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第810話

Author: 結奈々
「どうしたの?」理沙は何事もなかったような顔で、柚香のところへ歩いてきた。

「海斗と静香がハサミで予備のドレスを切り刻んで、それだけじゃなく、持ってきた化粧品であなたのものを入れ替えようとしてた」柚香は二階で起きたことをすべて話した。「いくらになるか、見積もってもらって」

理沙は頷いた。「分かった」

そう言って、両親を見る。「二人も見に行く?パーティーが始まるまで、まだ一時間くらいあるけど」

直樹は何も言わずに立ち上がり、理沙と一緒に向かった。

海斗と静香が何をしようとしていたのか、直樹はさほど気にしていなかった。彼が知りたかったのは、理沙と柚香が本当に友人なのかどうかだった。

もし本当に友人なら、湊人との結婚話を少し先延ばしにすることもできる。

そんな父親の考えを、理沙はすべて分かっていた。

柚香と並んで前を歩きながら、さっきのことを思い出して、小声で尋ねる。「外で、いつから盗み聞きしてたの?」

「堂々と数分ほど聞いてた」柚香は平然と答えた。

理沙の目に、納得したような色が浮かぶ。「それで、どう思った?」

「あなたの言う通りだと思う」

理沙「ん?」

柚香は理
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    「どうしたの?」理沙は何事もなかったような顔で、柚香のところへ歩いてきた。「海斗と静香がハサミで予備のドレスを切り刻んで、それだけじゃなく、持ってきた化粧品であなたのものを入れ替えようとしてた」柚香は二階で起きたことをすべて話した。「いくらになるか、見積もってもらって」理沙は頷いた。「分かった」そう言って、両親を見る。「二人も見に行く?パーティーが始まるまで、まだ一時間くらいあるけど」直樹は何も言わずに立ち上がり、理沙と一緒に向かった。海斗と静香が何をしようとしていたのか、直樹はさほど気にしていなかった。彼が知りたかったのは、理沙と柚香が本当に友人なのかどうかだった。もし本当に友人なら、湊人との結婚話を少し先延ばしにすることもできる。そんな父親の考えを、理沙はすべて分かっていた。柚香と並んで前を歩きながら、さっきのことを思い出して、小声で尋ねる。「外で、いつから盗み聞きしてたの?」「堂々と数分ほど聞いてた」柚香は平然と答えた。理沙の目に、納得したような色が浮かぶ。「それで、どう思った?」「あなたの言う通りだと思う」理沙「ん?」柚香は理沙に目を向けた。声を落とし、二人にしか聞こえないように言った。「さっき両親に話してたこと。あれ、あなたの言う通りだと思う」「私があなたを利用してるって、気にしないの?」理沙は、柚香があの話を聞いていたと知ってから、少し複雑な気持ちになっていた。利用するつもりだと事前に話していたとはいえ、実際に聞かれたとなると、嫌な思いをさせていないか気になってしまう。誰だって、利用されるのは好きじゃない。まして、自分のことをそんなふうに話されるのは、いい気分がするものではない。「電話でも言ったでしょ?」柚香は逆に問い返した。理沙は一瞬きょとんとしたあと、ふっと笑った。そして、無意識にもう一度柚香を見た。見た目はどこか可憐で、守ってあげたくなるような雰囲気がある。けれど、その佇まいにも瞳にも、芯の強さが滲んでいた。誠実で、裏表のない人だ。「何笑ってるの?」柚香は、さっきまでとは違う目で見られていることに気づいた。まるで恋に落ちた相手を見るような視線だった。「初めて会ったときの、あなたのぽかんとした顔を思い出したの」理沙はわざとからかうように言った。「……」柚香

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    「そんなにはっきり言って、私が傷つくとは思わないの?」理沙は相変わらず、からかうような口調だった。柚香はごく自然に答えた。「むしろ、私のほうが傷つくんじゃない?私を利用しようとしてるんだから」理沙はくすっと笑った。柚香はそのまま外へ向かいながら聞いた。「場所は?」「ホテル」車に乗り込みながら、柚香は言った。「私が聞いたのは、詳しい住所」理沙はチャットで住所を送ると、そのまま話を続けた。「ついでに来るとき、ジュエリーショップで限定品のネックレスを一点買ってきて。できれば八桁以上のものがいいわ」柚香「?」いつの間にか理沙ともすっかり打ち解けていた柚香は、すぐに返した。「お金ちょうだい」「これくらいのお金、柚香さんにとっては大したことないでしょ」理沙はのんびりした口調で言った。「理沙さんにとっては、もっと端金でしょ」柚香は住所を康平に送って車を出してもらいながら、電話越しに続けた。「お金が先、商品はそのあと」理沙「ケチね」柚香「理沙さんは太っ腹なんだから、九桁のものを私にプレゼントしてくれてもいいんじゃない?」「九桁どころか、あなたが必要になった日には、世界に一つしかないものを用意してあげる」理沙はさらりと答えた。ふと階下を見ると、人がどんどん増えている。「そうだ」「何?」柚香が尋ねる。「さっき話した、私があなたを利用するって話。覚えてる?」理沙の声に、自然と真剣さが混じった。柚香は「うん」と答えた。理沙は隠さずに言った。「あなたに私の友達のふりをして、そのネックレスを私に届けてほしいの」柚香は一瞬きょとんとしたが、迷うことなく答えた。「いいよ」このところネット上に柚香に関する情報が一切出ていないのは、理沙のおかげだった。お金をもらって仕事をしているとはいえ、理沙がきちんと役目を果たしてくれているのも事実だ。「どうしてって聞かないの?」今度は理沙のほうが、本気で不思議そうだった。「利用し終わったら、自然に教えてくれるでしょ」柚香は理沙の性格を、なんとなく分かってきていた。「部屋番号を教えて」「部屋番号はないわ」理沙は、深いブルーを基調にしたイブニングドレスを身にまとっていた。胸元には、きらめくパールが一列にあしらわれている。「会場は大広間。あなたが着いたら、迎えを寄こす

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