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第4話

Autor: クレヨンおじさん
翌朝、静月は腫れた目で目を覚まし、足首の痛みは依然として鋭く感じていた。

彼女は鏡の前で長い間じっと見つめた後、結局は薄化粧をして疲れた顔を隠すことにした。今日は留学の手続きをするために指導教員のところへ行かなければならなかった。

初夏の朝、温かな陽光がA大学の並木道に降り注いでいた。

静月はとてもゆっくりと歩き、一歩踏み出すごとに足首からはっきりとした痛みが伝わってきた。目的地が近づくころ、運動場のほうから賑やかな声が聞こえてきた。

静月は最初気にしなかったが、無意識に人々の中に見覚えのある二人の姿が目に入った。

言朗は白いシャツと黒いズボンを着て、背筋を伸ばして立っていた。

その前に座っている彩寧は、純白のワンピースを着ている。その頬には恥ずかしそうで幸せそうな赤みが差し、まるで朝露に濡れたジャスミンの花のように清らかだ。

静月はその場で立ち止まり、冷たい不安な予感が背筋を走った。

周囲の人々は興奮し、スマホで写真を撮りながら、はしゃぎ声や拍手が飛び交っていた。

「木村先輩だ!あの新入生の美人にプロポーズしてるのか?」

「わぁ!なんてロマンチックなの!彼らは幼馴染なんだって!」

「だから、木村先輩が普段誰に対しても冷たかったのね。温かさを全部、好きな人にあげていたからか」

静月は人混みの外側に立ち、まるで見えない壁に隔てられたように、冷ややかな目でその騒動を見つめていた。

そして、言朗のはっきりと優しく響く声を聞いた。喧騒の中で、その一言一句が彼女の耳に確実に届いた。

「彩寧、俺の気持ちは、ずっと変わらない。

以前、俺は自分が年取ってると思って、ずっとこの気持ちを隠していたんだ。君を怖がらせたくなかったし、君の幸せを邪魔したくなかった」

突然、言朗は片膝をついて、手に持っていた指輪を掲げた。そのダイヤモンドの指輪が陽光に照らされてまぶしい光を反射した。それが静月の目に深く突き刺さった。

「今、俺たちはもう大人になった。もう待つ必要はない。

彩寧、俺は君のことが好きだ!結婚してくれ!」

「結婚!結婚!」周囲の人々の歓声が一段と大きくなった。

彩寧は口元を押さえ、涙を浮かべながら、力強く頷くと、言朗の胸に飛び込んだ。

周りからは大きな拍手と歓声が湧き上がった。

静月は二人が抱き合う姿を見ると、心が無形の手にしっかりと握りつぶされるような痛みを感じ、息ができなくなるほどだった。

変わらなかった……彩寧が大人になるまで待っていた……

なるほど。

だからこの3年間、毎年の夏休みや冬休みには、必ず何かしらの理由をつけて電話を取らず、メッセージにも返事をせず、アルバイトや家事に忙しいといっていたのか。

今になって思えば、ただ彼は自分の幼馴染と一緒に過ごしていただけだった。自分のことなんて構う暇もなかったのだ。

そして、静月が期待を抱いて、さりげなく彼の家族や友人に会いたいと言った時、彼が何も気づかれないようにうまくごまかしていた。

静月は、彼の家庭環境が厳しく、プライドが高いからだと思い込んでいた。そのため、彼の「プライド」を傷つけないように、家族に会いたいという話題をもう触れないように気を使っていた。

だが実際には、彼の疎遠や投げやりな態度は、ただ彼がすでに誰かを愛しているからに過ぎなかった。

彼は生まれつき冷徹なわけではなく、感情を表現するのが苦手なわけでもない。

ただ、彼はすべての情熱や優しさ、そして未来の展望を、他の人にだけ捧げていた。

そして、静月はただ彼が寂しいときの気晴らし、困ったときの踏み台に過ぎなかった。彼女という存在は、彼の本当の恋愛物語の中で、金で愛を買う嫌われ者の脇役に過ぎなかったのだ。

彼が示してくれた優しさや気配り、そして彼女を惹きつけた瞬間を、今になって振り返ると、それらすべてが精緻に作られた演技であり、皮肉以外の何物でもなかった。

心は完全に空っぽになり、最後のわずかな未練や痛みも、目の前で繰り広げられるあまりにもまぶしい光景の中で、徹底的に消え去っていった。

もういい。

彼女は軽く口元を引き上げ、淡い自嘲の笑みを浮かべた。

3年間の青春を使って一人の人間を見極めることができた。それだけでも価値があった。

静月は言朗が彩寧の細い指に指輪をはめ、祝福の声の中で抱きしめ合うのを見つめていた。

顔には何の表情もなく、決然と振り返ると、足首の痛みに耐えながら、重い足取りでその場を離れて行った。

静月が人混みに紛れて消えようとしたその瞬間、人混みの中心で、先ほど彩寧に指輪をはめた言朗が、何かを感じ取ったかのように、ふと目を上げて静月を見つめた。

視線が賑やかな人々の隙間を通り抜け、彼が捉えたのは、細くて決然とした背中だけだった。
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