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Novels by さぶれ-SABURE-

幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

創業百年の老舗洋食店を守るため、一千万円の借金返済に追われた料理人・緑竹伊織に、幼馴染で大成功実業家の三成一矢が「契約結婚」を提案。条件は“俺の専用=嫁になれ”。反発しつつも、昔から彼を想い続けていた伊織は葛藤の末に承諾する。 ――でもこれは、いずれ別れる前提の偽装婚。溺愛されるたびに高鳴る恋心は止められなくて…!?
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Chapter: 最終・旦那様(本物)に愛された嫁(本物)のお話は、大団円を迎えます。 その6
「伊織。どうか、私と結婚してほしい。必ず幸せにする。一生、伊織だけを大切にすると、この場で誓う!」 えっ……なにそれ……。 よく通る低い声が教会中に響き渡った。何百人もの視線が一斉に私たちに注がれる中での、堂々たる公開プロポーズ。 頭が真っ白になったけれど、すぐに思い出した。式場探しの時、二人で見た結婚雑誌。そこには「一生心に残る挙式にするためのサプライズ演出」がいくつも紹介されていて、その一つに「入場時に新郎が新婦へ改めてプロポーズし、ゲスト全員に祝福される」というものがあったのだ。 ――あの時、私が「こんな演出、一生忘れられないだろうね、素敵だね」と言ったことを、一矢はちゃんと覚えていてくれたんだ。 「伊織は、絶望しかなかった幼い私の心の支えだった。お前がいたからこそ、私は今日まで生きてこられた。これまでも、そしてこれからも変わらない。伊織……ずっと私の傍で笑っていてくれ。私の幸せのそばには、お前がいなくては始まらない。そして、私を伊織の本当の家族にしてほしい。一平や美佐江を父や母と呼び、美緒や琥太郎、倫太郎、雄太郎、明奈と、本当の兄妹として生きていきたい」  胸が熱くなった。涙がこぼれそうになるのをこらえながら、私ははっきりと答えた。 「はいっ! 私も一生、一矢だけを大切にします。本当の家族になりましょう! ふつつか者ですが、よろしくお願いします!!」  なにも迷うことなんてない。一矢は私のすべてで、ずっと愛し支えたい人。彼と本当の家族になることを、私は心の底から願ってきたのだから。「さあ、愛しき人よ。これより神の前で、一生の愛を誓い合おう」 差し出された手を取る。まだバージンロードを一歩も歩いていないのに、もう一矢が目の前にいて、私に家族になることを皆の前で誓ってくれた。 こんな素敵な演出をしてくれる旦那様に愛されて、私は世界一の幸せ者だ。「一緒に歩きましょう。家族全員で」 一矢とお父さんに両側をエスコートされながら、私はゲスト全員に祝福されてバージンロードを歩く。胸がいっぱいで、何度も涙がこぼれそうになった。  かつて家族に背を向けられ、幼い頃に絶望を知り、どれだけ手を伸ばしても温かな家族の幸せを掴めなかった旦那様――。  これからは一生、私が大切に大切に愛していく。 時には喧嘩もするだろう。それでも、今日という人生の門出
Last Updated: 2025-08-06
Chapter: 最終・旦那様(本物)に愛された嫁(本物)のお話は、大団円を迎えます。 その5
 入念な準備を終え、私はついにバージンロードを歩く瞬間を迎えた。重厚で堂々とした木製の扉の前で、お父さんと並んで待機している。新郎である一矢はすでに祭壇の前に立ち、私が入場するのを静かに待っているはずだ。 今日は特別に中松が選んでくれた、純白のウェディングドレスを身にまとっている。シンプルだけど品があり、何より一矢の好みに完璧にマッチしている。私はそのドレスに相応しい姿勢を心がけて背筋をぴんと伸ばし、まさにこれから開こうとしている新たな未来の扉を前に深呼吸を繰り返した。 一方、隣にいるお父さんのほうが緊張でガチガチになっている。彼は妙な発声練習を何度も繰り返し、ひたすら深呼吸をしている。「い、伊織……あ、あー……う、うー」 何度も口を開けたり閉じたりしながら必死に落ち着こうとしているけれど、効果はあまりないようだ。庶民である私たちが、これほど壮大で厳かな舞台に立つのはやっぱり容易ではない。挙式は有名な大教会で行われるため、参列者は非常に多い。一矢の会社関係者や著名人など、多彩で華やかな顔ぶれが集まっているのだ。新婦側としては親戚や友人も数多く集まっているものの、どうしても新郎側の豪華さには圧倒されてしまう。「と、父さんさ、変じゃないか? ネクタイ曲がってないか?」「もう、大丈夫だって言ってるでしょ?」「そ、そそそそうか。だ、大丈夫か」 あまりにもお父さんが緊張しているので、その背中を勢いよく叩いて励ました。「今日は娘の晴れ舞台なのよ。しっかりしてよ! お父さんでしょ!」「はは、お前は本当にしっかり者だなあ」 私の叱咤が効いたのか、お父さんは苦笑しながら少し緊張が和らいだようだった。「ついこの間、産まれたばかりだと思っていたのに、もう嫁に行くんだもんなぁ……」 お父さんがぽつりと感慨深そうに呟いた。「お父さんにはお母さんがついてるから、娘が一人や二人嫁に行っても、全然平気でしょ?」 少し冗談交じりに言ってみたけれど、お父さんは真剣な顔で私を見つめ返した。「そんなことはないぞ! 伊織がいなくなって、本当に寂しいと思っているんだ」「お父さん……」 驚いた。いつもグリーンバンブーで一緒に働き、何気ない会話を交わしていたから、まったく気づかなかった。お父さんは私が気にしないように、あえて普段通りの振る舞いをしていたんだ……。  気にかけ
