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第967話

Author: かんもく
ちょうどその時、隣の部屋のドアが開き、あの女が妖艶な腰つきで中に入っていった。

とわこは目を大きく見開いた。

信じられなかった。奏はほんの30分前まで自分とイチャイチャしてるのに、今は別の女とイチャついているなんて。

まるで世界がひっくり返ったようだった。これは一体、どういう茶番なの?

部屋が隣同士なのに、堂々と女を呼び入れるなんて、ここは防音が良いとでも思ってるの?このあと二人が何かし始めても、聞こえないとでも思ったの?

吐き気で、もう空腹感すら吹き飛んでしまった。

とわこは自分の部屋に戻り、ドアを思いきり「バタンッ!」と閉めた。

おかしい。こんな男だったなんて、今までどうして気づかなかったんだろう。

とわこは自分の馬鹿さ加減に腹が立った。彼が誠実で、いい男だと信じて疑わなかったなんて!

彼女は怒りで顔が赤くなり、部屋の中に立ち尽くしたまま、気持ちは一向に落ち着かなかった。

今すぐここを出ていきたい。でも窓の外は山奥の森、交通の便も悪くて、出るとしても明日にならないと無理だ。

彼女の心の防御が、完全に崩れた。

こんな馬鹿げたことってある?

奏は彼女のことを何だと思ってるの?わざわざここまで連れてきて、自分の本性を見せつけるため?

彼女はベッドのそばにしゃがみ込み、目には涙が溢れそうになっていた。

どうしてあの女を部屋に入れたの?

いや、違う。きっと奏が自分で呼んだに違いない。

じゃなきゃ、どうして部屋に入れたりするのよ?

そう考えると、彼女は手で涙をぬぐい、スマホを手に取ると、明日の帰りの航空券を予約した。

そのとき、突然メッセージが届いた。瞳からだった。「とわこ、今奏と一緒に青山にいるって聞いたよ!ヤバいね、それ!」

そのメッセージを見た瞬間、こらえていた涙が再び溢れ出した。

そうだよ。マジでヤバい。

とわこは返信した。「うん。うちらの部屋、隣同士。今、彼は隣の部屋で別の女と激しく盛り上がってるところ。ほんとに、刺激的だよ」

このメッセージを送った直後、瞳から電話がかかってきた。

数秒ためらった後、とわこは電話を取った。

「とわこ!奏が今、別の女と......って、それ本当なの?」瞳の声は動揺に満ちていた。

「この目で見たの」とわこは深呼吸して言った。「その女、ピッタリしたキャミワンピ着てて、太もも丸出しでさ.
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Comments (1)
goodnovel comment avatar
シマエナガlove
ずっと拒否してたんだから 泰が他の人と付き合っても文句言えないのでは とわこも周りに男いるじゃん お互い様では? どうせとわこが部屋間違えたとか 泰が交換したとか そんな感じするけどね
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