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Novels by さぶれ

幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

創業百年の老舗洋食店を守るため、一千万円の借金返済に追われた料理人・緑竹伊織に、幼馴染で大成功実業家の三成一矢が「契約結婚」を提案。条件は“俺の専用=嫁になれ”。反発しつつも、昔から彼を想い続けていた伊織は葛藤の末に承諾する。 ――でもこれは、いずれ別れる前提の偽装婚。溺愛されるたびに高鳴る恋心は止められなくて…!?
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Chapter: 最終・旦那様(本物)に愛された嫁(本物)のお話は、大団円を迎えます。 その1
 いよいよ待ちに待った結婚式前日を迎えた。グリーンバンブーは日曜日が定休日なので、日曜日に挙式をすることになっている。前日から式場の近くにある豪華ホテルに宿泊し、全身エステにマッサージ、最終衣装合わせ、さらにはネイルやヘアスタイリングなど、明日に向けて万全の準備を整えることになった。 本来なら今日もグリーンバンブーで忙しく働き、汗まみれになっていたはずだけれど、今日は特別な日。いつもと違う意味で『つるつるピカピカ』になり、最高に幸せな気分を味わっている。定食屋の厨房で汗だくになっているのとは、比べ物にならないくらい別次元だ。 夜は旦那様(本物)とホテルの高級レストランで優雅なディナーを楽しみ、素敵な時間をゆったりと過ごした。バーではシャンパンを少し嗜みながら、ふと甘えたくなって隣に座る一矢の肩にもたれかかった。「もう酔ったのか?」 一矢が優しい口調で尋ねてくる。「ううん。酔ってないよ。ただ、独身最後の夜を噛み締めているの。色々あったなあって、ちょっとしみじみしてただけ」「部屋でゆっくり話すか?」「うん、そうしたいな。一矢に思いっきり甘えたい気分」「うむ、悪くない提案だな」 一矢が照れたように微笑む。普段のビジネス用のスーツ姿も十分カッコいいけれど、今日のフォーマルな装いはそれ以上に素敵だ。 今日は私もプロの手でドレスアップしているから、一矢の横に並んでも違和感がないことが嬉しい。この前グリーンバンブーで感じた切なさとはまったく違う。この差を思い出すと少し胸が痛むけれど、今夜は深く考えるのをやめておこう。 部屋はホテルの最上階にある、贅の限りを尽くしたロイヤルデラックススウィートルームだ。こんな部屋に泊まれる日が来るなんて、夢にも思わなかった。しかも、愛する人と二人きりなんて、まるで夢のよう。 部屋に入った途端、一矢が私をそっと抱き寄せる。「今日の伊織は本当に綺麗だ。私のために美しくなってくれたのなら、これ以上嬉しいことはないな」 甘く優しい囁きが耳元に響き、体がぞくぞくと震える。極上のエステやマッサージで磨かれ、文字通りつるつるピカピカになった私を、旦那様(本物)はこのまま愛でるつもりらしい。「ちょっと、お喋りは……?」 照れ隠しに軽く抵抗してみる。「愛を囁きながらでも、会話くらいはできるさ」「きゃっ」 力強い腕に優しく抱きか
Последнее обновление: 2025-07-31
Chapter: 14.旦那様(本物に昇格!)の溺愛はどう見ても本物で、全く止まる気配がございません! その7
