ろうとしたときだった。

寧々が私の前に立ちふさがった。簡素な服に身を包み、疲れの隠せない私の姿を見て、彼女は堪えきれないというように笑みを浮かべた。

そして、颯真に買ってもらったという高級限定バッグを、わざと見せつけてくる。

「あの日、あなたが結婚式をめちゃくちゃにしてくれたおかげで、颯真、私がかわいそうだって思ったみたいで。豪邸を二軒もくれたうえに、何億万もするジュエリーまで贈ってくれたの。限定ブランドに会社の株までね」

そう言って、彼女は私を上から下まで眺め回し、得意げにあごを上げた。

「あなたが颯真のそばにいたとき、こんな扱いなんて受けたことなかったでしょう?」

私は取り合わず、車のドアを開けて乗り込もうとした。

けれど彼女は私の腕をつかみ、さらに勝ち誇ったように笑った。

「認めなさいよ、朝倉さん。あなたは私に嫉妬してるの。私があなたの居場所を奪ったことも、たった数日で、あなたが九年かかっても手に入れられなかったものを全部手にしたことも」

「藤崎さん、そんなことを言うためだけに来たのなら悪いけれど、付き合っている暇はないわ」

私は彼女の手を振り払い、そのまま立ち去ろうとした。

すると背後から、底冷えのする声が飛んできた。

「あなたなんて、死ねばいいのよ!」

何の構えもないまま、私は寧々に車道へ突き飛ばされ、猛スピードで走ってきた車が、そのまま私の体を激しくはね飛ばした。

地面に叩きつけられた瞬間、額から血が噴き出し、次いで腹部に鋭い痛みが走る。

駆けつけた颯真は、血だまりの中に倒れた私を見て、さすがに顔色を変えた。

すぐに駆け寄ろうとした――けれど、二歩ほど踏み出したところで、すぐそばの寧々が突然その場に崩れ落ちた。

腹を押さえ、真っ青な顔で彼を呼ぶ。

「颯真……お腹が痛いの……助けて……私たちの子どもを助けて……」

その瞬間、颯真は一片の迷いもなく進む方向を変え、寧々のもとへ駆け寄った。しかも、私を救護しようとしていた救急の医師まで強引に寧々の前へ引っ張っていき、解雇をちらつかせながら、妊婦である寧々を優先して診ろと命じた。

医師たちは颯真を恐れ、逆らうことができなかった。

その結果、血だまりの中で助けを求める私には、誰一人として手を差し伸べなかった。

寧々はそのまま院内へ運ばれ、颯真の一声で、病院中の専門医が呼び集められた。

一時間後。先頭に立っていた医師が、颯真に告げる。

「妊娠三か月です。各数値にも異常はありません。おそらく驚きによる腹痛でしょう」

「……三か月?」

颯真はその場で凍りついた。

彼が寧々と関係を持つようになってから、まだ二か月しか経っていない。しかも半月前、寧々が結婚を言い出したときには、妊娠一か月だと本人が話していたはずだった。

「どうして三か月なんだ……?検査を間違えたんじゃないのか?」

信じられないといった顔で医師につかみかかる彼に、医師はすぐさま、たった今出たばかりの検査結果を差し出した。

そこにははっきりと、妊娠十三週と記されていた。

その数字を見た瞬間、颯真はようやく、自分が寧々に騙されていたのだと悟った。期待していた子どもは、最初から自分の子ではなかった。

その現実に打ちのめされて、ようやく彼は思い出す。私のお腹にも、子どもがいたことを。

彼は慌てて私に電話をかけた。

けれど、私のスマホは事故のときに車に踏み潰され、とうに壊れていた。

何度かけても、つながることはない。病院の中をうろつき回っていたそのとき、高橋家の両親から電話が入った。

そして彼は、私のお腹の子どもが助からなかったことを知らされた。

スマホを握りしめたまま、颯真の頭は真っ白になった。足から力が抜け、その場に崩れ落ちる。

ちょうどそのとき、画面に一本の通知が表示された。

【あなたは高橋グループから解雇されました】
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