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息子が夫を「おじさん」と呼ぶ日

息子が夫を「おじさん」と呼ぶ日

By:  みっつCompleted
Language: Japanese
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社長である夫、桐生崇史(きりゅう たかし)が、バツイチ子持ちの忘れられない元カノに未練を残していると気づいてから、私、結城莉乃(ゆうき りの)は息子に夫を「おじさん」と呼ぶよう教え始めた。 息子の桐生悠斗(きりゅう ゆうと)が熱を出した深夜、元カノが崇史を呼び出した。私は悠斗の焼けつくような額を撫でながら、「おじさん、バイバイ」と言わせた。 悠斗の授業参観に行くと約束していたのに、元カノから「うちの子にはパパがいなくて可哀想」と泣きつかれると、崇史はすぐに行ってしまった。 私は顔も上げず、悠斗にスマホを渡し、保護者グループのチャットで「おじさん」の代わりに欠席の連絡をさせた。 悠斗は毎回、長く躊躇していた。 やがて、崇史はようやく私たちへの罪悪感に気づいた。 そして、家族で記念写真を撮りに行こうと自ら提案してきた。 写真館の入り口で、またしても元カノから電話がかかってきた。電話口で彼女は泣きじゃくっていた。 「崇史、今すぐ翔太(しょうた)を迎えに来てくれない?幼稚園の子たちにパパがいないってからかわれて……」 崇史の顔に痛ましさが走り、しゃがみ込んで悠斗に言い訳をしようとした。 だが今回は私が促すまでもなく、悠斗は自ら彼に向かって手を振った。 「大丈夫だよ、おじさん。向こうの子供のところに行ってあげて。家族写真は僕とママがいれば十分だから」

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Chapter 1

第1話

社長である夫、桐生崇史(きりゅう たかし)が、バツイチ子持ちの忘れられない元カノに未練を残していると気づいてから、私、結城莉乃(ゆうき りの)は息子に夫を「おじさん」と呼ぶよう教え始めた。

息子の桐生悠斗(きりゅう ゆうと)が熱を出した深夜、元カノが崇史を呼び出した。私は悠斗の焼けつくような額を撫でながら、「おじさん、バイバイ」と言わせた。

悠斗の授業参観に行くと約束していたのに、元カノから「うちの子にはパパがいなくて可哀想」と泣きつかれると、崇史はすぐに行ってしまった。

私は顔も上げず、悠斗にスマホを渡し、保護者グループのチャットで「おじさん」の代わりに欠席の連絡をさせた。

悠斗は毎回、長く躊躇していた。

やがて、崇史はようやく私たちへの罪悪感に気づいた。

そして、家族で記念写真を撮りに行こうと自ら提案してきた。

写真館の入り口で、またしても元カノから電話がかかってきた。電話口で彼女は泣きじゃくっていた。

「崇史、今すぐ翔太(しょうた)を迎えに来てくれない?幼稚園の子たちにパパがいないってからかわれて……」

崇史の顔に申し訳なさそうな色が浮かび、しゃがみ込んで悠斗に言い訳をしようとした。

だが今回は私が促すまでもなく、悠斗は自ら彼に向かって手を振った。

「大丈夫だよ、おじさん。向こうの子供のところに行ってあげて。家族写真は僕とママがいれば十分だから」

悠斗の言葉が終わると、私と崇史は同時に呆然とした。

崇史の心がこの家から離れていると気づいてからの28日間。彼が白石美咲(しらいし みさき)のために私と息子を置き去りにするたび、私は悠斗に彼を「おじさん」と呼ばせてきた。

価値のない人間のために、私や悠斗がこれ以上傷つかないよう、自分たちに言い聞かせるためだ。

しかし、悠斗はそうは思っていなかった。

彼はまだ7歳で、一番父親に甘えたい年頃だ。

私が「おじさん」と呼ぶように言うたび、彼は長く躊躇してから、小さな声で「おじさん」と呼んでいた。

だが今日は、自分からそう呼んだ。

スムーズで自然なその響きは、まるでその言葉を心の中で何度も練習していたかのようだった。

私たちが呆然としていると、悠斗は自ら私の手を引き、崇史に向かって言った。

「おじさん、行っていいよ」

そして、私を見上げた。

「ママ、行こう。約束の時間が過ぎちゃうよ」

彼は私の手を引き、一歩一歩写真館へと歩き出した。

家族写真を撮るというのは、悠斗の授業参観をすっぽかした埋め合わせとして、崇史が自ら提案したものだった。

悠斗は半月も前から楽しみにしていた。

私はこわばった足取りで彼について行った。胸が押し潰されそうなほど重く苦しく、泣き出しそうな気持ちでいっぱいだった。

崇史の不倫に気づいたのは、ある偶然からだった。

美咲の息子の誕生日を祝いに行った彼が、帰宅した際、ポケットの中のチケットの半券を捨て忘れていた。

大型テーマパークの三人分のチケットだった。

悠斗が6歳の誕生日に、家族でテーマパークへ行き、大好きな人気キャラクターに会いたいとお願いしていた。

崇史は「子供っぽい」と言って、ためらいなく拒否した。

それから数日も経たないうちに、彼は美咲の息子を連れて行った。

私は崇史のスマホの中に、美咲のSNSの投稿を見つけた。

【一番夢みたいな場所には、やっぱり一番のパパと一緒に行かなくちゃ】

添えられていた写真は、崇史と美咲が子供を抱きしめている3ショットだった。

美咲は彼の初恋の相手で、バツイチの子持ちだ。

その夜、私と彼は激しい口論になった。

私は子供を連れて離婚すると主張した。

崇史は私が理不尽に騒いでいると責め立て、父親のいない子にするなんてどうしてそんな酷いことができるのかと言い放った。

神に誓って、美咲への感情はただの同情だと言い張った。

すっかり青ざめてしまった悠斗の顔を見て、私は唇から血が滲むほど強く噛み締めた。

もし私が無理やり悠斗を連れて出て行けば、彼は一生崇史を忘れられないだろう。

だが、一度あることは二度、三度あることも私は知っていた。

彼の言う「同情」のせいで、私の子供に惨めな思いをさせたくなかった。

だから私は別の方法を選んだ。崇史を騙して、離婚協議書にサインさせた。

離婚の手続きが完了するまで、およそ30日。

この30日間で崇史が改心するなら、息子の顔に免じてすべてなかったことにするつもりだった。

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