Last Updated: 2025-08-05
Chapter: 最終・旦那様(本物)に愛された嫁(本物)のお話は、大団円を迎えます。 その4
 そのすぐ後、スタッフの方が二人もブライズルームに駆けつけ、私を整えるための準備を手早く始めてくれた。すると、そのタイミングを見計らったように美緒が控室に入ってきた。彼女は小さな紙袋を手にして、笑顔で私に歩み寄る。「お姉ちゃん、いよいよイチ君のお嫁さんになるんだね。本当におめでとう!」「ありがとう、美緒。嬉しいわ」「これ、イチ君に頼まれて持ってきたの。お姉ちゃんが朝食を食べ損ねたって聞いたから、グリーンバンブーのおにぎりを食べさせてやってくれって。家族みんなで一生懸命握ってきたよ」「えっ……ウソ…」 驚きながら美緒から包みを受け取り、慎重にお弁当箱を取り出した。すると、お弁当箱の蓋には七枚のメッセージが貼られていることに気付いた。一矢に毎日お弁当を渡す時、いつも励ましの一言を書いていた私に、家族みんなが同じように温かい言葉を寄せてくれたのだ。 『いおちゃん、お幸せにぃ』  一枚目はお母さんからだ。いつも通り軽くて明るいノリのメッセージに、思わず笑みがこぼれる。 『伊織、イチ君と末永く仲良くするんだぞ。父さんと母さんみたいにな』  続いてお父さん。相変わらず家族愛に溢れた温かな言葉だ。 『お姉ちゃん、おめでとう。イチ君と幸せになってね』  美緒のメッセージは優しく、胸がじんわり温かくなる。 『また家に帰って来てください』  倫太郎の素直な言葉。 『元気で!』  雄太郎らしいシンプルだけど心がこもった言葉。 『今度おやしきに遊びに行かせてね』  明奈の可愛らしいお願いに頬が緩む。 『結婚おめでとう。イチとお幸せに!』  最後は琥太郎だ。ちょっとぶっきらぼうで男らしい字に、琥太郎らしい気持ちが溢れている。契約婚のことを最後まで心配して怒っていた彼が、最終的には姉ちゃんが決めたことだからと認めてくれたことが、改めて嬉しい。 家族からの優しさと温かさに胸がいっぱいになり、思わず涙が込み上げてきた。こんなに嬉しい気持ちを味わったら、バージンロードを歩く前に泣き崩れてしまいそうだ。 感動を噛み締めながらお弁当箱を開けると、俵型、丸型、少し形が崩れたもの、楕円型など、家族それぞれが握った七つのおにぎりがぎっしり詰まっている。 「お茶も用意したよ。さあ、召し上がれ!」「ありがとう!いただきます!」  ひと口頬張ると、おにぎりの中からエ
Last Updated: 2025-08-04
Chapter: 最終・旦那様(本物)に愛された嫁(本物)のお話は、大団円を迎えます。 その3
 朝から極上の甘い溺愛に振り回され、私は挙式の準備をするために旦那様(本物)に抱きかかえられ、ようやくブライズルームまで辿り着いた。そのせいで、予定していた朝食を食べ損ねてしまい、なんだか元気が出ない。 私という人間は、しっかりご飯を食べないと力が湧いてこないのよ!「朝から無理をさせてしまって、本当に申し訳ない」 旦那様は珍しく、しゅん太郎のようにしょんぼりして猛省の表情を浮かべている。そりゃあそうよ、私がぐったりして動けなくなるまで溺愛するから……! 黙っていると、私が怒っていると思ったのか、一矢が真剣に頭を下げてきた。「伊織とようやく結ばれることが嬉しくて、つい自制が効かなくなってしまったんだ。ずっと前から触れることを我慢してきたから、感情のタガが外れてしまったようだ。本当にすまない」 そんな風に素直で可愛いことを言われたら、もう許さないわけにはいかない。私だって、愛されるのは嬉しい。ただ、その激しすぎる愛に身体がついていけないだけなのに……そんなことを考えると色々な場面を思い出してしまい、恥ずかしさで顔が赤くなってしまう。「もういいのよ。一矢、今日はたくさんの方々が私たちを祝福しに来てくださる日よ。しっかり気合いを入れて、美しくバージンロードを歩かないと、せっかく中松に厳しく指導されたのに怒られちゃうじゃない」 中松はきっと今日も最後まで私のことを見守ってくれるだろう。彼にとっても一区切りとなるこの日。私たち夫婦の新たな門出を、これからは穏やかに支えてくれるに違いない。だからこそ、今日は絶対に無様な姿を見せられない。「朝食を逃してしまっただろうと思って、握り飯を調達してあるんだ。伊織が一番好きな味だ。もうすぐ届くから、食べて元気を出してほしい」「本当? ありがとう!」 私のお腹がちょうど空いていたから、とても嬉しかった。一矢のこうした気遣いに、改めて胸がじんわりと温かくなる。嬉しさのあまり自然と笑顔がこぼれた。「そういう笑顔を見せるから……」 一矢が耳元で甘く囁いた。「押し倒したくなってしまうんだ」「ひゃっ!」 瞬間的に顔が真っ赤になってしまう私を、一矢はあのエビフライを勝ち取った時の最高に魅力的な笑顔で見つめてくる。 旦那様(本物)のその笑顔、本当にカッコよすぎるのよ! そんなあなたに、私は二十年前からすっかりメロメロな