「えー、美緒はミチ君のことが好きなんだぁー」 女子トークにお母さんがニコニコと嬉しそうに割って入ってきた。ていうか、道弘だからミチ君って……。そのあだ名、中松とまったく結びつかなくて、思わず吹き出しそうになっちゃった。「ほんとカッコイイよねえー。イチ君もミチ君も、まるで映画スターみたい」「俺のことも忘れないでくれよ、美佐江(ハニー)」 お父さんがどこからともなく耳ざとくお母さんの声を聞きつけ、嬉々として割り込んできた。「ん、もう。私が一番好きなのは、パパ(ダーリン)だけに決まってるじゃない」 うわー、始まっちゃったよ。この二人、本当にいつまで経ってもラブラブで困っちゃう。「ちょっと、まだお客さんいるんだから、奥でやってよね。片付けは私がやっておくから」 私は慌てて裏口から二階へ行くよう促し、二人を店内から追い出した。「二人は相変わらずだな。何とも羨ましい光景だよ」 定食を食べ終え、一矢が微笑みながらカウンターの方へやってきた。先ほどの光景を楽しげに眺めていたらしく、優しく目を細めている。「恥ずかし過ぎるわよ。所かまわずいちゃついてさ」「私もあのくらい仲睦まじくいたいと思うが、いけないだろうか?」「いや、嬉しいけど、ここではちょっと……。まだお客様もいるし、私だってこんな恰好だしさ……」 緑色のグリーンバンブーのロゴが入ったエプロンに三角巾を巻いた超庶民的な格好の私と、ブリオーニの完璧なスーツを着こなした旦那様(本物)との並びなんて、まるで格差恋愛ドラマのワンシーンみたいで切なくなっちゃうじゃない。 そんな複雑な心境で嬉しさを噛み締めていると、一矢の隣にいた中松が美緒に向かって声をかけていた。「美緒様、先ほどのサービスのハンバーグ、とても美味しかったです。ありがとうございました」「あ、はい! 喜んでいただけて何よりです!」 あーあー、二人とも猫かぶり状態だわね。あ、中松の場合は羊かしら。「伊織様から伺いましたが、付け合わせのレタスも大変美味しかったですよ。美緒様がご自身でお育てになったとか?」「はい!有機野菜を育てていて、お店で提供できるように頑張っています」「素晴らしいですね。もし余裕がありましたら、ぜひ三成家の食卓にも提供していただけませんか」「は、はい!!」「可能なら、先日お伝えした連絡先にぜひお知らせください。私
Последнее обновление: 2025-07-30
Chapter: 14.旦那様(本物に昇格!)の溺愛はどう見ても本物で、全く止まる気配がございません! その6
 ふおおああー。入口が神々しいイケメンの二人で完全に塞がってしまったああー。 私は今、揚場のサポートに立っているから、真正面から入口の様子がよく見えてしまうの! しかもこの角度、絶景すぎる! やああーん、旦那様(本物)カッコイイ! 神! 大好きいいー。 特にスーツ姿の一矢って、本当に反則レベルのカッコよさなのよおおー。鼻血が出そう……どころか、もう既に鼻が熱い。「頑張っているな」 一矢が穏やかな表情でカウンターの方へ歩み寄ってきた。やああーん、旦那様ぁ(本物)。家でも毎日顔を合わせているのに、実家で仕事中に会えるのも特別な感じがして、ときめいちゃう。「今日はね、ギンさんが初孫誕生で急遽お祝いに駆け付けて休みを取ったのよ。そのせいでバタバタしちゃってるけど、揚場のサポートを頑張っている私を褒めてほしいくらいだわ!」 一矢は柔らかく笑みを浮かべ、少し考える素振りを見せた後、「うむ、では伊織にクリームコロッケを揚げてもらおうか。いつも弁当で食べるコロッケも十分美味しいが、せっかくだから揚げたてを楽しませてもらうぞ。どうだ、腕前を披露してもらえるか?」「あ、う、うん。もちろんできる! やらせて! この間から特製ソースを仕込んでいるのも私なの。絶対に美味しいから期待してね!」「それは楽しみだな。中松はどうする?」「では私は、ビフカツをお願いします」 ひゃー、なかなか難易度の高いオーダーが来ちゃったわ。ビーフカツレツをレアで揚げるのは、クリームコロッケと同じくらい繊細な火加減が求められるのよ。  きっと、中松は私の調理の腕を試すために、あえてこのメニューを頼んだのね。