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第5話

Author: えいさん
依霜は呆然とした。

翊はまだ青儀を愛しているはずなのに、もうじき彼女を宮中へ迎え入れられるはずなのに、なぜ……自分を縛り付けようとするのだろう?

彼女は伏し目がちに、低い声で言った。

「私めは、そのような大それたことなど……」

翊は彼女の蒼白な顔と痩せ細った体を見つめ、眉を深く寄せた。

「もう十分休んだのなら、今日から日夜、朕の傍で仕えよ」

それからの日々、翊はまたしても食事に文句をつけるようになった。

御膳房(ごぜんぼう/皇帝の食事を作る機関)から様々な滋養のある薬膳が運ばれてきても、彼は一口食べただけで依霜へ突き出した。

「不味い。貴様にくれてやる」

依霜は彼の視線を浴びながら、ご馳走を一口ずつ無理やり喉に流し込むしかなかった。

そのおかげか、彼女の体はいつの間にかすっかり回復していた。

秋の狩猟の日。翊はどうしても依霜を連れて行くと言って聞かなかった。

狩猟場で、青儀と第四親王が馬を並べて進むのを見た彼は、途端に目を冷たく光らせ、依霜を自分の馬の背へと力任せに引きずり上げた。

「あっ!」

依霜は恐怖のあまり悲鳴を上げた。

「黙れ!」

彼は依霜の腰を強く抱き寄せ、耳元で冷たく囁いた。

「お前と青儀は姉妹だろう?あいつはお前のように臆病ではない。もう一度悲鳴を上げたら、ここから放り出して馬に踏み殺させるぞ!」

依霜は唇を強く噛み締め、目を閉じて二度と見ようとはしなかった。

翊は鼻で笑うと、依霜を乗せたまま数多くの獲物を仕留めた。

突然、森の中から数十人の黒装束の者たちが飛び出してきた。

「陛下をお守りしろ!」

護衛たちが刀を抜いて応戦する。

乱戦の中、依霜と青儀は攫われてしまった。

再び目を覚ました時、二人は断崖絶壁に立たされていた。

賊は獰猛な笑みを浮かべ、依霜と青儀の首に刀を突きつけた。

「軒轅翊!俺の家族を皆殺しにしたな。今日こそ、貴様が最も愛する二人の女を失う痛みを味わわせてやる!」

翊は賊を冷たく睨みつけ、なんと声を出して笑った。

「最も愛する二人の女、だと?」

「陸青儀はすでに他人の妻。朕は傷物の女など要らん。

それに引き換え、陸依霜は宮中に入ったその瞬間から、朕の女となる運命にある。

そいつを返せ。陸青儀は……好きにしろ」

依霜はハッと息を呑んだ。

彼が……自分を選んだ?

だが、よりによってこんな時に。

賊が殺そうとしているのは、彼が「最も愛する者」であると、彼は百も承知のはずだ。

だからこそ、彼は嘘をつき、青儀を守るために、自分を身代わりに差し出したのだ……

案の定、賊は狂ったように高笑いした。

「いいだろう!ならば、俺はこの女を道連れに死んでやる。一生苦しむがいい!」

言い終わるや否や、賊は青儀を荒々しく突き放し、依霜を引きずったまま断崖から身を躍らせた。

落下していくその一瞬、依霜の視界の端に、目を血走らせた翊の姿が映った気がした。

彼は何かを叫んでいたようだが……もう聞き取ることはできなかった。

依霜は全身の骨が砕け散るのを感じた。

断崖から落ちた瞬間、間違いなく死ぬのだと思った。

冷たい川の水が口と鼻から流れ込み、全身を激痛が襲う。暗闇の中で浮き沈みを繰り返し、まるで永遠に終わりが来ないかのようだった。

「ようやく目覚めたか!」

甲高い声が鼓膜を突き刺した。依霜が重い瞼をこじ開けると、目に飛び込んできたのは、皺だらけの李公公の顔だった。

「このまま目を覚まさなければ、陛下は太医院(たいいいん/皇帝や宮廷の医療を担った中央の医療行政機関)の者を皆殺しにされるところでしたぞ」

李公公は額の汗を拭った。

「陛下は人を遣わして一日一夜捜索させ、ようやく川の下流でお前さんを見つけ出したのだ……」

依霜は呆然とした。

陛下が?翊が?

彼が自らの手で自分を死地に追いやったというのに……どうして……

突然殿の扉が開かれ、明黄色の人影が大股で入ってきた。

翊は彼女を見下ろした。その瞳には、見慣れた氷のような冷酷さが宿っている。

「死ななくて何よりだ」

彼は冷笑した。

「朕はまだ、お前をいたぶり足りぬのでな」

依霜は伏し目がちになった。

やはり。彼が自分を救い出したのは、この先もいたぶり続けるために過ぎないのだ。

「承知いたしました」

彼女は静かに答えた。

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