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第312話

Autor: シガちゃん
和恵と将平が江川市に到着すると、すぐにインターナショナルホテルへと向かい、チェックインをした。今回江川市を訪れたのは、ナノ治療プロジェクトの件についてアンデル教授と話し合うためだった。

由奈と祐一が到着したとき、大きなレストランの中ではすでにアンデル教授のチームと和恵が談笑していた。和恵は英語が得意ではないが、外交官の息子が通訳として付き添っており、アンデル教授とも流暢に会話を交わしている。

和恵の隣にいるウェイターが何か耳打ちをすると、彼女は由奈たちに気づき、穏やかな笑みを浮かべた。「由奈、祐一、来たのね」

「おばあさま、お義父さん、お待たせしました」由奈はいつも通りに挨拶をする。

祐一がまだ離婚届に署名していない以上、彼女は滝沢家の嫁なのだ。

将平がうなずいた。「江川市での暮らしはどうだ?」

「おかげさまで、元気に過ごしています」

「由奈、アンデル教授とはもう会ったわね?」和恵は彼女の手を取った。

由奈は微笑む。「ええ、何度か」

アンデル教授も口を開いた。「池上さんのことはよく覚えています。白石恭介先生の教え子だったとは知らず、その節は大変失礼しました」

しばら
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  • 徒に過ごした六年間――去り際に君の愛を知る   第669話

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