だって、本来中松がお弁当で一番好きなのは、てりやきハンバーグなんだから。絶対てりやきハンバーグ定食だと思っていたのに。 一矢から聞いた情報だと、変化がないと言われても、中松は毎回てりやきハンバーグの時に一番喜ぶってことだから間違いない。 よーし、サービスしちゃお。中松の好きなハンバーグをミニサイズでおまけにつけてあげよう。絶対喜んでくれるわ。美緒に届けてもらおう。 二人はカウンターからよく見える一番テーブルに腰を下ろした。周囲のテーブルに座っている女性客が何度もちらちらと二人のことを見ているのがわかる。そりゃそうよねえ。スーツがびしっと決まったイケメンが定食屋に並んで座っているん
Последнее обновление: 2025-07-29
Chapter: 14.旦那様(本物に昇格!)の溺愛はどう見ても本物で、全く止まる気配がございません! その5
「わかった。休めないなら私がお前に会いに行く。グリーンバンブーへ食事に行く」「特別扱いはしないからね。忙しいし、ちゃんと行列に並んでくれる?」「構わん。我が妻(本物)の姿を見に行くのだから、苦にはならん。中松も付き添わせる」 どこまで中松を連れて歩くのよー! でも、中松も一緒にグリーンバンブーに来てくれたら、美緒が喜ぶかも!「うん。じゃあ、待っているね、旦那様(本物)」 やああーん。 やっぱり本物って堂々と言えるのが嬉しいー! 婚約している身だけれど、できれば早く正式に結婚したいー。 来週には式を挙げて入籍もするの。いよいよ『緑竹伊織』から、『三成伊織』になるのよ。 前日からホテルも予約してあるし、エステも予約して貰っている。最高のコンディションで、一矢の本当のお嫁さんになれるなんて、夢みたいだ。「伊織。行ってらっしゃいのキスを忘れているぞ」「中松が見ているわよ」「気にするな。見せつけてやればいい」 強引に腕を取られ、しっかり唇を重ねた後、「それで行ってくる」と、一矢がキリッとしたかっこいい顔で微笑み、手を振った。 ああっ。私の旦那様(本物)は、世界一カッコイイ! 旦那様(本物)を見送り、グリーンバンブーへ出勤して働いた。実家に出勤するってなんか変な感じだけどね。最近は焼き場だけじゃなくて、揚げ場にも少し立たせてもらえるようになった。まだまだサポートという形だけれど、初めてとんかつ定食を作らせて貰った時は緊張したなぁ。常連様が「美味しいよ」って声を掛けてくれた日は、嬉しくて一矢に早速報告したの! 一生懸命話をする私に、うんうん、と嬉しそうに相槌を打ってくれた後、「ご褒美だ」と言ってまた溺愛されたりして……。 最近はコロッケを揚げるのに挑戦している。クリームコロッケは火加減を間違えると中のクリームがすぐ爆発したり、焦げたりするから厄介だ。だからとても難しい。 今日はギンさんがいないから、焼き場をしながら揚げ場――お父さんのサポートをする。琥太郎が洗い場兼焼き場で、お母さんと美緒がホール。「いらっしゃいませ」 美緒の威勢のいい元気な声じゃなくて、女らしく嬉しそうな声がホールの入り口の方から聞こえてきた。現在ディナータイムの七時二十分。ラストオーダー十分前だ。グリーンバンブーは午後八時閉店だから、ラストオーダーは七時半に取る。洋食屋
Последнее обновление: 2025-07-28
Chapter: 14.旦那様(本物に昇格!)の溺愛はどう見ても本物で、全く止まる気配がございません! その4