Last Updated: 2025-08-03
Chapter: 最終・旦那様(本物)に愛された嫁(本物)のお話は、大団円を迎えます。 その2
 「ん……」 甘ったるい声がつい唇から漏れてしまう。明日はいよいよ結婚式なのに、旦那様(本物)の甘い溺愛は今夜も止まらない。明日まで身体が持つかどうか、本気で心配になるほどだ。 一矢の長くて繊細な指が優しく私の胸を包み込み、その弾力を確かめるように揉みほぐす。自分でも小ぶりだと思っていた胸が、彼の指に触れられるたびに熱を帯び、形を変え、敏感に反応してしまう。「はぁ……っ、一矢……」 何度彼に抱かれても、やっぱり全然慣れない。恥ずかしさがいつも私の胸を満たしてしまう。一矢が部屋の明かりを点けたままにしようとするので、私は思わず懇願する。「電気……消して?」「今日の麗しいお前を、この目にしっかり焼き付けておきたいのだが」「だって、恥ずかしいんだもん……や、んっ……」胸の先端に唇が触れ、舌が優しく這う。すぐに身体が熱を持ち、快感に蕩けてしまう。旦那様(本物)の丁寧で繊細な愛撫は、いつだって私をすぐに翻弄する。「ふぅ……ん……っ、あぁ……いち……やぁっ」「可愛いぞ、伊織」低く囁く甘い声が耳元をくすぐり、身体の奥まで響いてくる。「はぁっ……一矢っ……あぁ……」「どうして欲しいのだ?」「ん……も、もう分かってる……くせにっ……」 本当に意地悪な人だ。私がはっきり言葉にするまで、彼はいつも焦らすように触れる。鋭い観察力で私の反応を見極め、的確に私の敏感なところを探り当てるから、私はどんどん追い詰められてしまう。「やぁっ……ん、一矢ぁっ、そこっ……っあ――!」 あっという間に快感の波に飲み込まれ、身体から力が抜けていく。視界が徐々に白く霞み、意識が甘い陶酔の中に溶けてしまいそうだ。「やだぁっ……も、もう……へんになるぅっ……あ、んっ……」「伊織の『いやだ』は、『もっとして』という意味にしか聞こえないな」 彼はあえて私の一番敏感なところを避け、内腿の敏感な部分を焦らすように弄る。「やっ、もうっ……意地悪っ……」 思わず抗議の声が漏れそうになるけれど、素直に求める言葉を言うのがどうしても恥ずかしくて言えない。 だから私は代わりに、とっておきの言葉を彼に伝える。「一矢……大好き」 そっとキスのおねだりをする。彼は満足そうに微笑みながら私に覆いかぶさり、極上の蕩けるような口づけを優しく落としてくれる。そのまま、慈しむように私の身体を丁寧
Last Updated: 2025-08-01
Chapter: 最終・旦那様(本物)に愛された嫁(本物)のお話は、大団円を迎えます。 その1
 いよいよ待ちに待った結婚式前日を迎えた。グリーンバンブーは日曜日が定休日なので、日曜日に挙式をすることになっている。前日から式場の近くにある豪華ホテルに宿泊し、全身エステにマッサージ、最終衣装合わせ、さらにはネイルやヘアスタイリングなど、明日に向けて万全の準備を整えることになった。 本来なら今日もグリーンバンブーで忙しく働き、汗まみれになっていたはずだけれど、今日は特別な日。いつもと違う意味で『つるつるピカピカ』になり、最高に幸せな気分を味わっている。定食屋の厨房で汗だくになっているのとは、比べ物にならないくらい別次元だ。 夜は旦那様(本物)とホテルの高級レストランで優雅なディナーを楽しみ、素敵な時間をゆったりと過ごした。バーではシャンパンを少し嗜みながら、ふと甘えたくなって隣に座る一矢の肩にもたれかかった。「もう酔ったのか?」 一矢が優しい口調で尋ねてくる。「ううん。酔ってないよ。ただ、独身最後の夜を噛み締めているの。色々あったなあって、ちょっとしみじみしてただけ」「部屋でゆっくり話すか?」「うん、そうしたいな。一矢に思いっきり甘えたい気分」「うむ、悪くない提案だな」 一矢が照れたように微笑む。普段のビジネス用のスーツ姿も十分カッコいいけれど、今日のフォーマルな装いはそれ以上に素敵だ。 今日は私もプロの手でドレスアップしているから、一矢の横に並んでも違和感がないことが嬉しい。この前グリーンバンブーで感じた切なさとはまったく違う。この差を思い出すと少し胸が痛むけれど、今夜は深く考えるのをやめておこう。 部屋はホテルの最上階にある、贅の限りを尽くしたロイヤルデラックススウィートルームだ。こんな部屋に泊まれる日が来るなんて、夢にも思わなかった。しかも、愛する人と二人きりなんて、まるで夢のよう。 部屋に入った途端、一矢が私をそっと抱き寄せる。「今日の伊織は本当に綺麗だ。私のために美しくなってくれたのなら、これ以上嬉しいことはないな」 甘く優しい囁きが耳元に響き、体がぞくぞくと震える。極上のエステやマッサージで磨かれ、文字通りつるつるピカピカになった私を、旦那様(本物)はこのまま愛でるつもりらしい。「ちょっと、お喋りは……?」 照れ隠しに軽く抵抗してみる。「愛を囁きながらでも、会話くらいはできるさ」「きゃっ」 力強い腕に優しく抱きか
Last Updated: 2025-07-31
捨てられ妻となったので『偽装結婚』始めましたが、なぜか契約夫に溺愛されています!

捨てられ妻となったので『偽装結婚』始めましたが、なぜか契約夫に溺愛されています!

