Home / 恋愛 / 復讐クエスト / プロローグ 02

Share

プロローグ 02

last update publish date: 2026-02-04 09:59:04

 腹の立つ朝食を終え、なんとか通勤ラッシュの電車に身体を捩じ込んだ。

 私の住む西日暮里のハイツから勤務地のある秋葉原まで山手線を利用して約10分。朝の忙しい時間にご飯を作って洗濯して支度したらどうしてもこの時間になる。本当ならもっと早く家を出たいところだ。建真がいなかったら会社近くの安マンションに即引っ越しできるのに。

 ああ、早く捨てたい。夫を捨てる方法ってないですかね?

 私も大ヒット漫画のような『計画離婚』がしたいわぁ。誰か計画してくれないかな。このままだとストレスで早死にしそう。

 ラッシュの電車から人間が吐き出されるように出てきた。駅から徒歩数分で私が働いている『アプリメイク』というIT企業の会社に着く。ここは主にアプリゲームを専門に作成している小さな個人経営の会社だ。代表の諸見里臣(もろみざとしん)さんは気さくで面白い方。恋愛系のアプリやおみくじ、一風変わったアプリばかりを作っていたけれど、私がゲーム好きで正社員になったことから、アプリメイクを一世風靡させるような面白い王道RPGゲームを作って欲しいと依頼された。

 企画から丸投げされてしまい、現在片っ端からRPGをプレイ&研究している。ここ暫くはもっぱらゲームするために出社しているようなものだ。企画書はまるで進んでいない。白紙のまま1週間くらいが過ぎた。

「ミーティング始めるぞー」

 今日は月曜日で目標達成報告日。みんなきちんと定められた目標やタスクをこなしているというのに、私はぜんぜんダメだ。落ち込む私を社長が元気づけてくれた。

「紀美、来週こそ面白い企画で俺をあっと言わせてくれよ!!」

 同じ学年の諸見里社長は豪快に笑ってくれた。ダークブラウンの短めの髪をソフトモヒカンにした長身のイケメンで、女性にさぞモテそうな人だった。最初から名前呼びして馴れ馴れしいと思っていたが、距離を詰めるための作戦らしい。

 建真もこんな感じだった。距離を詰めるのが上手くて人たらし。家庭内で見せる顔と外の顔はまったく違う。諸見里社長のことを悪く言いたくないけれど、こういうタイプは案外家で高慢なのかも。

「紀美って今日ヒマ?」

「あ、えっと…家に帰って主人の食事の用意が…」

「えーなにそれ。子供いなかったよな? 旦那が帰ってくるのは何時?」

「多分21時くらいかと…」

「なーんだそんな時間の帰宅だったら、どうせ外で食ってるよ。今日はアプリメイクの懇親会だ! 他の会社の人間も呼ぶから全員参加な。特に紀美は来週中にはしっかりアプリの企画書を作ってもらわなきゃいけないから、アイディア交換会ってことで!」

 というわけで建真にご飯を作れなくなった連絡をしろ、と社長命令されてしまった。

 どうせ作っても帰ってほとんど食べてくれないし、無かったら文句言うけど今日1日くらい、別にいいよね。

 建真に連絡を入れ、諸見里社長の言う通り懇親会に出席した。アプリメイクは秋葉原の一等地にオフィスがあるけれど、一歩裏路地に入れば雑多なお店が多く存在している。いかがわしそうなお店からラーメン店など様々だ。

 そんな懇親会で私は出会ってしまった。

 これから始まる冒険の旅を共にする、不思議な仲間と――

 

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 復讐クエスト   復讐クエスト2 / LV2 勇者コウダイ 03

     「驚いて大声出しちゃってごめんね。一旦整理しよう」 ふさがれた手を退けてもらうようにお願いして、僕は背筋を伸ばした。ランチ用に注文したホワイトソースのパスタを頬張り、咀嚼して珈琲と共に流し込む。今の話が衝撃すぎて、うまいはずのパスタの味がぜんぜんわからなかった。「――つまり、葛野さんとの仲を疑われて、加藤さんにやっかまれて、ありもしないデータ消去を武田さんのせいにされたってことだよね?」「はい。おっしゃるとおりです」「なにそれ…アホらし。でも、巻き込まれた方はとんだ迷惑だよね」「そうなんです…。女性の方がマーケティング課で続かないのって、絶対加藤さんが原因ですよ。仕事で厳しいのならともかく、勝手な憶測で仲を疑って…ほんとに酷いです…」「僕が掛け合ってみてもいい?」「そんなことできるのですか?」「加藤さんを攻めるんじゃなくて、葛野さんの方を狙うんだ」 というわけで味のしなかったランチを速攻で終わらせ、その足で葛野さんの下へ。「葛野さん、少しよろしいでしょうか」 営業一課で忙しくしている彼を休憩室へと呼び出し、事の経緯を伝えた。「…というわけで、加藤さんが武田さんを困らせているので、なんとかしてください」「俺に言われてもなぁ」「付き合っていますよね? 加藤さんと」「付き合う? 冗談はよしてくれ」 あれ? 違うの?(汗) 「加藤さんがあなたと仲良くしている女性社員ばかりに嫌がらせをしているという噂でもちきりですよ。武田さんが泣いて困っていましたから、ここはひとつ、葛野さんの話術でなんとか加藤さんの説得をお願いします」 無理やりだけどお願いしてみた。うまく行くかな…? 不穏な雰囲気なので、戦闘音楽が僕の頭の中で流れた。言うなれば彼はモンスター。やつを説得する僕は勇者・コウダイだ。「コーハイ思いでなによりですねぇ。宇治川君は」 蛇のような嫌味な

