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第18話

Penulis: オレンジ
病室の中。

静香はすでに危篤状態から脱し、点滴を受けていた。

ベッドの前で慌ただしく動き回る清嵐を見つめながら、春子の胸は感謝の気持ちでいっぱいだった。

母が助かったのは、ひとえに清嵐のおかげだった。

昨日、救急車があと三十分かかると聞いたとき、春子は心臓が止まりそうだった。

どうしようもなく途方に暮れていたところに、ちょうど清嵐から電話がかかってきた。

春子の泣き声を聞くと、彼は隣のエリアで働いていたにも関わらず迷わず駆けつけ、数分で彼女の家に着いた。

心血管の救急薬を持参し、静香に飲ませてから心肺蘇生を続けた。

静香の生命兆候が安定すると、急いで病院に連れて行った。

移動中、清嵐はずっと春子を励まし、母は絶対に大丈夫だと信じさせてくれた。

救急室に運び込んだ時、春子は初めて気づいた。

清嵐の腕は力が入りすぎと、何度ものぶつかりでできたあざだらけだった。

一晩明けて、静香はまだ眠ったままだが、危篤からはすでに脱していた。

それでも清嵐は休むことなく動き回り、心血管科の教授を呼んで再確認し、今は看護師に静香の体勢や薬の調整を指示していた。

春子は朝食の詰め合わせを持ち、清嵐のそばに来た。

「清嵐さんは一晩中休んでないでしょ。朝ごはんくらい食べてよ」

看護師は片付けを済んでから、空気を読んで病室を出て行った。

春子の声を聞いた清嵐は、優しい声に変えて返事した。

「俺は大丈夫だ。君こそ、昨日すごく焦ってたから、ちゃんと何か食べて休めよ」

彼の大きな手が春子の頭に触れ、優しく撫でたが、彼女は今回は拒まなかった。

「清嵐さん、今回は本当にありがとう……」

お礼を言いかけたところで、清嵐が突然後ろに倒れ込んだ。

「清嵐さん!」

青ざめた彼の唇を見て、春子は慌てて病室を飛び出し医者を呼んだ。

しかし医者は外回り中で、来るのに時間がかかると言われた。

春子はよろめきながら清嵐のもとに戻った。

親しい人が二人も倒れ、彼女の心はもう限界だった。

「清嵐さん、どうしたの?」

あざだらけの腕と青白い顔を見て、大粒の涙がこぼれた。

「私を闇から連れ出してくれて、母も救ってくれたのに、まだお礼も言えてないのに、お願いだから、しっかりして……

清嵐さんのあの日の告白に対して、実はとっくに答えが出たの。私だってあなたと一緒にいたいのに、
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