※毎朝7時更新※ 離婚直後、心も財布もボロボロのOL・中原ひかりは、冷徹で完璧主義な上司・御門蓮司から「形式だけの契約結婚」を持ちかけられる。 「俺と結婚してほしい。契約期間は1年、報酬は1,000万円」 蓮司の目的は会長命令で無理やり進められた政略結婚を回避するための“偽装婚”だった。 夫の借金を返すため、貯金を使い果たしたひかりは現在、無一文。 背に腹は代えられず、契約の条件に「恋愛関係は禁止」「プライベート干渉ナシ」と付け加え、冷静に“契約結婚”を受け入れる。 いざ新婚生活が始まると冷徹無表情だった彼が少しずつ“夫の顔”を見せ始める。そこに蓮司の婚約者を名乗る女や、ひかりの元夫までもが登場し、波乱が訪れて――?
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Chapter: 127
 白のタキシードが驚くほど似合っていた。  背筋を伸ばし、凛とした男らしさを纏いながらも、その瞳だけは私へ向けるときだけ見せる甘さを帯びている。 歩み寄るほど、蓮司の視線が私をすべて受け止めるように優しく細まり——  ついには、息を呑むような小さな声音で囁いた。「……ひかり。綺麗すぎる」「蓮司こそ……格好良すぎ」 伸ばされた手に、自分の手をそっと重ねる。  触れた瞬間、ひんやりとした指輪が指先を撫で、半年間の出来事が胸の奥で光に変わった。「式を始めます」 司祭の声がしんと響く。  参列席には、私たちの人生で出会ったすべての人の笑顔。  だけど
Last Updated: 2025-12-04
Chapter: 126
 半年後。  柔らかな日差しが降り注ぐチャペルのステンドグラスが、虹色の光を床に散らしていた。 季節が変わる間に、私と蓮司の関係も、ぐっと深く濃く変わった。  新居での生活にもすっかり慣れ、毎日の朝食や夕食を一緒に食べるのはもう当たり前になった。 そして今日——  偽装婚として始まった関係は、本物として永遠の形になる。 「準備はよろしいですか?」  ドレススタッフの声に振り向く。  鏡の中には、少し照れたように微笑む花嫁が映っていた。純白のドレスは身体にぴたりと馴染み、胸元のレースが静かに揺れている。 その姿を見たお母さまが、目元を指先でそっと押さえた。私のお母さんとも打ち明け、2人は仲良くなってしまった。そして師匠も駆けつけてくれた。私には3人もお母さんがいる。最高に幸せだ。「……ひかりさん。とても綺麗よ」 「ほんと……」 「素敵な人と再婚できてよかったわねぇ……」  母は口々に歓びの言葉を口にする。ありがたい。心配してくれていたもんね。「ひかりさん。あなたのおかげで蓮司は変わったわ。それに御門家も。古風で凝り固ま
Last Updated: 2025-12-03
Chapter: 125
「おろすぞ。ゆっくりな」 蓮司がキッチンの椅子に私をそっと降ろす。  まるで壊れ物でも扱うみたいに優しい動作で、胸がじんと温かくなる。「蓮司……そんなに気を遣わなくていいのに」「無理だ。今のお前をひとりで歩かせる方が不安だ」「……昨夜の原因の半分は蓮司だからね?」「半分じゃない。九割九分九厘俺だよ」「自覚あるんだ……!」「あるとも。だから今日は俺が全部やる」 そう宣言すると、蓮司はトースターの前に立った。  寝癖が少し残っている後ろ姿なのに、妙に格好良くてずるい。「はい、本日の朝食は——俺特製の押すだけトーストです」「名前ひどすぎない? せめて『御門家のモーニング』とか言ってよ」
Last Updated: 2025-12-02
Chapter: 124
 感情溢れた蓮司に抱きしめられ、ぐっと奥まで入ってこられた。  肉を打つ音が寝室に卑猥に響き、甘い声が抑えられない。 互いの名を呼び合い、愛を交わし、蕩けていく。「蓮司」 「ひかり」  大好きな旦那様の剛直に貫かれる。  肌を重ねることが、こんなに愛しくて切なくて幸せだと感じたことがなった。  夫の名を呼び、ぎゅっと手を握りしめてふたりで果てる。 なんども絡み合い、ふたりで乱れ、蕩ける夜を過ごした。 翌朝。朝の光がやわらかく差し込み、枕元の空気を金色に照らしていた。  昨夜の余韻がまだ身体の奥に静かに残っていて、動くたびにじんわりと温かさが広がる。 隣を見ると蓮司が薄く笑っていた。 寝起きの癖に、妙に余裕のある顔をしている。「おはよう、ひかり」「ん……おはよう。なんでそんな見てるの?」「いや。可愛いなと思って」「朝からハードル高い言葉やめてよ」 冷徹男だとばかり思っていたのに、激甘男の間違いだった。「事実だから仕方ない」 さらっと言って、私の頬に指を沿わせる。  その優しい触れ方だけで、胸がぎ
Last Updated: 2025-12-01
Chapter: 123
「ンっ……」 甘い声が鼻から抜けていく。蓮司に優しく体に触れられ、息が乱れていく。 期待を込めて顔を上げると、彼の瞳には、私がしっかりと映っている。  私も同じ。蓮司が映っている。「これから先、どこへ帰ってもいいけど──」 頬に指を沿わせ、蓮司は優しく囁く。「最後に帰る場所は、必ず俺の隣にしてくれ」 胸がぎゅっと締めつけられ、涙が零れそうになる。「うん。約束する」「じゃあ──今日も新婚の夜を楽しもうか」「お手柔らかにお願いします」 腕を絡めてキスを交わす。唾液が絡まり、2人の舌がもつれる。  大きな腕が包み込み、鼓動が耳元で一定のリズムを刻む。  優しくて、温かくて──もう、離れたくなかった。「ひかり」
Last Updated: 2025-11-30
Chapter: 122
 実家でのドタバタ楽しい食事タイムを終え、お母さまとシリウスに惜しまれつつもマンションに戻った。泊っていけばいいのに、としきりにい言われたけれども、蓮司がひとこと。『俺たち新婚なんだから邪魔しないでくれよ』なんて言っちゃったものだから!! お母さまに生温かい目で見られた挙句、うふふ、と微笑まれてしまったのよぉぉっ!!  なんてことッ!! 恥ずかしすぎるっ!!!! 鍵を開けると、静かな部屋が迎えてくれる。  見慣れたはずのリビング。もうここが私の家なんだ。信じられない気持ちがまだあるけれど、でも、ここにいてもいいんだ……。胸が熱くなった。「さ。邪魔者はいなくなったし、2人でイチャイチャしますか」蓮司が私を抱きしめる。 「さっきのアレ、お母さまに変な目で見られたじゃない。蓮司があんなこと言うから……」「好きな女性と暮らしていたのに、手を出さなかった俺を褒めて欲しいくらいだ」 「もう……」  キスが降ってくる。「待って、お風呂……入らなきゃ……」「どうせ汚れる」 言い方っ!!