「だったら、接待受けなきゃ実家帰るって一矢に言った方がいいかな?」「別にそこまでしなくていい。俺がなんとかする。一矢様もようやくお前を手に入れたんだ。手放したくなくて、一緒にいたくてしょうがないんだろう。まあ、そこは可愛いじゃないか」 中松が微笑んだ。その表情には一矢を見守る温かさがにじんでいて、思わずこちらまで優しい気持ちになってしまった。この人がいてくれるなら、一矢のことは安心だわ。「あの……それより、美緒とはどうなってるの? 最近美緒に聞いてもはぐらかされてばっかりで、全然教えてくれないのよ」「おい、守秘義務って言葉、知らないのか? 俺がお前に応える義務はないだろう」「一応、これでも姉なのよ? 妹が心配じゃない」「姉だからこそ、直接本人に聞いてやれよ。こっちに探りを入れても何も出ないぞ」 中松がにやっと悪戯っぽく笑いながら顔を覗き込んできたので、思わずパニックになってしまった。「はやああー!」 思わず変な声をあげてしまった私を見て、一矢がむすっとした表情で現れた。「一体何を騒いでいるのだ。ところで中松、食事の用意はどうなっている?」「もうとっくに出来上がっておりますが」「……フン」 なにそれ、『フン』って。まるで子供が拗ねているみたいで可愛すぎるんだけど!「伊織、なにを笑っているのだ。ほら、行くぞ」「はぁい、旦那様♡(本物)」 私は一矢の腕を取って楽しげに腕を絡ませた。一矢は一瞬驚いたような顔をしたけれど、すぐに嬉しそうにはにかみながら、私の腕をしっかりと掴んでくれた。 それからゆっくりと二人で朝食を済ませ、身支度を整えると、あっという間にお見送りの時間になってしまう。「行ってらっしゃい、旦那様(本物)!」 今までは『ニセ』って付けていたけれど、正式に婚約して、本物の夫婦としての関係を持ったから、堂々と『本物』と呼べることがとても嬉しい! ちょっと照れるけど、それ以上に幸せな気持ちでいっぱいだ。「ああ、仕事が終わったらすぐに帰るから。いい子にして待っているんだぞ」「今日はグリーンバンブー、遅番まであるの」「休めばいいだろう」 一矢が途端に不機嫌な表情で言った。その子供じみた口調に、思わず笑いがこみ上げてしまう。「今日は無理よ。ギンさんがお休みだから人手が足りないの」「なら、伊織の代わりに中松を行かせればいいだ
Последнее обновление: 2025-07-27
Chapter: 14.旦那様(本物に昇格!)の溺愛はどう見ても本物で、全く止まる気配がございません! その3
「お前も美緒とヨロシクしたいだろう。今日から暇をやるから、美緒に会いに行けばどうだ?」「おや。一矢様、本当によろしいのですか?」「ああ、構わん。中松の代わりは他の誰かにさせる。お前も羽を伸ばして来い」「引継ぎも無しで、本当にお困りになりませんね?」「ちょっと待ったぁ――!」 大急ぎで着替えた私は、下着姿のままの一矢と朝からビシっとスーツで決めている中松の間に割って入った。「一矢がわけの分からないことを言ってごめんなさい。中松がいないと困るの。暇は取らないでね?」 ごめん、美緒。中松が休みを取ったら、この屋敷は絶対に回らなくなる。 というか、一矢を律する人がいなくなったら、三成家が潰れちゃう!「伊織様がそうおっしゃるなら」中松が静かに笑った。相変わらず目は全く笑っていない。「一矢ったら、最近よくサボろうとするの。全力で見張っておいてね、中松」「仰せのままに」 中松が私に恭しく一礼してくれた。「こら、中松の主人は私だぞ」一矢が文句をつける。「嫁だって同じことよ。中松は私にも主従関係を結んでくれたわよね?」「おっしゃる通りでございます。ただ、お暇を頂けるというお話、こちらとしては大変光栄ですが」「だめよ、だめだめ! 三成家が本当に潰れちゃうから!」「そうですね。私もそう思いますよ」中松がまた相変わらずの笑顔で言った。「伊織様と婚約をされてからの一矢様は、それはもう仕事に身が入らず、困った主人に成り下がっておられますので、この辺りでお灸を据えようかと思っておりました」 わあー。中松のお灸、キツそう! それはちょっと見てみたいけど、今日は私が。