  • 復讐クエスト   復讐クエスト2 / LV2 勇者コウダイ 02

     結局、昼休み終わりくらいまで打ち合わせにかかった。僕の会社は割と昼休みを自由に取っていい会社なので、遅めのランチをしようと思ってフロアを歩いていたところで、神妙な顔をした武田理央奈さんと出くわした。「武田さん、この前はありがとうね」 ちゃんとお礼を言えてなかったので、先日萌絵のお迎えの時に入った残業を代わってくれたことについて礼を述べた。「あ、宇治川さん…」 いまにも泣き出しそうな武田さん。いったいどうしたのかな?「どうかした?」「あ…少し、お話を聞いていただけませんか?」「話? いいよ。お昼はもう食べた?」「いえ。これからです」「じゃあ、この前のお詫びも兼ねて昼食はご馳走するから、外へ行こうか」「ありがとうございます」 しょんぼりとした様子で武田さんが僕の後に続いた。元気ないけどどうしたのかな。  会社近くのコーヒーショップ適当なランチセットを2つ注文し、向かい合って席に着いた。「武田さん、どうしたの?」「実は…加藤さんが…」 マーケティング課のお局・加藤佳子さんのことか。「加藤さんとなにかあったの? 君はマーケティング課に手伝いへ行くのは来週じゃなかったっけ?」「はい…そうなんですが、急に一人出社しなくなってしまったので、今日手伝いに入ったのですが…」 武田さんは涙目になっていた。「無理です…私、マーケティング課のお手伝いはできそうにありません…」 え!? 責任感も強く真面目で頑張り屋の武田さんが、どうしてこんなことを…。なにか困ったことがあったのかな。  「えっと…僕で手伝えることはある? 武田さんがお仕事頑張れるようになにか…」「無理なんです」「どうして無理なんて…」「葛野(くずの)さんが私を贔屓にしているからって…朝から加藤さんと言い合いになってしまって、そのあと、大事なデータをデリートしたとやり玉に挙げてきたんです…それが私のせいにされてしまって」「

  • 復讐クエスト   復讐クエスト2 / LV2 勇者コウダイ 01

     「初めまして。本日はお時間をいただきましてありがとうございます。五代と申します。よろしくお願いいたします」 爽やかな挨拶と共に名刺を渡され、僕は驚愕した。 五代…建真。昨日紀美さんに聞いた苗字と同じ名前だ。珍しい名前だから間違いないだろう。 なぜ、紀美さんの旦那が僕の会社に…。いやいやいやいや、ただの偶然だけども、できすぎていて怖い現実。ゲームシナリオのような展開だな。「第二営業部主任の宇治川です。今回、御社の新商品について最適な広告を打ち立てられるように提案させていただきます。いくつかプランがありますので、互いに精査しながら最適なマーケットへのアプローチを提案できるように尽力いたします」 この男が紀美さんの……。彼女から給料を巻き上げ、苦しめ、虐げているのか。伴侶となった彼女を裏切り…想像するだけで怒りが沸点に達した。 こんなクズ、生きる価値無し! 僕は心に決めた。仲間になった紀美さんのために、こいつを地獄へ送ってやろうと。 どんな風にするのがいいか、じっくり考えよう。まだまだ『復讐クエスト』(紀美さんが面白いゲーム開発をしていることは聞いた)は始まったばかり。 やるぞ!! 早速今日、紀美さんのクズ夫に会ったことを紀美さんにお知らせしよう。 そんな風に思いながら打ち合わせに励んでいると、スマートフォンにメッセージが入った。――口座変更成功しました! 航大さんのお陰です!! あ。早速アドバイスを実施してくれたんだ。嬉しいな。「すみません、取引先からの連絡が入りまして。返信してもよろしいでしょうか?」「どうぞどうぞ」 僕の目の前に座って打ち合わせを遂行している五代建真さん――もとい紀美さんのクズ旦那は爽やかな笑顔を見せた。この爽やか男の仮面をはぎ取って、白昼の下に晒しやっつけてやる! 僕は自分が勇者になった気分になった。そうだ僕は勇者。なんでもできる勇者だと信じて悪者を