Last Updated: 2025-11-29
【完結】婚活アプリで始まる危険な恋 ~シンデレラは謎深き王に溺愛される~

【完結】婚活アプリで始まる危険な恋 ~シンデレラは謎深き王に溺愛される~

29歳の幼稚園教諭・眞子は、出会いのない毎日に焦りを感じていた。最後の独身友人も婚活アプリで結婚が決まり、眞子も半ば強引にアプリに登録されてしまう。やり取りを始めた4人の男性の中で、眞子の心を動かしたのは、どこか謎めいた魅力を持つ彼。モンスターペアレントに心が折れそうな中、優しく寄り添う彼に眞子は惹かれていく。しかし、彼には思いもよらぬ秘密が隠されていて――。 婚活アプリから、危険な恋が始まる予感。
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Chapter: エピローグ その3
「わかったわ、玄介さん! 中身は『シンデレラのガラスの靴』ね!」「きゃー。まこちゃん、せいかーい!」 パチパチと茉莉恵ちゃんが拍手をしてくれた。「さすが、クイズに強いだけあるな。その通りだ」 玄介さんが鋭い瞳を解き、微笑んでくれた。「では正解者の眞子、ガラスの靴を受け取ってくれないか」「あ、ありがとう。じゃあ、遠慮なく」 私は玄介さんがプレゼントしてくれた紙袋を受け取った。これは恐らく、茉莉恵ちゃんにプレゼントしたシンデレラのガラスの靴のお礼にと、大きなものを用意してくれたのだろう。こんなに大きなものでなくても良かったのに。でも、玄さんの気持ちが嬉しかった。「気に入らないかもしれないから、この場で開けて見て欲しい」「え? ここで?」「うん。あけて、あけてー!」 茉莉恵ちゃんは尚も期待の視線を向けてくる。あ、そうか。茉莉恵ちゃんを助けたお礼にプレゼントしてくれたものだから、きっと茉莉恵ちゃんも一緒に選んでくれたんだ。子供って、自分があげたプレゼントへの喜びの感想を期待するから、貰ったプレゼントはその場で開ける事を切望する子が多い。「ありがとう。じゃあ、遠慮なく開けるね」 綺麗な黒いマットな紙袋の中に丁寧にラッピングされたボックスがひとつ入っている。リボンを解き、ボックスの中を開けると、更に透明のボックスに収められた、婦人用のSサイズくらいの大きさのガラスの靴が見えた。ガラスのハイヒールパンプスだ。 そのガラスの靴の先端部分はブリザーブドフラワーになっていて、ピンクの大きな薔薇が複数収められていて、雫に見立てた小さな宝石と共に輝いていた。 そしてその薔薇の中央に、ひときわ輝くものがあった。  これは――「うそ…」 中央の薔薇の上で輝いているもの――それは、プラチナリングにラウンドブリリアントカットされたものが幾重にも散りばめられた、ダイヤモンドの指輪だった。「それは俺の気持ちだ。君が交際をオーケーしてくれたら、渡そうと思
Last Updated: 2025-05-24
Chapter: エピローグ その2
  「玄介さん、腐ったパンから離れよう? そういうのじゃないから」「ううむ。眞子の出すクイズはやはり難しいな…」 超初級なんですが!  王様はやっぱりクイズが苦手な模様。  完璧に見える蓮見リゾートホテルの社長も、苦手なものがあったのね。「まこちゃんのクイズ、すごーくむずかしいよぉぉ…」茉莉恵ちゃんが眉毛をはの字にして訴えた。「じゃあ、ヒントを出すね。ヒントは、お料理する時に使うもの。もしくは、茉莉恵ちゃんの目の前にいる動物でも正解。たくさんあるんだよ」「あっ」茉莉恵ちゃんが目を輝かせた。「パンダさんだ――!」「はい、よくできました。正解」「やったあ! パパより先に答えられたよ!」「ふふ。ほんとうだ。茉莉恵ちゃん天才!」 玄介さんは私たちのやり取りを見て、とても悔しそうにしている。  負けず嫌いの男児そのもの。本当に子どもみたい。「こうなったら、眞子にとっておきのクイズを出してやる。まあ、ここでは何だから、帰り際にでも」「そうなんだ。難しいクイズ?」 「それは――」玄介さんは私を見て、不敵な笑いを見せた。「眞子次第だ」    ※ あれからクイズバトルを楽しみ、たくさん動物たちを見て閉園時間までたっぷり楽しんだ。  そろそろ帰らなきゃいけない時間。なんか、名残惜しいな。  今日一日、二人と一緒に過ごして本当に楽しかった。茉莉恵ちゃんはかわいいし、玄介さんは素敵だし。  茉莉恵ちゃんを真ん中にして、玄介さんと一緒に彼女の小さな手を握り、はしゃぎ合った。まるで本当の親子と錯覚してしまうほど濃密な時間を三人で過ごした。私の作ったお弁当を残らず食べてくれて、美味しいってかわいいほっぺにご飯粒付けて言ってくれたのは、とても嬉しかった。「まこちゃん、たのしかったねー!」「ええ。茉莉恵ちゃんのお陰ね。とーっても楽しかった!」「ほんと? よかったあ」
Last Updated: 2025-05-24
Chapter: エピローグ その1