「一矢」 中松の言葉を聞いて、私はニッコリ笑って言い放った。「今度仕事を疎かにするような発言をしたら、今後一切、私に指一本触れさせないからね! グリーンバンブー(実家)に帰らせていただきますわよっ!!」 ピシャーンと、雷を一発落としてやった。「さっさと着替えてらっしゃい!」 下着姿のままの一矢を寝室に押し込み、乱暴に扉を閉めた。 その様子を見ていた中松が、くくく、と小さく笑いを漏らした。あ、これ、素だ。「中松」「なんだよ」 わっ。羊なし松だ。素だ、完全に素の中松だ。「仕事中の一矢って、そんなに酷いの?」気になってちょっと聞いてみた。「いいや、ちょっと腑抜け具合はあるけど、ま
Последнее обновление: 2025-07-26
【完結】婚活アプリで始まる危険な恋 ~シンデレラは謎深き王に溺愛される~

【完結】婚活アプリで始まる危険な恋 ~シンデレラは謎深き王に溺愛される~

29歳の幼稚園教諭・眞子は、出会いのない毎日に焦りを感じていた。最後の独身友人も婚活アプリで結婚が決まり、眞子も半ば強引にアプリに登録されてしまう。やり取りを始めた4人の男性の中で、眞子の心を動かしたのは、どこか謎めいた魅力を持つ彼。モンスターペアレントに心が折れそうな中、優しく寄り添う彼に眞子は惹かれていく。しかし、彼には思いもよらぬ秘密が隠されていて――。 婚活アプリから、危険な恋が始まる予感。
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Chapter: エピローグ その3
「わかったわ、玄介さん! 中身は『シンデレラのガラスの靴』ね!」「きゃー。まこちゃん、せいかーい!」 パチパチと茉莉恵ちゃんが拍手をしてくれた。「さすが、クイズに強いだけあるな。その通りだ」 玄介さんが鋭い瞳を解き、微笑んでくれた。「では正解者の眞子、ガラスの靴を受け取ってくれないか」「あ、ありがとう。じゃあ、遠慮なく」 私は玄介さんがプレゼントしてくれた紙袋を受け取った。これは恐らく、茉莉恵ちゃんにプレゼントしたシンデレラのガラスの靴のお礼にと、大きなものを用意してくれたのだろう。こんなに大きなものでなくても良かったのに。でも、玄さんの気持ちが嬉しかった。「気に入らないかもしれないから、この場で開けて見て欲しい」「え? ここで?」「うん。あけて、あけてー!」 茉莉恵ちゃんは尚も期待の視線を向けてくる。あ、そうか。茉莉恵ちゃんを助けたお礼にプレゼントしてくれたものだから、きっと茉莉恵ちゃんも一緒に選んでくれたんだ。子供って、自分があげたプレゼントへの喜びの感想を期待するから、貰ったプレゼントはその場で開ける事を切望する子が多い。「ありがとう。じゃあ、遠慮なく開けるね」 綺麗な黒いマットな紙袋の中に丁寧にラッピングされたボックスがひとつ入っている。リボンを解き、ボックスの中を開けると、更に透明のボックスに収められた、婦人用のSサイズくらいの大きさのガラスの靴が見えた。ガラスのハイヒールパンプスだ。 そのガラスの靴の先端部分はブリザーブドフラワーになっていて、ピンクの大きな薔薇が複数収められていて、雫に見立てた小さな宝石と共に輝いていた。 そしてその薔薇の中央に、ひときわ輝くものがあった。  これは――「うそ…」 中央の薔薇の上で輝いているもの――それは、プラチナリングにラウンドブリリアントカットされたものが幾重にも散りばめられた、ダイヤモンドの指輪だった。「それは俺の気持ちだ。君が交際をオーケーしてくれたら、渡そうと思
Последнее обновление: 2025-05-24
Chapter: エピローグ その2
