Share

地獄最高評議会

Author: 吟色
last update Last Updated: 2025-08-30 22:13:38

運命の夜が来た。

神崎研究所の地下室で、エリスが複雑な魔法陣を完成させる。

「準備完了よ」

「これで地獄に行けるのか」

総一が魔法陣を見つめる。

「そうよ。でも、一度行ったら自力では帰ってこれない」

「帰ってこれない?」

「評議会の結果次第ね」

エリスの表情が曇る。

「もし負けたら……」

「負けないわ」

リリムが拳を握る。

「絶対に勝ってみせる」

「その意気よ」

セラフィーネが微笑む。

「天界の代表として、全力でサポートするから」

「ありがとう」

四人が魔法陣の中央に立つ。

見送りに来たヴェルダ、カイ、神崎が心配そうに見ている。

「必ず帰ってきてくださいね」

ヴェルダが言う。

「お二人の愛を、証明してくださいよ」

「任せろ」

総一が頷く。

「絶対に帰ってくる」

「頑張れよ」

カイが手を振る。

「みんなで待ってるからな」

「ありがとう、みんな」

リリムが涙ぐむ。

「行きましょう」

エリスが魔力を展開すると、魔法陣が光り始める。

四人の姿が光に包まれ、消えていく。

次の瞬間、彼らは地獄の大地に立っていた。

「うわ……」

総一が周囲を見回す。

赤い空、黒い建物、そして空気の重苦しさ。前回来た時とは雰囲気が違う。

「法廷区画は特別なのよ」

エリスが説明する。

「地獄の中でも最も厳格な場所」

「確かに、空気が重いな」

遠くに巨大な建物が見える。黒い石でできた、威圧的な構造物だった。

「あれが最高評議会の建物ね」

「でかいな……」

四人は歩いて建物に向かう。

途中、何人もの悪魔とすれ違ったが、誰も彼らに関心を示さない。

「みんな忙しそうね」

「法廷区画の住人は仕事熱心なのよ」

建物の前に着くと、巨大な扉がそびえ立っていた。

「いよいよね」

リリムが深呼吸する。

「緊張する……」

「大丈夫」

総一がリリムの手を握る。

「俺たちは正しいことをしてる」

「そうね」

扉を開けると、中は巨大なホールになっていた。

天井は見えないほど高く、壁には無数の肖像画が掛けられている。

「歴代の評議会メンバーの肖像よ」

セラフィーネが説明する。

「みんな厳しい顔してるな……」

奥に進むと、受付のような場所があった。

そこには事務的な表情の女性悪魔が座っている。

「リリム=アズ=ナイトメア」

エリスが名前を告げる。

「異議申し立ての件で参りました」

「確認いたします」

女性がファイルをめくる。

「は
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 悪魔ちゃんは契約違反で罰ゲーム中!   麗奈の初恋?図書委員の優しい先輩

    麗奈が研究所での生活を始めて二週間。彼女の表情はますます明るくなり、クラスでも少しずつ友達ができ始めていた。「おはよう、麗奈ちゃん」朝のホームルーム前、女子生徒の一人が声をかけてくる。「おはようございます、田村さん」麗奈が微笑んで答える。最初は人との関わりを避けていたが、リリムたちの励ましもあって、積極的にコミュニケーションを取るようになっていた。「今度の文化祭、何か参加する?」「文化祭……」麗奈が首をかしげる。「まだ何も決めてないです」「だったら一緒に考えない? 私たち、演劇部の手伝いをするつもりなの」「演劇……」「面白いわよ。恋愛物語なんだって」「恋愛物語?」麗奈の目がキラリと光る。最近、恋愛に対する興味が高まっていた。「詳しく聞かせてください」「いいわよ。お昼休みに演劇部の部室に行きましょう」昼休み、麗奈は田村さんと一緒に演劇部の部室を訪れた。「こんにちは」「あ、田村さん。それに……」演劇部の部長らしき女子が、麗奈を見て目を丸くする。「すごく美人な子ね」「黒崎麗奈です」「私は演劇部部長の山田です。よろしく」「こちらこそ」「文化祭の劇の手伝いに来てくれたの?」「はい。恋愛物語だと聞いて……」「そうなのよ」山田部長が台本を見せる。「『星に願いを』という話で、内気な少女が王子様と恋に落ちる物語」「素敵ですね」麗奈が台本をぱらぱらとめくる。「でも、まだキャストが足りなくて困ってるの」「キャスト?」「主人公の少女役がまだ決まらないのよ」