  • 復讐クエスト   復讐クエスト2 / LV1 勇者コウダイ 08

      「しょうがないね。金ちゃんはドケチだから、ぜったいにお金を払わないと欲しいものは売ってくれないんだ。だからまずはお金を貯めよう」「ドケチは余計だ」万時さんがぼそりと呟いた。「ほんとのことじゃない!!」 ふたりが喧嘩を始めたので、僕はそっちを無視して紀美さんに伝えた。「今のお話を聞いて考えたのですが、紀美さんの稼いだお金なのに、お給料を彼に取られているのがそもそもおかしいと思います。新しい口座を作って、職場に給料の振込先を変えて欲しいとお願いするのはどうでしょうか?」「あ…思いつきもしませんでした!」「コウ、名案じゃない! さっすが~♪」 バシ、と北都さんに肩を叩かれた。「い”っ……っ!!」 肩に激痛が走り、結構なダメージを受けた。予想では10ポイントくらいのダメージを受けたと思う。  先立つものがない紀美さんを救済するべく、北都さんが大吉でアルバイトを提案し、紀美さんはアルバイトを快諾していたので金銭面の困りごとはなんとかなることになった。 よかった。一安心だ。紀美さんとは連絡先を交換した。彼女はアプリでゲーム開発をしているほど、ゲームが好きらしい。話しが合いそうだ。僕もゲーム好きだから。  話がまとまったので帰宅することになった。飲食代を支払おうと伝票を北都さんに渡すと、心配そうに彼女が言ってくれた。「コウもわけありっぽい感じだから、よかったら相談乗るよ」「いや……ははは……」この人はエスパーなのだろうか。「ため込まずにここへ話に来てね。大吉はそういう場所だから」「はい」「遠慮は禁物。もう仲間なんだし」 仲間……。「ありがとうございます!」 北都さんがかけてくれた言葉は、いつもひとりで家庭に戻っても居場所がなくて、辛かった僕の心を温めてくれた。  なんの仲間かわからないけれど、これからの僕の人生が明るく変わっていく予感がした。――五代 紀美 が仲間になった ――東雲 北都 が仲間になった

  • 復讐クエスト   復讐クエスト2 / LV1 勇者コウダイ 07 

     「は? なに、事件って。それよりまず自己紹介でしょ」 そう言って北都さんは五代さんに挨拶をしていた。その間に僕はインテリ眼鏡さんから名刺をもらった。――『株式会社 なんでも売買屋 代表取締役社長 万時 金成(まんじ かねなり)』 住所を見ると隣のビルになっている。近いんだな。 お互いのことをわかるために話を進め、そして万時さんが『事件』になる核心部分を切り込んだ。「実はな、紀美さんは旦那から酷いモラハラを受けているんだ。生活費はたった2万円しかもらえず、彼女が稼いだ給料は旦那に取り上げられて、飲み代すら捻出できずに俺の所へ二束三文のネクタイを売りに来る有様だ。どうだ北都。彼女が可哀想だと思うだろう? 助けたいと思うだろう?」「…んじゃそいつぅっ!!」 北都さんは般若の顔に早変わり。持っていたトレイがミシミシ恐ろしい音を立て始めた。銀のトレイが割れんばかりの勢いだ。 えぐい音してますが…。トレイの気持ちを代弁するなら『こ わ さ れ る ~ !!』 だと思った。「金ちゃん、詳しく教えな」と北都さんは人殺しも厭わないような鋭い目線で万時さんに尋ねた。「うん。かくかくしかじか――…」 話している間に離婚するかもしれないからという理由と、もう仲間なんだから水臭いという北都さん持論でみんなのことを名前で呼ぶ流れになった。 それはさておき、五代さん――もとい紀美さんがひどい仕打ちを受ける様子やお金を奪われている話を聞いた。「か弱い女性を泣かせるなんて…そのクズは地獄行きだろうが!!!!」 北都さんは明らかに怒っている。言葉遣いが乱暴なところが気になった。美人なのに…。でも、それだけ許せないことなんだ! 僕も腹が立つ!!「ほんとうに酷い…そんな男がいるなんて、同じ男として赦せないですね!!!! 僕もなにか力になれることがあれば協力します!」 大したことはな