 「パパー! はやくぅ――!」  茉莉恵ちゃんが玄介さんを呼んでいる。入園して一番にパンダの見える場所まで走っていき、目を輝かせながら。 玄介さんと想いを通じ合ってから翌日。茉莉恵ちゃんと一緒に動物園に行きたいねと提案したら、あっという間に実現してしまった。彼は私と動物園に行った話を茉莉恵ちゃんにしていたらしく、それを聞いていたものだから、小さな彼女はずっと動物園に来たい、来たい、と言っていたそうだ。「まこちゃんも、はやく、はやくぅ――!」 茉莉恵ちゃんに私のことを紹介してくれたら、『シンデレラのおねえちゃんだ!』と再会を喜ばれた。お互いに顔見知りだったから早急に仲良くなり、茉莉恵ちゃんが『まこちゃん』と呼んでくれるようになった。出会ったときは三歳だった茉莉恵ちゃんは、今では四歳になっていて、おしゃべりもあの頃よりも上手になっていて、元気いっぱいだ。「茉莉恵…早いって」 玄介さんはやや息を切らせながら、一番最後にやって来た。私は毎日園児を追いかけまわしているので、全く平気だけど。「玄介さんが体力無いのよ」「仕事ばかりで運動不足になっているな。よし、また眞子と一緒に運動しようか」 私たちに追いついた玄介さんが、私の腰をぐい、と引き寄せた。「今夜どう?」と耳元で囁いてくる。「もう、玄介さん! 茉莉恵ちゃん見てるよっ」 昨日散々愛されたから、そっちの体力は残ってないよっ。 玄介さんは含み笑いをしている。うっ…そんな顔しても、明日仕事だから無理だってっ。  ひと悶着している間にパンダを見る順番が回って来た。 「うわぁ――、おおきぃ――! ぱんださん、かわいい――ぃ!」  玄介さんに抱き上げられ、茉莉恵ちゃんは大興奮でパンダを見つめる。「そうだ、茉莉恵。眞子先生がクイズを出してくれるぞ」「えっ、クイズ? やるやる――!」 突然ムチャぶりされたけれど、幼稚園で園児たちと毎日のように繰り広げられる『なぞなぞバトル』で鍛えた私。クイズなら任せて!
Last Updated: 2025-05-23
Chapter: 第10話・向き合う その10
 待ちわびていた雄々しい欲望が秘所に当てこまれた。早速愛液が絡みつき、ぬめりのある洞窟の奥底へ沈んでゆく。 「ぁあっ、玄介さっ…ぁあぁっ、んあ、ふっ、やあぁっ――…!」  待ち焦がれていた雄槍の侵入に思わず歓喜の声を上げてしまう。体の一番奥の部分が熱を帯びて震える。膣壁はうねって欲を包み込み、締めつける。 「眞子っ…」 やがて律動が始まった。切なげに眉根を寄せ、玄介さんは激しく腰を打ち付けてくる。奥まで突き入れられる度、広い室内に卑猥な水音が響く。 「はぁんっ・・・・・んんっ・・・・・」  抽送のたびに感じる快感がどんどん膨らんでいく。腰が動く度に汗が散り、私の胸が弾む。その様子を見つめる彼の瞳は獣のような熱を持ち始めていた。 「あっ・・・・・んっ・・・・・・玄介さっ・・・・・・・ああっ!」  最奥を突かれるたびに喘ぎ声が止まらない。その声を抑えることすらできないほど感じてしまう。体の深いところが溶けてしまいそうなほどに気持ち良い。 「眞子っ・・・・・愛してる・・・・・」  彼の声は熱い吐息混じりになっていて、脳内から全身へとゾクッとした快感が広がっていく。最中に愛の言葉を囁かれるなんて、ほんとうに夢みたい。 「あっ・・・・・んんっ・・・・・・」  結合部からは愛液が溢れ出し。ぐちゅぐちゅと淫靡な音が響き渡る。 「ぁああっ・・・・玄介さんっ、は、んぁっ、あぁあぁ―ーっ」  甲高く叫ぶと、より一層激しさが増した。中が激しくかき回され、快楽の波に押し流される。彼から必死に求められることが、なによりも嬉しい。言葉からも、体からも、彼の愛を感じた。  いつもはもっとゆったりとした攻めで、こんなに激しいことは無い。じっくり堪能してくれるのに、性急に昇りつめようとしている。  離れていた時間を急いで埋めるかのように、玄介さんからの余裕が一切感じられなかった。  まるで飢えた獣のように、私の体を貪り尽くそうと暴れまわる。  交わすキスさえも激しく、胸のふくらみに及ぶ攻撃も、普段のも
Last Updated: 2025-05-23
Chapter: 第10話・向き合う その9
 恋愛は自由なのだと常に思っていた。  でも、そうではなかった。  実は沢山のしがらみに包まれていて不自由であり、添い遂げるとなればその苦難は尚の事。  それでも一緒に居たいと思える相手かどうかを考えた時、困難を乗り越えてでも傍にいたい、玄介さんの隣にいたい、と素直に思った。「あっ……んんっ……ふぅ……」 彼の名前を呼ぶたびに私の心は満たされていき、この瞬間が永遠に続けばいいのにと思う。この気持ちを伝えることが出来るのなら、私はどんな困難だって乗り越えられる気がした。「玄介さん……玄介さん……!」 彼を求める想いが強くなればなる程に身体の奥底が熱を帯びて疼く。それに伴い鼓動も早まっていく。  玄介さんの手が下肢へと伸びてきて私の秘部へと触れる。  指先で撫でられてびくりと身を震わせながらも拒むことは無く、むしろもっと触れて欲しいという欲望を抱いてしまっている自分に困惑してしまう。「眞子……俺は君の全てが欲しい」  彼の言葉に頷くと同時に彼は私の両足を割り開く。そして中心に顔を埋めて舌を這わせてきた。その途端に電流のような快感が駆け抜けた。