  「玄介さん、腐ったパンから離れよう? そういうのじゃないから」「ううむ。眞子の出すクイズはやはり難しいな…」 超初級なんですが!  王様はやっぱりクイズが苦手な模様。  完璧に見える蓮見リゾートホテルの社長も、苦手なものがあったのね。「まこちゃんのクイズ、すごーくむずかしいよぉぉ…」茉莉恵ちゃんが眉毛をはの字にして訴えた。「じゃあ、ヒントを出すね。ヒントは、お料理する時に使うもの。もしくは、茉莉恵ちゃんの目の前にいる動物でも正解。たくさんあるんだよ」「あっ」茉莉恵ちゃんが目を輝かせた。「パンダさんだ――!」「はい、よくできました。正解」「やったあ! パパより先に答えられたよ!」「ふふ。ほんとうだ。茉莉恵ちゃん天才!」 玄介さんは私たちのやり取りを見て、とても悔しそうにしている。  負けず嫌いの男児そのもの。本当に子どもみたい。「こうなったら、眞子にとっておきのクイズを出してやる。まあ、ここでは何だから、帰り際にでも」「そうなんだ。難しいクイズ?」 「それは――」玄介さんは私を見て、不敵な笑いを見せた。「眞子次第だ」    ※ あれからクイズバトルを楽しみ、たくさん動物たちを見て閉園時間までたっぷり楽しんだ。  そろそろ帰らなきゃいけない時間。なんか、名残惜しいな。  今日一日、二人と一緒に過ごして本当に楽しかった。茉莉恵ちゃんはかわいいし、玄介さんは素敵だし。  茉莉恵ちゃんを真ん中にして、玄介さんと一緒に彼女の小さな手を握り、はしゃぎ合った。まるで本当の親子と錯覚してしまうほど濃密な時間を三人で過ごした。私の作ったお弁当を残らず食べてくれて、美味しいってかわいいほっぺにご飯粒付けて言ってくれたのは、とても嬉しかった。「まこちゃん、たのしかったねー!」「ええ。茉莉恵ちゃんのお陰ね。とーっても楽しかった!」「ほんと? よかったあ」
Последнее обновление: 2025-05-24
Chapter: エピローグ その1
 「パパー! はやくぅ――!」  茉莉恵ちゃんが玄介さんを呼んでいる。入園して一番にパンダの見える場所まで走っていき、目を輝かせながら。 玄介さんと想いを通じ合ってから翌日。茉莉恵ちゃんと一緒に動物園に行きたいねと提案したら、あっという間に実現してしまった。彼は私と動物園に行った話を茉莉恵ちゃんにしていたらしく、それを聞いていたものだから、小さな彼女はずっと動物園に来たい、来たい、と言っていたそうだ。「まこちゃんも、はやく、はやくぅ――!」 茉莉恵ちゃんに私のことを紹介してくれたら、『シンデレラのおねえちゃんだ!』と再会を喜ばれた。お互いに顔見知りだったから早急に仲良くなり、茉莉恵ちゃんが『まこちゃん』と呼んでくれるようになった。出会ったときは三歳だった茉莉恵ちゃんは、今では四歳になっていて、おしゃべりもあの頃よりも上手になっていて、元気いっぱいだ。「茉莉恵…早いって」 玄介さんはやや息を切らせながら、一番最後にやって来た。私は毎日園児を追いかけまわしているので、全く平気だけど。「玄介さんが体力無いのよ」「仕事ばかりで運動不足になっているな。よし、また眞子と一緒に運動しようか」 私たちに追いついた玄介さんが、私の腰をぐい、と引き寄せた。「今夜どう?」と耳元で囁いてくる。「もう、玄介さん! 茉莉恵ちゃん見てるよっ」 昨日散々愛されたから、そっちの体力は残ってないよっ。 玄介さんは含み笑いをしている。うっ…そんな顔しても、明日仕事だから無理だってっ。  ひと悶着している間にパンダを見る順番が回って来た。 「うわぁ――、おおきぃ――! ぱんださん、かわいい――ぃ!」  玄介さんに抱き上げられ、茉莉恵ちゃんは大興奮でパンダを見つめる。「そうだ、茉莉恵。眞子先生がクイズを出してくれるぞ」「えっ、クイズ? やるやる――!」 突然ムチャぶりされたけれど、幼稚園で園児たちと毎日のように繰り広げられる『なぞなぞバトル』で鍛えた私。クイズなら任せて!