  • 悪魔ちゃんは契約違反で罰ゲーム中!   麗奈の新生活と恋愛相談♡

    デスペアとの契約を解除してから一週間。黒崎麗奈は神崎研究所で新しい生活を始めていた。「おはよう、麗奈」朝の食卓で、リリムが明るく声をかける。「おはようございます」麗奈が小さく微笑んで答える。一週間前とは見違えるほど表情が明るくなっていた。「今日も学校、一緒に行きましょう」「はい」最初の数日は学校を休んでいたが、昨日から復帰している。「でも、本当に大丈夫?」総一が心配そうに聞く。「まだ無理しなくてもいいんだぞ」「大丈夫です」麗奈が頷く。「皆さんがいてくださるので、心強いです」「そうよ」リリムが得意げに胸を張る。「何かあったら、わたしが守ってあげるから」「リリムさん……」麗奈の目が潤む。本当の家族に恵まれなかった彼女にとって、研究所のメンバーは初めての温かい居場所だった。「そうそう」ヴェルダが弁当箱を二つ差し出す。「今日は麗奈さんの分も作りました」「え? いいんですか?」「当然です」ヴェルダが微笑む。「家族なんですから」「家族……」麗奈がその言葉を噛み締める。まだ慣れない響きだったが、とても温かかった。「ありがとうございます」学校への道のり。「麗奈ちゃん、調子はどう?」リリムが気遣う。「はい。おかげさまで、だいぶ良くなりました」「良かった」「でも……」麗奈が少し困ったような顔をする。「クラスの皆さんと、どう接すればいいか分からなくて」「あー、それか」

  • 悪魔ちゃんは契約違反で罰ゲーム中!   愛を知らない少女と絶望の契約悪魔

    黒いオーラに包まれた黒崎麗奈の前で、リリムと総一が対峙していた。「誰も……誰も私を愛してくれない……」麗奈の声が虚空に響く。「だったら、全部消えてしまえばいい……」彼女の周囲に黒い波動が広がり、触れた街灯や看板が次々と朽ち果てていく。「これは……」リリムが警戒する。「絶望の魔力ね。かなり危険よ」「絶望の魔力?」「人の絶望感を増幅させて、全てを無に帰す力」リリムが魔力を展開して結界を張る。「一般人に触れたら、生きる気力を全て奪われてしまう」周囲の人々は既に避難していたが、まだ完全に安全とは言えない。「黒崎さん!」総一が叫ぶ。「俺たちの話を聞いてくれ!」麗奈がゆっくりと振り返る。その瞳には、深い絶望と憎しみが宿っていた。「あなたたち……」「そうよ、学校で会ったリリムよ」「学校……」麗奈の表情が僅かに揺らぐ。「そんなもの、もうどうでもいい」「どうでもよくないわ」リリムが一歩前に出る。「あなたはまだ十七歳。これからいくらでも幸せになれる」「幸せ?」麗奈が嘲笑する。「私に幸せなんてない」「そんなことない」「ある!」麗奈の怒りが爆発し、黒いオーラがさらに強くなる。「両親は死んだ! 親戚は私を邪魔者扱い! 学校でも誰も話しかけない!」「それは……」「私は一人よ! 誰からも愛されない! 誰からも必要とされない!」麗奈の叫びが街に響く。その時、黒い影が彼女の背後から現れた。「そうだ、麗奈……」低い声が響く。