「やっ……んっ……はぁ……」 敏感な突起を舐められ吸われて甘噛みされる度に快楽が押し寄せてくる。思わず声が漏れてしまい慌てて口元を押さえた。「我慢しないで声出して」 低い声で囁かれればそれだけでゾクゾクとしてしまう。恥ずかしさと快感が入り混じった複雑な感情が押し寄せてくるものの拒むことも出来ずに、ただ彼の愛撫を受け入れるしかなかった。  秘部の上を何度も往復させながら舐め続けているうちに蜜が溢れ出し彼の舌によって掻き出されていく。その度に甘美な刺激に襲われて意識が飛びそうになる。「んっ……はぁ……あっ……んっ……」 舌先で転がされて擦り付けられて吸い付かれると堪らず声を上げてしまった。あまりの気持ち良さに腰が揺れてしまうのを抑えられない「気持ちいい?」「ん……気持ち……いい……」 喘ぐように答えると更に攻め立てるよ
Last Updated: 2025-05-22
Chapter: 第10話・向き合う その8
 「ふっ、ああっ、玄介さんっ、ぁあぁっ」 彼は私の反応を見ようと、鋭い視線をぶつけてくる。ぞくりと背筋が粟立ち、腰が浮いてしまう。 恥ずかしくて顔を逸らしたくなるのを堪えて見つめ返すと、彼は満足そうに目を細めた。――ああ、やっぱりこの人だ。 確信する。私が好きなのは、彼。触れ合いたいのも、彼。 何時の間にこんなにも深く玄介さんを好きになり、私の中で大きな存在へ形を変えていたのだろう? 蓮見リゾートホテルの社長だから好きになったんじゃない。彼が何者であったとしても『玄さん』と過ごす時間が、今の気持ちを作り上げたのだ。 彼の正体を知っていたら、恋に落ちる事は無かっただろうけど。 婚活アプリで素性不明だったからこそ、繋がった不思議な縁。「眞子」 余裕を失った玄介さんが、必死に私を求めて雄になる。――玄介さんも、私と同じ。 そう思うと不思議なほどに気持ちが楽になる。そこには身分差も何もなく、ただ一人の男と女が惹かれあうだけの、純粋な気持ちだけが存在しているのだ。今はその中で、彼を好きだと素直に伝えよう。 私は彼の背中に手を回して強く抱きしめた。すると玄介さんもまた、同じように返してくれる。 暫くそうしていると、玄介さんの手が私の胸を包み込むように触れてきた。その感触に驚いて思わず体を離そうとしても、彼はそれを許さない。 まるで宝物でも扱うかのような優しい手つきで、両胸を揉みしだかれていく。その感覚があまりに官能的で、甘美な吐息を漏らしながら身を捩った。 気付けば玄介さんの顔が間近にあり、そのまま唇を奪われる。舌を差し入れられて絡め取られると、脳髄が刺激されて何も考えられなくなる。 彼の手の動きに合わせて次第に体が熱を帯びてくる。自然と息が上がり、艶のある吐息が漏れてしまう。恥ずかしいのに止められない。「眞子……」 玄介さんが私の名を呼んだ声は、低くかすれていた。熱を
Last Updated: 2025-05-22
ニセ夫に捨てられた私、双子と帝都一の富豪に溺愛されています

ニセ夫に捨てられた私、双子と帝都一の富豪に溺愛されています

※毎朝7時更新※ 没落した令嬢・東条美桜は、夜会で従妹の西条綾音にハメられ、帝都の名門・処女ハンターの桐島京に純潔を奪われてしまう。東条家の没落に関わる京は、口封じのために美桜と結婚。しかし初恋の女性の帰国を聞きつけ、彼の子を身ごもったにも関わらず、結婚もされておらず、捨てられる。 そんな美桜を救ったのは、帝都一の富豪・浅野一成だった。彼は東条家に恩があり、その時の借りを返したいと申し出る。 「僕と結婚しませんか?」 契約から始まる結婚生活。彼の優しさに触れるたび、美桜は少しずつ心を取り戻していく。 そして父の失脚に関わるニセ夫を追い詰める。 これは苦境の中でも美しく生き抜く、美桜の愛と復讐の物語。
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Chapter: 80
Last Updated: 2025-12-14
Chapter: 79
 美桜は思わず息を飲んだ。 胸の奥がきゅうっと締めつけられ、心臓が一拍遅れて跳ねる。「離れたりしないように、って……どういう意味?」 まっすぐに見つめられて声が少し震えてしまう。思わぬ一成の真剣な眼差しに、身体の芯まで熱が伝わってくる。一成は迷いなく彼女に近づき、そっと両肩へ手を置いた。「美桜。君が危険にさらされたと聞いた時……胸が潰れるかと思った。あんな思いは二度としたくない。だから、これからは僕のそばにいてほしい。もっと君の心に整理がついてから言おうと思っていたんだけど……僕は、君の心も、未来も、全部欲しい。欲張りだとはわかっている。でも、どうか、僕のものになってくれないか。僕から離れないと誓ってくれないか」「……一成くん……」「夫婦なんだ。守るのは当然だけど……それだけじゃなくて……もっと君を近くに感じていたい。いい加減、美桜を僕だけのものにしたい」 囁くような声なのに、胸に深く響いた。熱く、甘く、抗えないほどに。 美桜の頬がゆっくりと紅潮していく。
Last Updated: 2025-12-13
Chapter: 78
