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第6話

Author: 苺タルト
「背中の三分の一が損傷しています。植皮も容易ではありません」

医師のその声に陽菜がゆっくり目を開けると、ベッドの横で医師と話している京介の姿があった。

気配に気づいた彼は振り返ると、血走った目で駆け寄り、陽菜の手を掴む。

「陽菜、まだ痛むか?」

陽菜はその手を振り払い、冷え切った目を向けた。「触らないで」

京介はまだ彼女が拗ねているだけだと思い、感情を抑えてこう言った。

「陽菜、硫酸をかけるよう指示したのは俺じゃない。奴らが勝手に勘違いしたんだ」

陽菜は鼻で笑った。「あなたの許可もなく、あの人たちがあんなことするわけないでしょ?もううんざりよ」

京介が唇を強く噛みしめ、さらに言葉を重ねようとしたその時、ボディーガードがドアを突き飛ばして入ってきた。「社長!大変です!美羽さんが硫酸で火傷しました!」

その報告を聞いた瞬間、京介の瞳孔が揺れた。彼は陽菜の手を振り払い病室を飛び出していった。

陽菜はそんな背中を見送り、冷たく笑う。そしてベッドから降りようとした時、戻ってきた京介が彼女の頬を打った。

「陽菜!」怒りを帯びた声が突き刺さる。

「美羽は硫酸を水と勘違いして洗面所に置いて、それをボディーガードが間違えてお前に使っただけだ。なのにお前は誰かに指示してわざとあの子に硫酸をかけさせた、人として恥ずかしくないのか!」

陽菜はゆっくりと顔を上げ京介を睨み据えた。瞳の奥には、抑えきれない怒りが宿っている。

「京介、いい加減にして。私は今ベッドから起きたばかりなのよ!」

「まだそんな言い逃れを!」京介は冷たい声で言った。「連れてこい」

再びドアが開き、両手を縛り上げられた3人の男が乱暴に突き飛ばされてきた。

男たちは陽菜を見るなり叫んだ。「陽菜さん、俺たちは言われた通りにやっただけだ!どうか助けてくれ!死にたくない!」

見知らぬ男たちを前に、陽菜は顔をしかめた。「誰?全く見覚えがないわ」

すると男たちの表情が一変する。「ふざけるな!メールで指示したのはお前だろ、惚けてんじゃねえ!」

京介は無言のまま陽菜を見つめていた。その眼差しには、押し殺した怒りが滲んでいた。

陽菜はふと笑い、スマホを投げ渡す。「私じゃないわ。履歴を確認すればわかる」

だが次の瞬間、京介はスマホをギュッと握ったまま歩み寄ってきて、画面を彼女の目の前に突きつける。「陽菜、じゃあこれは何だ?」

画面にあるライン履歴を見た陽菜が眉をひそめる。「こんなもの送ってないわ」

その時、京介はもう我慢ができなかった。「つくづく救いようのない女だ」

陽菜が何か言おうとした時、パシッと乾いた音がした。京介がスマホを床へ叩きつけ、粉々に砕け散る。

彼は陽菜の手首を乱暴に掴んだ。「なら、お前の肌を美羽の治療に使うぞ」

陽菜の顔色が変わり、その手を振りほどいた。

「嫌よ!」

美羽のせいで、背中は今も焼け爛れ、少し動くだけで激痛が走る。そんな自分に、植皮をしろと言うのか?

京介は低く笑い、彼女の頬を撫でた。「陽菜、これは自分がまいた種だ」

陽菜は唇を震わせた。「京介、ふざけないで!最初に手を出したのはあなたの愛人よ!私の背中がどうなってるか……」

「美羽はわざとじゃないって言ってるだろ!」怒号に陽菜の言葉が遮られた。「どうしてお前は人の話を聞けないんだ!」

陽菜はふっと笑い、思わず涙をこぼした。

この男にとって、自分は最初から悪者だったと、ようやく分かったのだ。

「京介、硫酸と水の区別もわかんないバカがどこにいるの?そもそも、誰がそんな物持ち歩くのよ?」

京介は陽菜の話を無視して医師に告げた。「どの部分でもいい、美羽に使ってやってくれ」

言い終えたその時、入り口から美羽の泣き叫ぶ声が響いた。

「京介さん……私の不注意で、陽菜さんが傷ついたのに……だからもう、私のために無理をさせないでください!」

京介はすぐに駆け寄った。「美羽、気にするな、君はわざとじゃないんだから。だが陽菜は違う、彼女は故意に君を傷つけたんだ。その責任は取らせる」

それを聞いて、陽菜は拳を握りしめた。京介の胸の中で泣き出す美羽を見ると、抑えていた感情が爆発した。陽菜は美羽に駆け寄り、その髪を掴み、壁に叩きつけた。

「ああっ!」美羽の悲鳴が病室内に響く。

「これが故意って言うのよ!」陽菜は血走った目で笑った。「いつまでも被害者ぶってるんじゃないわよ!桃子に骨髄を提供してくれたから我慢してたけど、もういい!」

美羽を再び壁へ打ち付けようとした時、京介に手首を掴まれ、冷えきった声が響く。「陽菜、やめろ!」

「嫌よ!」

京介の表情がすっと冷え切って、彼は陽菜の手首をさらに強く締め上げる。

自分の指があり得ない方向へねじ曲がっていくのを見て、陽菜は激痛に奥歯を噛み締め、瞬く間に冷や汗が服を濡らしていく。

それでも京介は意に介した様子もなく、容赦なく力を込め続けた。

「陽菜、いつからこんな醜いことをする女になったんだ!」

醜い?

陽菜は涙を流しながら笑った。「京介、あなたと出会ったことも、結婚したことも、人生で一番後悔してる!」

陽菜の言葉に、京介の目の奥が激しく揺れた。それでも冷え切った眼差しで彼女を見据え、低い声で言い放つ。「もう一度だけ言う、彼女を離せ!」

「何度でも言うわ。絶対に嫌!」

陽菜は砕けそうな痛みに耐えながら、なおも美羽の髪を掴み、壁へと打ち付けた。

美羽の絶叫と共に、パキッと鋭い音が響く。

陽菜の指が、京介の手によって無残に折られたのだった。

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