  • 悪魔ちゃんは契約違反で罰ゲーム中!   新たな契約者現る!?謎の転校生

    リリムの料理修行が一段落してから一週間。平和な日常が続いていた。「はい、今日のお弁当♡」朝の神崎研究所で、リリムが得意げに弁当箱を総一に手渡す。「ありがとう」総一が受け取ると、ほんのり温かい。「今日は何が入ってるんだ?」「秘密♡ 学校で開けてのお楽しみよ」「そうか」最近のリリムの手作り弁当は、日に日に美味しくなっている。見た目も綺麗になってきて、もはやプロ級だった。「俺も弁当欲しいな……」カイがうらやましそうに呟く。「美優ちゃんに頼んでみたら?」「そんな図々しいこと言えないよ」「恋人なんだから、遠慮しなくてもいいんじゃない?」「でも……」「あら、カイってば奥手ねえ」リリムがくすくす笑う。「もっと積極的にならないと」「積極的って……」「例えば、一緒にお弁当作るとか」「一緒に?」「そう。二人で作れば楽しいし、絆も深まるわよ」「なるほど……」カイが考え込む。「でも、俺料理できないし……」「大丈夫よ。わたしが教えてあげる」「本当?」「もちろん。恋愛の先輩として、後輩をサポートするのは当然でしょ」「ありがとう、リリム」そんな和やかな会話をしていると、総一のスマホに連絡が入った。「学校からだ」総一がメールを確認する。「今日、転校生が来るって」「転校生?」「二年生に一人。詳細は不明」「珍しいわね」リリムが首をかしげる。「この時期に転校なんて」「家庭の事情とかじゃない?」カイが推測する。「まあ、今日会えば分かるか」三人は学校に向かった。教室に入ると、既に騒がしくなっていた。「転校生、美人らしいぞ」「マジ? 楽しみ」「どんな子だろう」生徒たちが期待に胸を膨らませている。「やっぱり美人なのかな」カイが興味深そうに言う。「美優ちゃん以上の美人はいないと思うけど」「そういうことを堂々と言えるようになったのね」リリムが感心する。「成長したじゃない」「そうかな……」一時間目のホームルーム。担任の田中先生が教室に入ってきた。「皆さん、お待たせしました」先生の後ろに、一人の女子生徒が続く。「うわ……」教室がざわめく。確かに美人だった。長い黒髪に整った顔立ち。背も高く、スタイルも良い。ただし、どこか近寄りがたい雰囲気があった。「それでは自己紹介をお願いします」「はい」

  • 悪魔ちゃんは契約違反で罰ゲーム中!   悪魔の料理修行と愛妻弁当計画

    お花見から数日後。「よし、今日から本格的に料理を覚えるわよ!」朝の神崎研究所で、リリムが気合いを入れて宣言した。「料理?」総一が首をかしげる。「急にどうしたんだ?」「だって、美優ちゃんが手作り弁当作ってるの見て、わたしも作りたくなったのよ」リリムの目がキラキラ輝いている。「愛情たっぷりの手作り弁当♡」「愛情って……」「当然でしょ? 愛する人のために料理を作るのよ」「でも、お前料理下手だろ……」「失礼ね! これから上手になるのよ」その時、キッチンからヴェルダが顔を出した。「料理を覚えたいんですか?」「はい! ヴェルダさん、教えてください」「もちろんです」ヴェルダが微笑む。「でも、基礎からしっかりやりましょうね」「基礎って?」「包丁の持ち方、火加減、調味料の分量……」「うう、難しそう……」「大丈夫です」ヴェルダが励ます。「愛があれば必ず上達します」こうして、リリムの料理修行が始まった。「まずは卵焼きから」ヴェルダが手本を見せる。「卵を溶いて、砂糖と醤油を少し加えます」「砂糖と醤油? 甘いの? しょっぱいの?」「甘めの関東風です。フライパンを温めて……」ヴェルダが慣れた手つきで卵液を流し込む。「箸で混ぜながら、少しずつ巻いていきます」「うわあ、きれいに巻けてる」あっという間に、ふわふわの卵焼きが完成した。「今度はリリムさんがやってみてください」「は、はい」リリムが恐る恐る卵を割る。「あ」殻が

  • 悪魔ちゃんは契約違反で罰ゲーム中!   みんなでお花見とほろ酔い悪魔

    四月。桜が満開の季節がやってきた。 「わー! 綺麗!」 神崎研究所の近くの公園で、リリムが桜を見上げて感嘆の声を上げる。 「これが『お花見』ってやつね!」 「そうですよ」 神崎が微笑む。 「日本の春の風物詩です」 今日は研究所のメンバー全員でお花見をすることになっていた。 総一、リリム、カイ、美優、セラフィーネ、エリス、ヴェルダ、神崎、アルカード、そしてベル。 「すごい人数になりましたね」 美優が感心する。 「最初は三人だったのに」 「愛が人を引き寄せるのよ」 リリムが得意げに言う。 「わたしたちの愛のおかげね」 「自分で言うか……」 総一が苦笑する。 ブルーシートを敷いて、みんなで輪になって座る。 「乾杯!」 ベルがお茶のペットボトルを高く上げる。 「桜との出会いに」 「乾杯」 みんなでペットボトルを合わせる。 「ベルさん、すっかり人間らしくなりましたね」 カイが感心する。 「一年前まで感情を知らなかったとは思えません」 「皆さんのおかげです」 ベルが感謝する。 「特に桜を見ていると、心が温かくなります」 「これが『美しいものに感動する』って感情ですね」 「はい。とても素晴らしい感情です」 お弁当を広げて、みんなでわいわいと

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status