Последнее обновление: 2025-05-23
Chapter: 第10話・向き合う その10
 待ちわびていた雄々しい欲望が秘所に当てこまれた。早速愛液が絡みつき、ぬめりのある洞窟の奥底へ沈んでゆく。 「ぁあっ、玄介さっ…ぁあぁっ、んあ、ふっ、やあぁっ――…!」  待ち焦がれていた雄槍の侵入に思わず歓喜の声を上げてしまう。体の一番奥の部分が熱を帯びて震える。膣壁はうねって欲を包み込み、締めつける。 「眞子っ…」 やがて律動が始まった。切なげに眉根を寄せ、玄介さんは激しく腰を打ち付けてくる。奥まで突き入れられる度、広い室内に卑猥な水音が響く。 「はぁんっ・・・・・んんっ・・・・・」  抽送のたびに感じる快感がどんどん膨らんでいく。腰が動く度に汗が散り、私の胸が弾む。その様子を見つめる彼の瞳は獣のような熱を持ち始めていた。 「あっ・・・・・んっ・・・・・・玄介さっ・・・・・・・ああっ!」  最奥を突かれるたびに喘ぎ声が止まらない。その声を抑えることすらできないほど感じてしまう。体の深いところが溶けてしまいそうなほどに気持ち良い。 「眞子っ・・・・・愛してる・・・・・」  彼の声は熱い吐息混じりになっていて、脳内から全身へとゾクッとした快感が広がっていく。最中に愛の言葉を囁かれるなんて、ほんとうに夢みたい。 「あっ・・・・・んんっ・・・・・・」  結合部からは愛液が溢れ出し。ぐちゅぐちゅと淫靡な音が響き渡る。 「ぁああっ・・・・玄介さんっ、は、んぁっ、あぁあぁ―ーっ」  甲高く叫ぶと、より一層激しさが増した。中が激しくかき回され、快楽の波に押し流される。彼から必死に求められることが、なによりも嬉しい。言葉からも、体からも、彼の愛を感じた。  いつもはもっとゆったりとした攻めで、こんなに激しいことは無い。じっくり堪能してくれるのに、性急に昇りつめようとしている。  離れていた時間を急いで埋めるかのように、玄介さんからの余裕が一切感じられなかった。  まるで飢えた獣のように、私の体を貪り尽くそうと暴れまわる。  交わすキスさえも激しく、胸のふくらみに及ぶ攻撃も、普段のも
Последнее обновление: 2025-05-23
Chapter: 第10話・向き合う その9
 恋愛は自由なのだと常に思っていた。  でも、そうではなかった。  実は沢山のしがらみに包まれていて不自由であり、添い遂げるとなればその苦難は尚の事。  それでも一緒に居たいと思える相手かどうかを考えた時、困難を乗り越えてでも傍にいたい、玄介さんの隣にいたい、と素直に思った。「あっ……んんっ……ふぅ……」 彼の名前を呼ぶたびに私の心は満たされていき、この瞬間が永遠に続けばいいのにと思う。この気持ちを伝えることが出来るのなら、私はどんな困難だって乗り越えられる気がした。「玄介さん……玄介さん……!」 彼を求める想いが強くなればなる程に身体の奥底が熱を帯びて疼く。それに伴い鼓動も早まっていく。  玄介さんの手が下肢へと伸びてきて私の秘部へと触れる。  指先で撫でられてびくりと身を震わせながらも拒むことは無く、むしろもっと触れて欲しいという欲望を抱いてしまっている自分に困惑してしまう。