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第185話

Author: ラクオン
「俺があいつを悪く言った?」

宏の目に、メラメラと火が灯ったような怒気が浮かぶ。

その顔を見て、私はふいに胸の奥がすっとした。

簡単に怒るようになったんだね、と思う。

「違う?何事も証拠が大事だって言ったの、あんたでしょ?」

そう吐き捨てて、私は踵を返し、部屋へと向かう。

背後から、彼が怒りをかみ殺すような声で、短く言った。

「……6時だ」

「わかってる!」

振り返りもせずに、私はそのまま歩き去った。

行くと決めたのは、宏のためじゃない。

あの日、仏間で山田先輩が理不尽に殴られた姿が脳裏に浮かんだから。

もし今夜もまた、あの女が先輩に何か仕掛けるつもりなら――

今度は、私が彼を助けてあげたいと思った。

そう、今度は私の番。

江川家の「若奥様」という名札、どうせもうすぐ捨てるのなら、最後に使わせてもらう。

シャワーを浴び、髪を乾かし、化粧をする。

派手すぎず、けれど手を抜かないように。

選んだのは、刺繍が入った膝丈のブラックドレス。

控えめながらも、すらりと伸びた脚が綺麗に映える。

六時ちょうど。

私はハイヒールを履いて、階下に姿を現した。

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