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第264話

Author: 楽恩
その話に触れたとたん、山田先輩の表情にもかすかな陰が差した。

「だからさ。大学で南と再会したとき、何年も南の人生にいなかった自分を、すごく恨んだよ。そんなに辛い思いをさせてたなんて、って」

「……先輩、それは違うよ」

あの頃、彼だってまだ子どもだった。

人生には、自分の足で歩かなきゃいけない道がある。

誰かに代わってもらうことなんて、できない。

でも――

それでも、あの時。

ほんの一瞬でも手を差し伸べてくれたこと、それだけでもう、十分すぎるくらい救われていた。

そんな空気を切り裂くように、キッチンから来依がにこにこと現れた。鍋を両手に抱えながら。

「ふたりとも、話はまとまった?そろそろ火つけるよ」

「ぜひ」

山田先輩はすぐに応じた。

「今日、昼抜きだったんだ。もうお腹ペコペコでさ」

鍋を囲む時間は、まるで冬の寒さを忘れるくらいに賑やかだった。

来依がいることで、笑い声が絶えなかった。

私も、少しずつ。

あのニュースのことを、頭の隅へ追いやることができていた。

……そうだよ。

全部、きっと、過ぎていく。

翌朝になっても、雪は止まなかった。

風は強く、地面は白く染まり、凛とした冷たさが窓の外を支配していた。

来依は昨夜、うちに泊まっていた。

電話を一本受けたかと思えば、跳ねるように立ち上がった。

「南!怪我の具合はどう?今日、外出できる?」

私はちょうど水を飲んでいた。

「……どうかした?」

「RFとの契約、通ったって!今からサインしに行けば、お昼には資金が振り込まれるって!」

「えっ、そんなに早く?」

興奮していたのは来依だけじゃない。

私も、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じていた。

RFクラスの外資企業なら、契約から資金の実行まで相応に時間がかかるはずだ。

それが、たった数日で?

私たちが鹿児島にあるRFグループのオフィスに着いたとき、山名はすでに応接室で待っていた。

「ごめんね、支社がまだ立ち上がってなくて。ちょっと簡素な場所だけど」

そう言って、彼はにこやかに契約書を差し出してくれた。

「山名さんたち、鹿児島に支社を設立する予定なんですか?」

来依がすかさず食いつく。

「うん、ちょうど準備中。でも、本当はもう少し時間を置くつもりだった。でもね、今ちょっと厄介なことがあって、前倒しせざる
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