「眞子……俺は君の全てが欲しい」  彼の言葉に頷くと同時に彼は私の両足を割り開く。そして中心に顔を埋めて舌を這わせてきた。その途端に電流のような快感が駆け抜けた。「やっ……んっ……はぁ……」 敏感な突起を舐められ吸われて甘噛みされる度に快楽が押し寄せてくる。思わず声が漏れてしまい慌てて口元を押さえた。「我慢しないで声出して」 低い声で囁かれればそれだけでゾクゾクとしてしまう。恥ずかしさと快感が入り混じった複雑な感情が押し寄せてくるものの拒むことも出来ずに、ただ彼の愛撫を受け入れるしかなかった。  秘部の上を何度も往復させながら舐め続けているうちに蜜が溢れ出し彼の舌によって掻き出されていく。その度に甘美な刺激に襲われて意識が飛びそうになる。「んっ……はぁ……あっ……んっ……」 舌先で転がされて擦り付けられて吸い付かれると堪らず声を上げてしまった。あまりの気持ち良さに腰が揺れてしまうのを抑えられない「気持ちいい?」「ん……気持ち……いい……」 喘ぐように答えると更に攻め立てるよ
Последнее обновление: 2025-05-22
Chapter: 第10話・向き合う その8
 「ふっ、ああっ、玄介さんっ、ぁあぁっ」 彼は私の反応を見ようと、鋭い視線をぶつけてくる。ぞくりと背筋が粟立ち、腰が浮いてしまう。 恥ずかしくて顔を逸らしたくなるのを堪えて見つめ返すと、彼は満足そうに目を細めた。――ああ、やっぱりこの人だ。 確信する。私が好きなのは、彼。触れ合いたいのも、彼。 何時の間にこんなにも深く玄介さんを好きになり、私の中で大きな存在へ形を変えていたのだろう? 蓮見リゾートホテルの社長だから好きになったんじゃない。彼が何者であったとしても『玄さん』と過ごす時間が、今の気持ちを作り上げたのだ。 彼の正体を知っていたら、恋に落ちる事は無かっただろうけど。 婚活アプリで素性不明だったからこそ、繋がった不思議な縁。「眞子」 余裕を失った玄介さんが、必死に私を求めて雄になる。――玄介さんも、私と同じ。 そう思うと不思議なほどに気持ちが楽になる。そこには身分差も何もなく、ただ一人の男と女が惹かれあうだけの、純粋な気持ちだけが存在しているのだ。今はその中で、彼を好きだと素直に伝えよう。 私は彼の背中に手を回して強く抱きしめた。すると玄介さんもまた、同じように返してくれる。 暫くそうしていると、玄介さんの手が私の胸を包み込むように触れてきた。その感触に驚いて思わず体を離そうとしても、彼はそれを許さない。 まるで宝物でも扱うかのような優しい手つきで、両胸を揉みしだかれていく。その感覚があまりに官能的で、甘美な吐息を漏らしながら身を捩った。 気付けば玄介さんの顔が間近にあり、そのまま唇を奪われる。舌を差し入れられて絡め取られると、脳髄が刺激されて何も考えられなくなる。 彼の手の動きに合わせて次第に体が熱を帯びてくる。自然と息が上がり、艶のある吐息が漏れてしまう。恥ずかしいのに止められない。「眞子……」 玄介さんが私の名を呼んだ声は、低くかすれていた。熱を
Последнее обновление: 2025-05-22
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