 一成は深呼吸をしてから部屋に入った。 美桜は双子の寝顔を見つめていたが、夫の気配に気づくと優しく微笑んだ。「一成くんどうしたの? 少し顔色が悪いみたいだけれど……」 一成は少し躊躇った。 だが隠すべきではない。美桜の身に直接関わるのだから、きちんと伝えておこうと思った。「美桜、落ち着いて聞いてほしい。さっき、早瀬たちが西条家に潜入して、重要な事実を掴んだ」 美桜は瞬きをし、一成に向き直った。「重要な事実……?」「西条康臣と桐島京が結託して、東条家を滅ぼしたというような内容を仄めかしていたそうだ。それが理由で、君の命を狙っている。君だけじゃない。子供たちを攫おうとしている」 美桜の指が、布団の端をぎゅっとつまんだ。「私を殺しに……? それに、子供たちまで……」
Last Updated: 2025-12-12
Chapter: 77
 二人は裏門から抜け出すと、闇に溶けるように人通りの少ない路地を駆け抜けた。風が肌を刺すほど冷たい。だが胸の奥は燃え上がるように熱かった。(急がなくては……!!) 早瀬も、洋子も、全身で感じていた。 美桜に危険が迫っている。時間がない。一刻も早く知らせなければ。 足音を響かせながら、浅野邸の門へ飛び込む。 「旦那様! 旦那様ッ!!」  早瀬の声が屋敷中に響き、書斎から一成が勢いよく出てきた。「どうした。そんな慌てて……」 そこへ、息を切らしながら洋子が深く頭を下げ、矢継に語った。「旦那様……! 美桜様の……命が危険です! 西条康臣が――美桜様を殺すよう、桐島京に命じておりました……!! それをたった今、私と彼で聞いたのですッ!!」 一瞬で一成の瞳の色が変わった。「なんだと!」 低く、震えるような声。その目は怒りで燃えていた。「さらに、東条家を没落させた証拠が手に入るやもしれません。やはり彼ら西条、桐島家が深く関わっていたようです」「西条家と桐島家が――東条家の破滅を仕組んでいた、と……思った通りだな」「はい。彼らが会話している所を聞きました」 早瀬が詳細に一成に語った。それを聞き終えた彼は、拳を強く握りしめた。「ようやく尻尾を出したな」 その声は静かだが、相当な怒りが含まれていた。美桜を傷つけ、長きに渡って虐げてきた彼らを、絶対に許すわけにはいかない。「早瀬、洋子。命を懸けてよくやってくれた」「旦那様、これからどうなさるおつもりですか? 美桜様を……」「大丈夫だ。僕が必ず守る。今度こそ、美桜を手放さない!」 決意に満ちた彼の顔は頼もしく、どんな敵が来たとて跳ね返してくれそうなほどだった。  彼は早瀬を使って屋敷の警備に当たっている者、屋敷に従事している者、全てを呼び立てた。「みんな、よく聞いてくれ。美桜と子供たちの命が狙われている。早瀬や洋子たちがそのことを突き止めてくれた」 高らかに宣言し、情報共有を行った。「いいk、美桜や子供たちには、何人たりとも近づけないでくれ。特に桐島京、西条の者を見つけ次第、即刻拘束して構わない。僕が全責任を取る。拘束するにあたっては、どんな手を使っても構わない。うまく捕えてくれたなら、褒美を取らせよう」 早速屋敷中の使用人や警護隊が一斉に動き出す。 その速度と迫力は、浅野一
Last Updated: 2025-12-11
Chapter: 76
 椅子の脚が床を擦る音――その瞬間、応接室の空気が変わった。(……まさか……聞かれた……!?) 洋子の背に冷たい汗が伝う。  早瀬も気配を殺し、壁越しに耳を澄ませた。『……誰か、いるのか?』 京の声だ。足音がこちらへ近づいてくる。(まずい……応接室の隣の用具部屋(ここ)は滅多に使われない場所……誰かがいれば不審に思われる……!) さらに、康臣の低い声がそれに続く。『誰かが盗み聞きしていたら厄介だぞ。今の話、外に漏れたら我々は終わりだ』『確かに……調べる』 来る――。 洋子は震えた手でスカートを握りしめた。(まだ死ねない……美桜様たちにご恩返しをするまでは……! 今度こそ美桜様を守ろうと決めたのに――) 京の足音がすぐそこまで迫っていた。 扉の外側。影がゆらりと差
Last Updated: 2025-12-11
Chapter: 75
(……クソ……! どうしてこうなった……!) 京は額にじわりと汗を滲ませた。  薫子を見捨ててでも自分だけ助かるつもりだった。  だが西条康臣は、そんな京の浅ましい計算などお見通しだと言わんばかりに追い詰めてくる。「西城さん、さすがに人殺しなんて……」「よく考えてみたまえ。東条の娘が生きている以上、我々は永久に縛られる。お前の父が東条家に仕掛けた工作……忘れてはいまいな? アレが表沙汰になったらどうするのだ。昔のことを嗅ぎまわる連中は潰しておくに限るだろう? 今がその時なんだよ」「……っ」京は唇を噛んで瞳を伏せた。反論はできなかった。「わかるなら話が早い。美桜を始末しろ。今度こそ東条家の血を絶つんだ。あの子供――浅野の跡継ぎは、もともと君の子供なんだから、取り返す名目で引き取ればいい」 京の喉がひゅっと鳴った。
Last Updated: 2025-12-10
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