  • 復讐クエスト   復讐クエスト2 / LV1 勇者コウダイ 06

     それから仲間と他愛もない話を交わし、別れて家に帰ってから気が付いた。  迷惑をかけてしまった女性にクリーニング代を渡すのを忘れてしまった、と。 あああしまったぁぁぁ…。  あの人、また店に来るかな…。  お会いできるまで、どうせ家に帰っても食事の用意がないから、暫くあの店に通おうかな。定食っぽくなるように注文すれば十分晩御飯として成立しそうだ。 というわけで翌日から『大吉酒場』へ通うことにした。  彼女は結婚しているから、そうそう会えないかもしれない。でもクリーニング代を渡さないと気がすまない。連絡先も聞いていないし、名前もわからないので店に頼むこともできない。自力で探すしか…。  そう思っていたのも束の間。翌日同じようにカウンターで飲み食いしていると、ひとつ席を空けた先に見覚えのある女性が座った。 「「あっ」」  彼女だ!「よかった。お会いすることができて。僕、あなたにクリーニング代をお渡ししようと思って、ここに来たらまた会えるかなって思って待っていました」 おっと。名乗りもしないで待ち伏せしたなんて、不審者と思われても困る。「先日は大変失礼しました。僕はこういう者です」 自分の名刺を渡すと、彼女も名刺をくれた。 ――『アプリメイク  アプリゲーム企画開発部 エンジニア  五代 紀美(Norimi Godai)』  五代紀美さんか。へえ~アプリゲームの企画開発でしかもエンジニアだって!  カッコいい~!  「先日はほんとうに申しわけございませんでした。これ、受け取っていただけますでしょうか」 白い封筒に1万円を入れたものを差し出した。これで十分足りると思うけど、大丈夫かな…。僕もあまりお小遣いは高い方じゃないから、これが精いっぱいなんだけど。「あ、いえっ。ぜんぜん、シミにもならなかったので大丈夫です! それなのにお詫びをいただくなんて…」「粗相があった際は、我が家では必ず罰金を支

  • 復讐クエスト   復讐クエスト1 / LV5 勇者ノリミ 10

      「これ書きな。じゃないとケンさんの会社で暴れるよ?」 北都さんは高いヒールで建真の頭を踏みつけ、離婚届を突きつけた。「あの…そ…の状態では、離婚届が書けないと思うのですが……」 北都さんに航大さんが冷静に突っ込んでいた。なかなかユニークなパーティーメンバーだと思う。  建真は北都さんが怖いらしく、借りてきたネコのように大人しくなり、しくしく泣きながら離婚届にサインをしてハンコを押した。因みに建真が持っているハンコは、金さんが店から用意したもので魔王に1万円で売りつけていた。悪徳商法この上なし! なんでも売っているから

  • 復讐クエスト   復讐クエスト1 / LV5 勇者ノリミ 09

     上牧先生の所で待っていると、憔悴しきった魔王(おっと)が事務所に現れた。ラストバトルだ。私の中で特別な音楽が流れていく。相談室へ通されてボスと対面だ。 まずは敵の攻撃!「離婚はしたくない…紀美を、愛しているんだ。今までの俺はどうかしていた。ほんとうに反省している。許して欲しい」 なにこのポエムみたいな台詞。どの口が言う?「いや無理だから」 建真の謝罪はすべてつっぱねた。いまさら『愛している』とか気持ち悪い。私はメンタルが削られてしまい、5ポイントのダメージを喰らった。「頼むよ。やり

  • 復讐クエスト   復讐クエスト1 / LV5 勇者ノリミ 08

      『まずはこちらをご覧ください』 予め用意したスライドショーを投影するべく、スイッチを入れた瞬間のこと。『~五代建真の不倫クエスト~』という見出しタイトルが流れたので、思わず噴き出しそうになった。…ぷぷっ。不倫クエストだって! 航大さんセンスありすぎ~! さらにラップ調で曲が流れ出した。ここに晴菜やちょっと加工した別の女性と思われるようなアングルの写真も曲と一緒に流れた。ちなみに歌はAIで生成されている。ボーカロイド(ボーカル+アンドロイドの略)がラッパー風に歌っていた。 『俺は五代建真~♪』

  • 復讐クエスト   復讐クエスト1 / LV5 勇者ノリミ 07

     居酒屋の方の大吉はやっぱりお客が全然入っていない。なんでだろう。話をするにはいいんだけれど、潰れないか心配だよ。『大吉』と書かれた法被姿にポニーテールがトレードマークの北都さんは、奥のカウンターから私の姿を見て手を振ってくれた。「北都さん! 動画見ました! もう、胸がすーっとしました!!」「でしょ? ケンが慌てふためく姿、ノリに生で見せたかったわ~」「動画で十分です。ほんとにありがとうございます!!」「いいよ。ノリが幸せになってくれたら、それでいい」「北都さん…惚れます&helli

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status